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印刷もハイブリッド時代

お札の印刷機を作っている会社は世界にわずかしかなく、特殊な分野であるが、そこでは一つの印刷機にいろんな版式が使われたハイブリッドの構造になっている。凸版、グラビア、平版、それから電子写真であっても、イメージを載せる台としての「版」を使って、その上のイメージを紙など被印刷物に転写する方式の印刷はいずれも、版のまわりの技術がそれぞれ多くあり、それがハイブリッド化を難しくしている。

しかしインクジェットでは版がないために、印刷のユニットをいろいろなところにとりつけることが可能になる。問題は版のある印刷の速度とインクジェットの速度があうかどうかであるが、インクジェットのヘッドの数を増やしていけば、速度は上げられるようになる。PAGEの案内状もオフ輪とインクジェットを併用した「レスポン君」で作ってもらっている。この他最近は個別に開発したインクジェットを組み込んだハイブリッド印刷が時々見受けられるようになった。

ちょっと前までは、印刷機上で刷版のCTPを行うDI印刷機と、プリンタから発達したデジタル印刷機との間で、ショートランか、バリアブルか、みたいな論争があったが、インクジェットのヘッドがあると、「刷り込み」のようなバリアブルが通常の印刷機上でもできることになり、論争はあまり意味がなくなる。インクジェットの高速技術が進めば進むほど従来の印刷と複合した用途開発がされるようになる。

ちょうど今、カラーインクジェットのヘッドを使って、ダンボールに印刷する機械が開発され、その発売に向けてアイデアコンテストが行われている。愛知県にあるISOWAというダンボール製造機械メーカーが、キヤノンファインテックと共同でダンボール用インクジェット・プリンタ【Box Dream】を開発した。この【Box Dream】を使って、こんなことができたらいいなというアイデアを募集している。【Box Dream】によるダンボールに夢を吹き込むような新しい活躍の場を「ダンボール・レボリューション」=「ダンレボ」と名づけている。

「ダンレボ」プロジェクトのページにアイデアの募集要綱が記載されていて、締め切りは12月20日であるが、11月01日にサイトが開設されて3週間で216件も応募が集まっている。どこでどのように知れ渡ったのかわからないが、ネットの波及力は凄いものである。このサイトではダンボールの特徴として、軽くて丈夫/加工が容易/保温性がある/リサイクルが可能‥などを挙げているが、確かに家庭でもいらなくなったダンボール箱を加工して何かに使った経験はいろいろありそうである。ダンボールを身近な素材として見直すと、新たな商品開発につながるかもしれない。ISOWAは製造機のメーカーであるが、こういうアイデアはその機械を買うダンボール加工業者にとってありがたいものとなるのではないだろうか。

もうひとつの視点は、デジカメやカラープリンタの普及で、個人でもいろんな紙製品ができるようになったことから、その延長として自分では出来ないスケールのものを業者にやってもらいたいという機運も出てくるだろう。いずれにせよ既存の印刷が「最適化」にむけて無駄を省く方向にあり、必然的にマーケットは縮小均衡にならざるを得ないのに対して、新たな技術が新たなニーズを掘り起こすことになるという希望も感じられる。

2005年12月14日(水)に行われるJAGAT トピック技術セミナー 2005では、[よどみなき生産を目指して]というテーマの下に、上記の共同開発の会社であるキヤノンファインテック株式会社からは、印刷機システムに組み込むインクジェット方式のプリントモジュールのお話を伺う。その他、特殊原反への印刷、両面ワンパス水性コーティングなど、印刷加工の一貫化と高付加価値化について午後の部でとりあげる。これからのグラフィックアーツのビジネス拡大のヒントを、このトピック技術セミナーでつかんでいただきたい。

2005/11/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会