(株)ブンカは1948年の創業以来、商業印刷を中心として印刷媒体の作成を受注してきたが、現在、これに加えデータベースの運用管理、ダイレクト宛名印刷ソリューションを導入したメーリングサービス事業を展開し、大いに成功を収めている。この事業は、総合小売業大手(以下はクライアント)との密接な関係に基づくものであり、同社がクライアントから勝ち得てきた「信頼」がどのようにして生み出され、どのようにメーリングサービス事業に発展していったのかについてお話をうかがった。
まず、お客様中心に考える!
同社は当初、クライアントが店頭で使用する店頭POPや店舗内サイン関係、ノベルティなどの販促物といった印刷物を受注していた。しかし、さまざまな対応を要求される小売りの現場からは、実に多種多様な要望があった。同社のシステム部データベース課課長の樋口久和氏は次のように語っている。
「中にはハッピやブルゾンなどの布物から、灰皿や貯金箱に至るまで実にいろいろな仕事をご依頼いただいています。流通は情報に対していかに敏感に反応できるかが売り上げにつながるので、印刷物作成のスピードやレスポンスの高さが非常に重要になってくるのです」
同社ではそうした要望にどのように対応しているのだろう? 樋口氏は「まず、お客様中心の考え方がベースにあります。クライアントからの要望が印刷機をまわす時間だけしかないような、とても短納期の場合でも、営業はできないとは口が裂けても言わないところにあります」と語る。一見すると印刷業であればどこでも言っているような営業対応ではあるが、そうした営業の言葉を社内全体にある「やってやろう」という「NOと言わない社風」が支えている。もちろん中には解決できないこともあるが、それでもまず動いてみるということが結果的にはクライアントの信頼を得ることになった。
いち早く個人情報保護法に対応
そうした関係を構築していく中、クライアントより特定の顧客層に対して会員を募集し、DMを発送する業務を受注した。さらに、このデータベースを全国で統一して管理・運用する運営業務を受託して欲しいという要望が出た。当初、新規事業ということもあり小規模で行い、大量受注時には外注もしていた。しかし、クライアントからの新しいことをしたいという要望があり、各店舗から発送というローカルなリレーションを維持するためにバリアブルデータの高速印字を実現する必要性があった。
樋口氏は「それ以上に数十万件のデータを外注するのはリスキーすぎる、という危機意識が社内に生まれました。これを克服するために完全内製化に踏み切ることになったわけです。これは逆にクライアントからの信頼を得るいい機会でもあり、納期を確実に守れるという考えもありました」と語る。そうして同社は個人情報保護法が施行される一年前の2004年6月にISMSの登録認証を取得した。
BUSKROはシンプル、堅牢が決め手
同時に、セキュアなメーリングサービス事業の確立に重要なものとして、ラベルではなくダイレクト宛名印刷を活用することとなり、『BUSKRO HPQ』が導入された。BUSKROを選定した経緯を樋口氏は「BUSKROを選んだ理由はその性能もありますが、販売会社(フロンテック)が当社で実際に作っているサンプルを持ち帰り、それに印字したものをプレゼン資料として提出してもらったのが、実際の仕上がりをイメージするのに役立ちました」と語る。
実際にBUSKROを管理している同社の業務部次長の山内薫氏は「BUSKROのセッティングはとても楽ですね。シンプルだし、簡単に手早くセッティングできます。それがイコール、スピードにつながり、業務効率のアップになるわけです」としており、データベース課の秋元生也氏も「大変に堅牢だということも非常に高いポイントですね」と評価している。BUSKROでバリアブル印字をすることで、店舗名や顧客属性、バーコードなどにも対応している。バーコードを使ったデータベースとのチェックシステムは、数十万件の中に必ず数千は存在するエラーリストをつぶす上で大いに役立っており、さらなるコストセーブにもつながっている。
今後の展開について樋口氏は「今後はメインクライアントの中にさらに大きい柱を増やし、その上で、その他の企業ともお仕事ができればと思います。小ロットでも印字を受注し、利益も十分確保できるノウハウを会得したいですね。ただし、下請けではなく総合的なサポートからエンドユーザとの関係性を構築し、印刷の仕事に拡げていきたい。」と語った。
最後に同社の企画提案力についてたずねると樋口氏は「まず、顧客の要望に対して真摯に対応する。そして、その要望の100%より、少し高い110%ぐらいを提案できるように心がけていることです」と語った。
『プリンターズサークル 2005年12月号より』
2005/12/13 00:00:00