これは紙に刷るべきか、Webなのか。あるいは……。印刷会社の取引先(顧客)、あるいはメディア、コンテンツ制作のより上流にいるプロデューサーのメディア活用に関する考え方がより確信的、より戦略的なものに変わりつつある。同時にその活用基準、発注条件も明確なものとなりつつある。
顧客もプロデューサーも自分たちの顧客であるエンドユーザーの変化を試行錯誤しながら読み取り、そして柔軟に対応できる体制を整えつつあるということである。
そういう中顧客側の動向を見てみると、BtoBを主軸とする三菱電機は製造から販促に至る製品情報の一元管理(DBDB)と活用の高度なノウハウを蓄積してきた。BtoC、すなわちエンドユーザーを顧客とする本田技研はWebサイトの成熟に努め約180万人というマスメディア規模のユニークユーザーを獲得するに至り、紙媒体を切り捨てるのではなく、使い分けの基準が明確化してきた。また、出版社である翔泳社はIT分野での専門化戦略の元、ミドルリスクミドルリターンと位置づける出版ビジネスとは別に業態を拡げ、ハイリスクハイリターンのソフトウエアビジネス、ローリスクローリターンのコミュニケーションデザインビジネスを手掛けながら、専門分野での総合的ノウハウを蓄積している。
一方、コンテンツ・プロデューサーのメディア活用も、携帯の情報ターミナル、コミュニケーションツールとしてのより高度化、ブログの一般化、Web2.0への移行などを受けながら、より確信的なものになりつつある。例えば、1994年に日本で最初に個人ホームページ「富ヶ谷」を立ち上げ以来常に先端を走ってきたデジタルガレージでは、まさに上記の携帯、ブログ、Web2.0を自社の大きなキーワードとして掲げている。さらに携帯コンテンツビジネスを主力とするゼイヴェルでは、日本最大級の女性向けケータイファッションサイト「girlswalker.com(ガールズウォーカー・ドット・コム)」と合わせて2005年よりリアルイベントであるファッションフェスタ「Tokyo Girls Collection」を1万数千人規模の集客で開催。Eコマース連動型のイベントというスタイルを確立しつつある。
印刷会社は既存の商業印刷、出版印刷……そしてIT、Web制作をはじめとする付加価値領域という、まず業種ありきのスタンスのままで営業戦略を組み立てても、この顧客サイドの意識とスタイルの変容、すなわち顧客ニーズにきちんと対応した提案ができない次元にさしかかっているということである。
そのためには直接の取引先、あるいはより上流、よりエンドユーザー側の真意をきちんと聞き取ることである。
◆
2月1日開幕のPAGE2006基調講演の午後の部では、上に述べた顧客、プロデューサーの真意を探るセッションを2本続けて行う。印刷会社に何が期待されているのか、そのポイントが見えるはずである。
→申込みページへ
■PAGE基調講演B1「顧客の考えるメディアの活用価値」
2006年2月1日(水)13:00-15:00
・モデレータ=三菱電機 121ビジネス推進センター長 西館博章
・スピーカー=本田技研工業 宣伝販促部ホームページ企画BL課長 渡辺春樹/翔泳社 取締役副社長 コミュニケーション局長 篠崎晃一
製造から販売まで、一貫した情報管理により、より効率的により効果的にエンドユーザーに情報伝達を図ろうとするメーカー。製品ごとにブランド戦略を組み立て宣伝〜販促まで予算と、放送、紙、Web……という媒体の使い分けの方法を確立しつつあるメーカー。出版物を取次〜書店に流通させることでのビジネスのみならず、自己資源をよりビジネスに活かすための多様で、多元的な業態開発を積極的にはじめた出版社。
そのなかで、エンドユーザーの日常の中にインターネットインフラが定着し、紙媒体とWebをはじめとするデジタル媒体の活用価値がより明確なものとなってきた。
三菱電機・西館博章氏をモデレータに、自動車メーカーである本田技研工業、そして出版社である翔泳社の「活用基準」「発注条件」の具体像を探る。
[関連記事]
「マスメディアの規模へ成長する企業サイト」
■PAGE基調講演B2「プロデューサーの求めるコンテンツ制作環境」
2006年2月1日(水)16:00-18:00
・モデレータ=ルポライター 吉村克己
・スピーカー=デジタルガレージ ブログ&モバイル事業戦略室 プロデューサー 高木裕/ゼイヴェル プロデューサー 石倉正啓
Web、携帯はよりエンドユーザーと直結するビジネスに向かっている。それに伴い情報発信やサービス選択の「主導権」がエンドユーザーに移り、ニーズはますます多様化、高度化してきた。ネットワークやデータベース技術と連動した「リッチコンテンツ」づくりが必要となってきているのである。このユーザーニーズを的確に読みとり、制作者、技術者に落とし込んでいくプロデューサーの存在がますます重要となる。では、そのプロデューサーの求める最適な制作環境とは何か……。
数々のIT関連企業のビジネスの仕組みを取材してきたルポライター・吉村克己氏と、デジタルガレージ、ゼイヴェルの二人のプロデューサーによる実践的な討議を通して、企業ユーザー、エンドユーザーのニーズの変化、地方のコンテンツ制作戦略、印刷会社の課題などと合わせて、その答えを探る。
[関連記事]
「女性携帯サイト「girls walker」の挑戦」
2006/01/16 00:00:00