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検索技術が創造する新たなコンテンツ


単なるツールから、人々の行動を高度に手助けする行動支援メディアへ移ろうとしている検索サービス。PAGE2006 デジタルメディアトラック「検索技術が創造する新たなコンテンツ」では、セマンティックWebの普及に大きく貢献する神崎氏をはじめ、ジャストシステムと組んで高度な日本語検索を追求するNTTレゾナントの「goo」、Flashで関連キーワードを表示させ、人の創造力を刺激する連想検索など、検索関連の最先端の状況をみながらインターネット上の情報の扱いや管理、情報資源の発見などについて議論が行われた。

情報資源を発見するということ

神崎正英氏は最初に、普段はあまり意識しないが、根本的で重要な「検索とは何か」ということから話をはじめた。利用者からみた検索サービスは、さがして、確かめて、発見するという行為である。知りたいことをキーワードで検索して、得られた検索結果から欲しい情報はどれか、役立つ情報化どれかを閲覧する。最終的に欲しい情報を、発見し、さらに他の付加価値などと組み合わせて発展させる。

検索には全文検索と属性検索があり、全文検索は自動化しやすく、また一度に高いヒット率を実現するが、数多くヒットしてしまうため精度は低い。属性検索はうまく使えば高精度だが、多くの情報資源に適切な属性情報(メタデータ)を与えるのはコストがかかりすぎてしまうという欠点がある。

精度も再現率も高い検索、つまり、必要な情報を迅速にみつけるためには、コンテンツ提供者がメタデータをつけることが重要である。コストの面からみると、可能な限り自動的にメタデータをつけることが求められている。そこで、データ交換モデルとしてのRDF技術とさらにセマンティックWebで検討が進められているRDFクエリ言語のSPARQLなどが紹介された。


行動支援メディアを目指すgoo

NTTレゾナント 小澤英昭氏は、gooにおける検索エンジンの進化について紹介した。日本で開発され,サービスを提供している唯一の検索エンジンであるgooは、日常の生活に役立つ検索サービス、つまり、人々の生活に欠かせない行動支援メディアになるために、次々と新しい技術やサービスを開発している。

gooでは、実験的なアプリケーションを紹介するgooラボがある。アプリケーションのβ版を順次公開し、利用者からの意見を集めて反映することで、さらなる技術の発展を目指している。例えばBlogRangerというブログ検索エンジンでは、4000万件のブログ情報を収集し、評判や良い書き手を自動分類する機能を利用することができる。ローカルサーチでは、収集した情報を構造化して、比較ができる。緯度経度で地図のあるエリアを検索し、さらに周辺のホテル情報を知ることもできるし、地図をスクロールすればそのままホテルの情報も対象エリアを自動的に変更する。

ブログにはグルメ情報をのせる人が多い。gooでは特派員という制度がある。特派員に登録すると、レストランなどのコメントをブログにのせるのとあわせて、住所や緯度経度などのデータを埋め込むことで、自動的にgooの地図にマッピングさせることも可能である。

今後は、携帯検索サービスへの展開をねらうgoo。ID連携やQRコード、メール連携はもちろん、最終的には携帯電話を利用した音声による検索で、目的の情報を入手できるようなサービスの実現を目指し、研究を進めている。

自分だけの文脈を発見する連想検索

国立情報学研究所 教授 高野明彦氏は,連想する情報サービスに重点をおいた検索サービスを研究している。 連想検索サービスでは,検索したい言葉と関連する言葉を一緒に表示させることで,ユーザの想像力を刺激し,情報空間に奥行きを与える。

汎用連想計算エンジンのGETAはオープンソース形態で無償公開(http://geta.ex.nii.ac.jp)しており,ASCII24や日立連想検索など大手の商用サイトで採用されている。 GETAの技術を採用した検索サービスのひとつにWebcatPlusがある。これは,GETAと図書総合目録を組み合わせた連想機能をもつ図書検索システムで,選んだ本と関連する本を探したり,分野を超えた思いがけない本を発見することができるというきる。

新書マップも同様に本を探すことができるサービスだが,新書に限定している。新書で多く取り上げられている1000テーマを選び,そのテーマを知るためのリストと読書ガイドを提供している。

さらに本の連想検索サービスはリアルな街の中まで及ぶ。「JINBOU(じんぼう)」は神保町の古書店が保有する古本の情報をデータベースに入れ,検索できるようにした。店と地図の情報が連動しているので,検索した本がある古書店の名前や場所まで知ることができる。将来的には,新刊書店、出版社、図書館などからも情報提供を受けてサービス拡大をはかる。

高野氏は,連想検索サービスは情報に文脈を与え,自分だけの文脈を発見する場だという。雑多な情報の羅列よりも人の想像力をかきたてる。連想検索サービスは,さらなる利用の拡大が期待される。

2006/03/02 00:00:00


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