本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

ユーザーにマッチングしたビジネスを生み出すための条件

情報発信やサービス選択の「主導権」がエンドユーザーに移り、ニーズが多様化、高度化してきた今、それに対応したコンテンツづくりと提供がますます必要となってきている。そのユーザーニーズを的確に読み取り、制作者、技術者につなげ、ビジネスを作り上げていく役割である「プロデューサー」が、これからのWeb、携帯などのメディア活用、コンテンツ制作の環境としてどのような形態を求めているか。
それをプロデューサー自らに語り合っていただくという趣旨で、PAGE基調講演B2「プロデューサーの求めるコンテンツ制作環境」を行った。

JAGATでは昨年度以来通信&メディア研究会のセミナー、PAGEカンファレンスなどでコンテンツビジネスにおけるプロデューサーの必要性を考える機会を継続的に設けてきたが、このセッションもその延長にある。
モデレータは、IT、コンテンツ業界のビジネスに関する数々のルポルタージュを行ってきた吉村克己氏にお願いし、パネリストはデジタルガレージ・高木裕氏、ゼイヴェル・石倉正啓氏の2人のプロデューサーにお願いした。


冒頭、モデレータの吉村氏は「Webコンテンツのニーズをどう掘り起こし、予算獲得に結びつけるか。プロデューサーの役割が大きいが、育成の仕組みが整っていない。」「印刷会社にとっても、「待ちの営業」から「提案の営業」への切り替えが求められる中、ウエブコンテンツづくりへの参入をきっかけに紙とデジタルのクロスメディア型提案営業をできるプロデューサーを育成すべきではないか。」と問題意識を述べた。


デジタルガレージでブログと携帯による事業構築を担当する高木裕氏は、Web2.0時代のプロデュースのあり方の変化に力点を置いて話した。
今プロデューサーに求められる領域は「ブランド構築からマーケティングへ」「きれいなサイト作りから売れるサイト作りへ」へと変化し、そして「ビジネスモデル、イノベーションを活用したビジネス作り」が必要であるとした。
ビジネスの組み方は、請負い型ではなく協業型になり、レベニューシェアのように成果をシェアする方向にある。
そしてWebの制作現場は、「細分化」から「統合化」へ向かっているとした。
その中、Web2.0がいよいよはじまるとし、そのコンセプトとして、ユーザーセルフサービスとアルゴリズムによるデータ管理の導入、Webの中心部だけでなく周辺部全体でサービスを提供する「ロングテールアプローチ」を挙げ、その代表として「ブログ事業」を挙げた。ブログプロデュースには「インフラ、クリエイティブ、コミュニティ」の3点を押さえることが必要とした。
ブログ市場は2004年度には6.8億円であったものが、2006年度には140.6億円、関連市場を含めると1,377億円と総務省により推計されている。事業フィールドには、企業・自治体ブログ、メディアブログ、利用者参加型ブログ、ブログEC、ブログ出版とあり、ブログから生まれた書籍『生協の白石さん』は70万部を超えるベストセラーとなった。
そして最後に、ブログから印刷物の制作という流れも生まれてきており、Web制作会社も印刷の営業対象に考えてよい時代になってきている、と述べた。


ケータイコンテンツサイト大手として、日本最大規模の女性向け携帯ファッションサイト「ガールズウォーカー」を運営するゼイヴェルでガールズウォーカーのコマース事業部・コンテンツ事業部を統括する石倉正啓氏は、携帯、ガールズウォーカーを使って女性マーケットを取り込む戦略に力点を置いて話した。
ユーザー主導の流れの先端にいるケータイ(コンテンツ)は、ユーザーとの密着度も高く、レスポンスも早く口コミの力も強い。また世界の中で日本ほどファッションが細分化されている国はないという。そういう条件の中ゼイヴェルは、女性マーケットに特化し、その中でも20歳から34歳のF1層をコアターゲットとする戦略をとった。
そういう中、girlswalkerの初期プロモーションでのメール配信で1万メール送信した所、レスポンスが2万通あったという。そして広告宣伝費0でここまで拡大してきたという。そして、1日のアクセス9100万PV、種々のメールマガジン購読者数のべ約2億9200万人(過去5年間)という巨大サイトに仕立てた。
現在はネットで読めるWebファッションマガジンを5誌立ち上げ、『CanCam』等が60万部程に比しても、月50万ユニークユーザーを確保している。そして巨大な小売モバイルコマースを実現しようと考えているという。
そして最後に、携帯のことは携帯で完結させるということでなく、「Tokyo Girls Collection」などの場(イベント)との連動、そのPRのために印刷媒体も使っていると述べた。

2006/02/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会