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Web制作に携わる人々に求められるもの〜3年後の将来像〜

技術の進歩とともに、Webで発信される情報は多量になった。情報を発信する側も、コンテンツを制作する側も伝えたいことをサイト訪問者にいかに飽きさせずに、わかりやすく伝えられるかが問われている。
PAGE2006デジタルメディアトラックC5「UI(ユーザインターフェース)の復権」セッションでは、パネリストに野村総合研究所 情報技術本部 ITデザイナ 三井 英樹氏、RAKU-GAKI アートディレクター 西田 幸司氏、ベースメントファクトリープロダクション 代表取締役兼エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター 北村 健氏を招き、3年後ぐらいに普通になっていると思われる技術について、Web制作に携わる人々が今から何を準備するかについて考えた。


Webトレンド

Webシステムの市場動向がどのように変化しているかを描くと次の図のようになる。

この流れと同じになるのは、システムという概念の変化である。中身を分けるとフロント、ミドル、バックエンドと三層に分かれるシステムをどこまでチューニングできるかということがシステムインテグレーター(SIer)の仕事であった。人間が欲しい情報を早く取り出せるシステムをいかにして作れるかがキーポイントとされている。
ところが最近はこの状況が少し変わってきている。システムは、これまでの三層構造に人間も含めて考えられるようになっている。例えば、伝票入力のようなオペレータの仕事は、どんなにシステムを早く動かしたとしても会社全体の利益という面から見るとあまりよくなかった。企業の運営コストが安くなるWebシステムでも、入力処理の出来高で働いているオペレータにとっては1日の出来高が減ったということが起きている。
そこで人間の部分も考えてきちんと動くシステムを考えるべきという流れになっている。
使い勝手の市場動向の変遷は上記の図に重ねると次のようになる。

普通の人には使えないが特殊な人には使えるメインフレームの時代から普通の人にも使えるクライアントサーバの時代となり、普通の人にも使いやすいRIA(Rich Internet Application)の時代に入っている。特殊な人に使える、使えるではなく、使いやすいと感じるものを目指している分野が徐々に広がっているのではないか。

使い勝手の市場動向に合わせて開発者の呼称も変化している。前述の図に重ねると普通の人には使えないものを普通の人にも使えるレベルにしている人たちを「クリエイター」と呼び、普通の人にも使えるものを普通の人にも使いやすいレベルにしている人たちを「カリスマクリエイター」と呼んでいる。
しかしこの流れも2006年が限度である。なぜかというとツールが発達するからである。使えないものを使えるようにするには、アプリケーションがあればいいからという考え方がある。そして、使えるものを使えるようにする段階においてクリエイターの仕事が発生するだろうと予想される。そのための準備を今からやっておく必要がある。

Web開発の歴史

1995年から見ていくと、最初は玄関を作るようにWebを作るという時代があった。2000年ごろから演出を凝る時代があって、2003年ごろから携帯電話のマルチデバイスに対応する時代、統合する時代、2005年は再びお金をかけて作るという巨額投資サイト時代が来たと考えている。その間にアクセシビリティの標準化がある。 技術的には、htmlが書ければいいという時代から、小さいサイズでgifを作る、PDFの印刷系、swfの映像系、mp3のサウンド系、検索エンジン対応、標準化、CSSと進んでいる。

技術者の視点から各時代に求められてきたもの

最初は情報提供を行っていた。こぞってサイトを立ち上げていた。必要な技術はHTMLの基礎が問われていた。個人の資質に依存していた。

次に統合の時代となる。情報量が勝負とされ、テンプレートを使った統一感が求められる。大量生産と統一感をあわせる技術が問われ、そのためのツールが開発される。またCSSやガイドライン、ユーザビリティの視点が生まれ、個人の資質からチーム作りが重要視され、SIPSのような企業形態もこの時代に起こった。

そして機能や効果など測定が行われる時代となる。技術的には機能の提供、効果測定、新規提案が求められるようになった。クライアントに対する提案の内容も、結果どういうメリットがあるかと問われるようになってきた。Webデザイナーと呼ばれる人たちは、プロデューサー系、ディレクター系からコーダー系まで様々な職種が生まれてきている。これらの人たちをマネージメントし、いろいろなニーズに応える体制が必要になっている時代である。
このマネジメントが必要な時代の中で、使いやすさを生むためにはどうすればいいのかという話になる。

市場における機能のニーズとしては、エンドユーザ・利用者、システム・開発、経営者の部分の3方向に分かれる。
第1のエンドユーザ・利用者はキー操作、直感的認識、情報の視覚化などのユーザビリティの視点を重視するようになっている。第2のシステム・開発はサーバの負荷を減らせるかという視点が重要である。ユーザの大量アクセスがあっても問題なく稼動するパフォーマンスが求められている。第3の経営は、トラブル時の対応を含めてシステム投資の費用対効果などを考えていくことが求められている。

素材、レイアウト、インタラクション、ロジックなど作り手の自由度を広げる技術が進歩してきた。使い手の要望に応えられる様々なことが提供可能になった現在、これらの技術ができるという人たちはまだ少ないが、その要望に応えられる技術があることを知っておくことは必要である。

これからの3年間に目指すもの

Web制作のこれからの3年間のキーポイントは【1】人材 【2】変化であると考える。UIはbitmap、css、html、JAVAScript、xml、MXML、ActionScript、Java、DB、movie、sound、swf、fla、flvなど様々な技術によって実現される。そこで第1のキーポイントとして、専門技術者とその人たちをマネジメントする層の育成が必要である。
第2のポイントの変化は、なぜWebの人たちがシステマチックなことまで話をするかというと、Webの10年間はものすごい変化の中を生きてきた。いろいろな変化にも耐えてきた人たちがこの業界にいる。これから訓練を重ねていけばWebの世界はもっと大きくなる。機能を取り囲むUIの部分を高度化し、情報伝達からコミュニケーションへと変化する。

PAGE2006コンファレンス デジタルメディアトラック「UI(ユーザインターフェース)の復権」より

2006/03/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会