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ネットワーク時代に躍進するフリーペーパー

インターネットに代表されるネットワークメディアの発達に伴い,従来の有料週刊誌や月刊誌の発行部数が落ち込んでいく中,フリーペーパーがその発行部数を伸ばしている。例えば新聞タイプのフリーペーパーはこの5年間,紙数で8割,発行部数で6割増加した。年間発行部数はすでに雑誌の年間発行推定部数を上回り,折込チラシ枚数とほぼ同程度の供給量になったと見られている。市場規模算出は非常に困難だが,推定で年間2,000億円前後と言われ,その規模はラジオや折込広告市場に匹敵,無視できないメディアのひとつとして,その地位を確立しつつある。

フリーペーパーが急激に部数を伸ばしている要因には,紙媒体発行の要素である「部数」「場所」「ターゲット」について従来の商慣行による流通構造上の制約や,従来の誌紙面づくりのタブーから開放されていることの再評価が挙げられる。部数大幅増の背景には,フリーペーパーの「Free」が本来の意味の「無料」よりも「自由」の色彩が色濃く,肯定的に捉え始められてきていることがある。

また,現段階における「R25」の成功は,フリーペーパーの新たな存在意義を国内でも各方面に認識させる契機となった。従来は広告代理店側からの有効な訴求方法が見つからなかったとされる,団塊Jr.に属するM1世代(男性25〜34才)に対し,フリーペーパーは非常に到達力の強いメディアとして高い可能性を有することを明らかにしつつある。

世界では,スウェーデン生まれのフリーペーパー「メトロ」が欧州を始め,米国・南米・アジアの世界17ヵ国に進出,700万部を発行するほか,ノルウェー発の「20ミニッツ」が,クオリティ重視の紙面づくりで高い評価を受けている。イギリスでは,有料紙が対抗して無料紙市場へ参入するなど,市場競争が激しくなってきている。アメリカでは,無料紙への転換を噂される有料紙も現れてきた。

世界最大級の無料紙「メトロ」のコンセプトは,フリーペーパーが世界的にアプローチしにくいと言われるM1世代への有効な到達手段であることを,従来の保守的な新聞業界にも認識させている。また,購読料収入を放棄する代わりに,配送費用を最少化すれば既存有料紙と同じクオリティの紙面づくりが可能になる「メトロ」のビジネスモデルは,活字メディアのあり方に大きなインパクトを与えており,活字メディアの生き残る一つの方向を示唆してもいる。

インターネットの普及は,読者にとって無料でも確度の高い情報が得られることを一般化した。フリーペーパーのクオリティが高まって読者支持が拡大するにつれ,広告代理店業界におけるフリーペーパーの位置付けも高まり,ひいては広告出稿者たちもフリーペーパーに対する見方を改め始めている。インターネットの普及がフリーペーパーの躍進と密接不可分なのだとすれば,ネットワーク社会の発展に伴って,大きな潜在能力を秘めたメディアとしてのフリーペーパーは,今後もさらにその存在感を増していく公算が強いのではないか。

出典:JAGAT印刷マーケティング研究会 会報誌「FACT」通巻185号「伸びゆくフリーペーパーの世界」より
2005年12月22日開催の当研究会セミナーにおいて,朝日新聞社 総合研究本部の主任研究員 稲垣 太郎氏が講演した「伸びゆくフリーペーパーの世界」を要約。

2006/03/19 00:00:00


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