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色校正の今日的な意味を考える

色校正作業の意味は、製版作業が予定どうりにできたかどうかの確認と、もうひとつは次工程でどうなるかを予見するシミュレーションである。製版終了時に内校として色校正を行う場合は、網点はなくてもよいが、次工程の印刷仕上がりを予見するためには網点化して本紙の特性も加味したものが望まれることがある。これは発注者との契約のうえで仕上がり予想について合意が必要なためで、それを色校正紙を媒介に行うので、コントラクトプルーフともいわれる。

しかしこれが完全に印刷仕上がりと一致する保証はないので、厳密なことをいうと本機校正になる。特殊な紙や特殊な効果を狙う場合は、校正に費用をかけても失敗しないようにしたほうがよいので、なるべく本番印刷に近い色校正が簡便にする努力は今後も続けられるだろう。だがそうする必要性は一般の印刷物では少なくなっている。

DTP化によって手書きではなく、最初から本番に近い紙面を元に検討するようになったとか、どこでもカラープリンタがあって、デジタルカメラで撮った段階から、中間工程でもカラーの確認作業が繰り返されるので、色校正を見ないと印刷物が予測できないところは減っている。だからDTPのモニタやプリンタなどの作業環境が整えば、普通の写真においては特に色校正をしなくても非常識な色になることはないだろう。

つまりかつては色校正の段階にいろいろな立場や視点から一斉にチェックが入ったのもが、現在ではDTP工程内に前倒しで分散的に行われるようになった。この作業中においていろいろな立場や視点のチェックを明確に行い、刷版や印刷の作業が標準化して、製版の採取段階で大判カラープロッタで面つけ確認をするだけで、遠隔地で刷版と印刷をするような作業方法もチラシは雑誌ではある。

しかしデザイン的に凝ったものはまだDDCPでないと確認できないものもある。意図的に本文文字を色付にするとか墨網にするような場合は、文字が網点化されるので、画面では読みやすさを予見できないからだ。このように画面やプリンタと網点印刷の差が問題になるようなことをわざわざする場合は、最初からDDCPの費用や期間を折込み済みで作業計画をすればいいのだが、実際にはデザイナが印刷のことをよく知らないために、プリンタ校正と本番印刷の差にあとから気付くこともある。

プリプレスの工程が複雑で長かった時代には、そこにかかわる作業者も多かったが、彼らは色校正でしかを仕上がりを予見出来なかったので、校正刷りを真剣に見ていたので、皆が印刷に至るプロセスについて、共通の理解をもっていた。今はプリプレス工程の統合化で作業の行きつ戻りつが減った反面、トータルに勉強する機会も減っている。印刷機のないところでは教育用としての網点プルーフをする意味も出てきているように思える。

テキスト&グラフィックス研究会会報 Text&Graphics 2006年2月号より

2006/04/05 00:00:00


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