当社は、「バリアフリーマップ」の作成をきっかけに、実際の利用者の意見を聞くことの大切さを実感し、ユニバーサルデザイン事業部を立ち上げました。
ユニバーサルデザインって何?
Universal Design(UD)を直訳すると、「すべての人にとって、できる限り利用可能であるように、製品、建物、環境に配慮した計画・設計」となります。
UDは、障害者や高齢者向けの概念と誤解されやすいのですが、みんなが自分のこととして考えることが重要です。だれでもケガをしたり、病気になったり、老化していきますよね?(図1)
▲図1 年齢、性別、国籍、体格、性格、利き手の違いなどさまざまな人の特性・状況を考えましょう
バリアフリーとは違うの?
バリアフリーとは、既存の障害(バリア)を取り除いていくという考え方です。例えば、活字の小さな本は、視力の低い人にとっては情報障害になります。難しい漢字は、外国人や子供たちにとって障害です。そこで、大活字版やルビ付きを後から用意すれば、情報を得ることができるようになるわけです。
それに対してユニバーサルデザインは、あらかじめ利用者に合わせて設計するという考え方です。本を作る前に、だれがこの本を読むのか? 読者を考えます。またはWebを作る前に、閲覧する人の環境を考え、文字サイズを変更しやすく設計します。バリアフリーの取り組みは大変重要で、このプロセスこそが、次のUD開発ステップの大きなヒントだと言えるでしょう(図2)。
▲図2 既存の障害(バリア)を取り除くことは、次のUD開発ステップにおいて重要なプロセスです
UDは本当に必要なの?
本来は当たり前!ってことですよね。デザイナーが、使う人の立場でデザインを行ったり、オペレータが、読み手の立場でレイアウトしたりすることは、当然のことだと思うからです。
ところが、限られた資源や予算の中で設計・開発された製品は、作り手・売り手にとって都合の良いモノになっていませんか? 作り手側と使い手側のコミュニケーションが不足し、結局だれのためのデザインか? がぼやけてしまっています。
また日本では、日常において、障害者や高齢者、外国人と関わる機会が多くありません。「すべての人にとって」という概念もピンとこない実情があります。
高齢化、国際化、多様化が進む日本においてUDは、みんなが楽しく生活するために欠かせない概念と言えるでしょう。
…次号では、UDの発祥や、世界の動向を考察していきます。
『プリンターズサークル2006年4月号』より
2006/04/19 00:00:00