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サービス精神で見直すべきデジタルコンテンツ

イギリスのBBC放送はクリエイティブアーカイブというプロジェクトを進めていて、番組をアーカイブしてインターネットでダウンロードを可能にするという。過去10年のニュース番組など1万時間分を対象にするそうだ。公共放送は図書館と同じという考えで、商業目的でなければ2次利用も可能にしていく方針で、市民が文化を創造する場を提供する。2006年夏から有料視聴者向けに公開実験が始まる。

従来デジタルコンテンツといえばコピー問題、つまり使う人に対する性悪説からいろんな対策を検討していたのとは180度姿勢が異なる。いくら性悪説を掲げても、技術依存でコピーを押さえ込むといたちごっこになる。技術は善意の人にも悪意の人にも使えるものだからだ。またモラルやルールで規制しようと思っても「根」が性悪説であったなら、モラルを掲げること自体が矛盾である。法律で縛ろうとしても法は対応が遅すぎる。

というわけで有料のデジタルコンテンツ流通は促進されにくかったが、人々がデジタル画像を互いに送りあうような時代なのだから、デジタルコンテンツの利用制限ばかり考えていると有料コンテンツが置いてきぼりになりそうな状況である。ネットの有料ビジネスはすべて利用者管理の仕組みはもち、履歴データを顧客のリピート促進のプロモーションに使いたいと考えているのだから、利用制限のために新たなシステムを構築するよりは、既存の仕組みを発展させた方がよいだろう。

AppleのiTuneは、他の音楽ダウンロードが権利者の防御的仕組みによってコンテンツを増やそうとしたのに対して、逆に利用者の便宜を先行させて成功した例であるが、捉えどころのない性悪説で何時までもビジネスイメージができないでいるよりも、現実的に取引が成立している利用者管理をベースに信頼関係を築き、サービスを拡張していくことを考える時代になっている。

日本ではBBCと似た立場であるNHKは、日本の法律やNHKの知的財産権の考え方などの制約で、すぐにイギリスのようには進めないだろうが、その制約となる日本の法律や知的財産権の考え方を変えていかなければ、日本はデジタルコンテンツの流通では後進国になってしまう恐れもある。

通信&メディア研究会会報204号」より

2006/04/13 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会