page2016会場で先行販売する『デジタルハンドブック いま知りたい30のキーワードと10の事例』は、デジタルが生活の一部となったビジネスにおいて、メディア業界、特に今まで紙メディアで働いてきた人たちにとって有益な情報を提供するものである。
デジタル用語を優しく読み解く
デジタル用語は、カタカナばかりで意味がわかりにくい。しかし、印刷業界においてもデジタル化の波は避けて通れない。印刷、出版のみならずすべての産業にデジタルは浸透してきている。その上、クライアント、もしくはエンドユーザーである生活者のデジタルスキルはどんどんアップしている。
そもそもデジタルの共通言語でクライアントと会話ができなくては、新しいアイデアや企画は生まれないのではないか。そんな悩みを抱えるすべてのメディア人に向けて本書は作られている。
30のキーワードを挙げると、ソーシャル視聴、モバイルファースト、キュレーションメディア、ネイティブ広告、コンテンツマーケティング、O2O、オウンドメディア、ショールーミング、バズマーケティングなど。確かにカタカナばかりだが、日頃の業務に役立つかどうかを基準に選定した。その中から特に具体例として「10の事例」を紹介している。
また、30のキーワードには入らなかったが、もう少し長い目で必要と考えられる情報を掲載するために、6つのコラムと3つのインタビュー記事を加えた。
法政大学社会学部准教授・ジャーナリストの藤代裕之氏には、コラム「大学生のソーシャル視聴」「大学生のメディア接触」で、デジタルネイティブ(この言葉も30のキーワードに入っている)である今どきの若者気質をわかりやすい図や大学の研究成果を交えて執筆していただいた。
経営コンサルタントの小林啓倫氏は、ソーシャルメディアやIoT(どちらも30のキーワードに入っている)、ドローンなどに関してビジネスの観点から読み解いた著書を多く著しているが、コラム「マーケティングオートメーション」「ドローン」ではその一端を披露していただいた。
インタビューでは、出版社合同プロジェクト「ネクストマガジン」、電子雑誌の流通用交換フォーマット(PAMP)、ラジオのある暮らしを身近にするradiko.jpの当事者に現状と課題をズバリ訊いてみた。
デジタルファーストから紙の書籍に
この本ができるきっかけは、あるメディア企業のデジタル関連の知識向上を目的とした教本づくりだった。
日進月歩のデジタルの世界だからこそ、知っておくべき基礎用語と事例を理解することで、その後の変化についても自分で対応できるような体質になってほしい。そんな思いから2015年春にスタートし、同年夏に社内向けに電子雑誌の形式でリリースしたところ、プリントアウトして読みたがる人が続出したという。
実は電子雑誌形式でまとめている段階から、書籍化は視野に入っていた。書籍や雑誌がもはや紙媒体だけのものとはいえなくなり、メディアが著しく変わりつつある今、こうしたデジタルに関する教本をJAGATが作ることは、印刷業、出版業だけでなく、メディア全般にとっても、あるいは印刷発注者やメディア企業を希望する学生にとっても有益なものになると考えたからだ。
DTPエキスパート認証資格制度が普及した背景には、印刷会社の営業担当者が取得するケースが増えたことがある。DTP用語がわからないままでは、顧客と現場の間でうまく機能しないからだ。同じような現象が広くメディア業界でも起きている。ずっと紙の本の編集に携わっていた人に、明日からすぐにWeb雑誌の編集をしなさいと言っても無理な話だろう。
本書はJAGATのクロスメディアエキスパート認証試験などの対策本ではないが、メディア業界で広く使われている言葉を読み解いている。自社のデジタル教材として、デジタルスキルアップのために役立ていただきたい。理解度を確認する全25問の小テストもあるので、ぜひトライしてほしい。
これまで紙のコンテンツビジネスで苦労されてきた人にとってのデジタル応援歌になれば幸いである。
(JAGAT CS部 吉村マチ子)
2016年2月3日(水)発刊
『デジタルハンドブック いま知りたい30のキーワードと10の事例』
A5判オールカラー140ページ
本体2,000円+税 ISBN978-4-88983-154-2
企画・編集・発行:公益社団法人 日本印刷技術協会