日本語組版とつきあう その46
外国人名を片仮名で表記
外国人名は、一般に片仮名で表記する。この場合、姓名の区切りには中点(中黒)を使うことが多い。複合姓では二重ハイフンで区切ることも行われている。
外国人名の姓名すべてを片仮名で示す場合は、その区切りにどのような約物を使用するかが問題となるが、縦組と横組で異なるわけではない。
しかし、イニシャルを含んでいる場合は、縦組と横組で表記法が異なる例がある。
縦組での表記例
縦組の表記例を図1に示す。このようにイニシャルを含んでいても、縦組の場合、一般にイニシャルの欧字に省略を示す省略符(ピリオド)はつけないで、区切りに中点(中黒)を使うことが多い。
(図1)
横組での表記例
図2に“J・K・アカーロフ”と“スティーブン・A・スミス”の横組の表記例を示す。このように横組ではいくつかの表記の方法があり、組版の処理法でも異なった方式がある。
(1)縦組と同様にイニシャルの欧字に省略符のピリオドをつけないで、中点で区切る。
(2)イニシャルの欧字に省略符のピリオド(字幅は約四分)をつけ、中点で区切る。
(3)イニシャルの欧字に省略符のピリオドをつけ、中点は使用しない。ピリオドは一般の和文に使用するものを使用し、ピリオドはアキを含めて全角である。
(4)前項の(3)と同様であるが、ピリオドの後ろのアキを詰めて、ピリオドは二分である。
(5)イニシャルの欧字に省略符のピリオド(字幅は約四分)をつけ、その後ろを四分アキにしている。
(6)イニシャルの欧字に省略符のピリオド(字幅は約四分)をつけ、その後ろに欧文の語間スペースを使用している。(5)とほぼ似た結果になるが、行の調整処理があると、ピリオドの後ろのアキが変わる場合がある。
(図2)
省略符の使用
イニシャルの欧字には、原則として省略を示すピリオドをつけることになる。この場合、例の(2)のように区切りに中点を使用すると区切りがダブった感じになる。
そこで、例の(1)のように省略符をつけないで、中点だけにするか、例の(3)以下のように省略符をつけ、中点をつけないようにする。
(3)以下の例では、“アカーロフ”の例は問題がないが、“スミス”の例では、“スティーブン”と“A”との間に区切りがないので、やや落ちつかない感じがする。ただし、このような組版処理は実際にも行われている。
省略符のピリオドの組版処理
欧字だけの人名の場合は、省略符としてのピリオドの後ろは、一般の欧文の語間と同じ扱いでよい。
ここでの問題は、省略符としてのピリオドの後ろに片仮名が配置された場合である。
まず、省略符としてのピリオドとして和文用を使用するか、欧字用を使用するかである。例の(3)や(4)では、欧字とピリオドのベースラインがそろっていない。これは避けたほうがよい。
次の問題はピリオドの後ろのアキである。例の(3)のようにピリオドのアキを含めて全角にすると片仮名との間が空きすぎである。そこで、例の(4)以下のように詰めたほうがよい。和文用のピリオドを使用しないとすれば例の(5)か(6)となる。処理法としては(6)が簡単であるが、アキが一定しないという問題がある。
どの方式を選ぶか
欧字のイニシャルを含んだ片仮名の人名は、決定的にこれだという方式はない。そこで、表記の方針や出版物の目的に応じて方式を選んでいくことになる。
電子書籍のように縦組と横組の両方で表示されることが予定されている場合は、省略符が使用されていないが、区切りは示されているのであるから、例の(1)とすることは考えられよう。
横組だけでよいのであれば、やや難点はあるが、例の(5)が望ましであろう。ただし、処理法を簡便にするということを考慮する必要があれば、例の(6)を選んでもよいであろう。