2月15日〜17日に開催されたギフト・ショー春2023から、印刷関連会社の出展を紹介する。
株式会社ビジネスガイド社が主催する、日本最大のパーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市「第95回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2023」が東京ビッグサイトで2月15日(水)〜17日(金)まで開催された。
同時開催展の「第13回LIFE×DESIGN」「第33回グルメ&ダイニングスタイルショー春2023」「LIVING & DESIGN2023」と合わせ、総出展社数は2774社。ビッグサイトの東棟1ホールから7ホールまでを使い、会場は久々の賑わいを見せた。
印刷会社や製本会社などの出展も多く見られ、印刷物製造で培った資産を生かした独創性のある商材をアピールしていた。その一部を紹介する。(社名50音順)
大栗紙工株式会社
2021年度グッドデザイン・ベスト100を受賞した、目に優しいノートのブランド「mahora(まほら)」を紹介。これは発達障害当事者の声に答えて、光の反射を抑えた国産色上質紙を中紙に採用、罫線は、太罫・細罫が交互に入るタイプと網掛けの帯が入るタイプの2種をデザイン、そして日付欄などを取ったシンプルな構成とした。障害の有無を問わず誰にとっても使い心地の良いノートとして訴求している。自社オンラインショップのほか有隣堂・LOFT・ヨドバシ.comなどで取り扱っている。
会場では、「mahora」の色・罫・サイズ別のラインナップを展示。そのほか、A1サイズのシートを折りたたんでA4サイズに収めた「A4→A1 note」などを紹介した。
欧文印刷株式会社
UVニス加工技術を生かしたノート型ホワイトボードの「nu board」の新商品「nu board Square」をメインに出展(写真左)。その名の通り、判型は正方形で、表紙の色は、サーモンピンク・エアリーピンクなどパステル調の6種類から選べる。付属のマーカーペンは、線幅約0.8mmの極細タイプで細かい文字が描きやすい。若い世代や女性への訴求を図る。 また、QRコードを利用した音声メッセージシステム「Voice-it」、2・3・7・8 の目盛り数字が付いて読み取りやすい「2378定規」などのオリジナル製品を紹介。そのほか同社が製造し、株式会社ノウトが販売する、インクを塗ると絵や文字が浮かび上がる「ぬりたくり絵」のシリーズも紹介した(写真右)。
株式会社研恒社
東京都中小企業振興公社のブースに共同出展。2021年度グッドデザイン賞を受賞したスライド式リングレスノート「SlideNote(スライドノート)」のラインナップを展示した(写真左)。用紙に穴を開けずに綴じられる手軽さ、目的に応じて内容をカスタマイズできる柔軟性、用紙の無駄が出ない環境配慮などが特徴である。企業へのOEM実績もある。 また、2022年11月に開催された文具女子博2022では、表紙が裏まで折り返せる両折りタイプを先行販売し、好評を博した。現在は一般販売に向けて準備を進めているとのことで、会場ではサンプルを展示した。そのほか、製品を紹介したテレビ番組の録画とプロモーション動画を上映した(写真右)。
株式会社コスモテック
同社は機能性フィルム製造の技術をl応用したウェアラブルメモ「wemo(ウェモ)」をシリーズ展開している。今回は東京都中小企業振興公社のブースに共同出展。腕に巻き付けるバンドタイプの既存ラインナップに加え、抗ウイルス加工を付加した新製品「抗ウイルス+抗菌仕様」、2022年に発売したバンドタイプに装着できる専用ボールペン「wemoペン」(写真右)を紹介。また日用品に紐で吊るして使用する「#tag」のシリーズ商品を紹介した。
株式会社昇寿堂
「第13回LIFE×DESIGN」で江東ブランドのブースに共同出展。江東ブランドとは、東京都江東区が、区内で優れた技術を継承・発展させているものづくり企業をブランド企業として認定する事業である。同社は2023年1月にこの認定を受けている。
ブースでは、半透明ユポ紙に両面印刷する独自プリントサービス「ピュアWプリント」、コピーガード・モアレ印刷などの偽造防止印刷、活版印刷を紹介」しサンプルを配布。またデジタル長尺印刷・加工技術を活用して開発中の、蛇腹折りのノート「シン・大学ノート」(写真右)も披露した。
株式会社新晃社
同社が特殊印刷加工の可能性を追求するために立ち上げた実験ブランド「印刷加工実験室」を紹介した。 第一弾の商品「SAWARIGAMI」(写真左)は、紙の表面にざらざらとした凹凸を施す同社の独自技術「さわりがみ加工」を活用した折り紙。この技術は、従来の擬似エンボス加工と同じく2種類の性質の異なるニスを重ねるものであるが、「擬似エンボス加工」が紙面全体にニスを塗布するのに対し、「さわりがみ加工」ではエンボス部分にのみ塗布している。エンボス以外の部分は紙地が残るので、用紙の風合を生かすことができるのが利点である。 会場では「SAWARIGAMI」の商品サンプルと折り紙などを展示。そのほかのラインナップとして開発中の祝儀袋や日本酒のラベル・パッケージ(写真右)なども紹介した。
株式会社第一印刷所
レーザー加工による緻密なデザインが特徴の紙製プロダクトブランド「き/ざ/む」をメインに出展した。本社工場のある新潟で開催される長岡花火をイメージした「かみはなび」(写真左)、ピアスになる「紙耳輪(かみみわ)」などのほか、2022年に新製品としてテスト販売を開始した「紙にしきごい」(写真右)も披露した。同社を含む第一印刷所グループは、印刷と共にプランニング・プロモーション・映像・ウェブ制作・配送などをワンストップで提供するサービスを行っている。一方では、新潟の文化と結んだ商品開発にも長年取り組んでいる。
大同至高株式会社
販促・ノベルティ用の商品を多数開発している同社はさまざまな展示会に出展し、毎回多彩な製品をアピールしている。今回は、組み立て式のPP製知育玩具を中心に出展した。ブースにはバス・トラック・飛行機などの乗り物(写真左)、城型貯金箱(写真右)、クレーンゲームなどユニークな製品が並んだ。各種イベントに来場した子供への配布物、塾・通信教育の入会特典、小売店での購入特典、菓子類のおまけなどへの活用を提案していた。
株式会社千葉印刷
「第13回LIFE×DESIGN」に、魚の表皮の模様や色のみで魚の名前を当てる「さかなかるた」で出展。取り札には魚の表皮の絵柄、読み札にはその名前と特徴が印刷されており、子供も大人も楽しみながら魚の知識が得られる。オンデマンド印刷機Iridesseを活用し、表皮のきらめきをメタリック印刷で、ウロコの凹凸をクリアトナーの厚盛り印刷で再現している。2022年度グッドデザイン賞でグッドフォーカス賞[技術・伝承デザイン]を受賞した。会場では、札の一部を利用して魚の名前を当てるゲーム感覚の展示が行われていた(写真右)。また、第二弾商品の淡水魚版を紹介。これは2月14日からクラウドファンディングを実施し、その経過は好調だという。
株式会社日本ラベル
板橋区産業振興公社のブースに共同出展し、ブラックライトを当てて遊ぶ絵本セット「化石みっけ」を紹介した。
絵本・化石シール5枚・ブラックライトがセットになった商品。絵本の一部に、ブラックライトに反応する透明なインクで化石が印刷されており、通常は見えにくい絵柄が、付属のブラックライトで当てると青く浮かび上がる。また化石シールは、絵本と同じ特殊インクで印刷し、再剥離糊を使用しているため、貼り・剥がしが可能。家庭内で壁や家具の平滑な面に貼って、化石探しをするなど、遊びを工夫できる。関連商品として化石シール単体もあり、ティラノサウルス、アンモナイト類、始祖鳥、三葉虫類などが印刷されている。
現在オンラインショップのほか、ジュンク堂、蔦屋書店、有隣堂などの書店で取り扱っている。
株式会社扶桑
シール・ステッカー製造技術を生かした、布に貼れるステッカーのブランド「irodo」で出展。アイロンが不要なことから布地へのデコレーションが自由に行えることが魅力。企業・団体とのコラボレーション実績も重ねている。また、2022年11月に開催された文具女子博2022では紙専用の「irodo」を発表し、限定販売した。これが好評を博したことから、現在は一般販売も行っている。会場では布専用製品の実演を実施(写真左)、また紙専用製品(写真右)をアピールした。
以上、印刷関連の出展の一部を紹介した。
いずれの企業も、予想を超える数の来場者の対応に追われながらも、多くのフィードバックを得て手応えを感じているようだった。取材中も、来場者から取引に関する具体的な質問が出されている場面が見られた。また、出展者同士の情報交換も行われており、新たな協業の可能性も見えていた。
今回の展示に見られたような新規事業は、それ自体で企業の利益の柱になるものではない。しかし、企業の持つ技術力や企画力を語るプロモーションツールとなり、OEM提供や、協業による新たな商品開発へのチャンスともなるのである。今後の展開に注目したい。
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)