2022年度東京ビジネスデザインアワードの結果概要を紹介し、中小企業とデザイナーが協業する意義を考える。
東京都が主催し、公益財団法人日本デザイン振興会が企画・運営する東京ビジネスデザインアワード(以下、TBDA)は、中小企業とデザイナーとの協業による事業創出を目的とするコンペティションである。
アワードの概要 →
2022年度のアワードは、テーマ10件に対して寄せられた84件のデザイン提案から、マッチングが成立した9件がテーマ賞として2023年1月12日に発表された。
また2月9日には提案最終審査会が開かれ最優秀賞、優秀賞が選出された。以下、受賞提案を紹介する。
[最優秀賞]プリント基板の新しい使い方を提案するサウンドプロダクト
提案者:田村 匡將(代表・建築家・デザイナー)、元木 龍也(エンジニア)、高橋 窓太郎(ビジネスアーキテクチャー)、本杉 一磨(建築家・デザイナー)[デデデ]
企業:有限会社ケイ・ピー・ディ
ケイ・ピー・ディは、プリント基板の回路設計から組み立てまでの一貫制作を行っている。技術開発にも取り組み、2021年に「半田付け不要の基板ジョイント導通技術」を開発した。
田村氏らはこの技術を応用し、歯車型の基板を用いた音再生装置を構想。歯車の物理的な動きから電子音楽が生まれる意外性が魅力である。審査では、新しい遊びや文化を生み出す可能性などが評価された。
[優秀賞]スクリーン印刷による新たな魅力の開発
提案者:大木 陽平(デザイナー)[株式会社サイド]
企業:司産業株式会社
司産業は、シルクスクリーン印刷による粘着フィルムの製造技術を生かし、屋内・屋外の看板用大型ステッカー、車両マーキングなどの製造から施工までを手掛けている。
大木氏は、水や土で分解されるインク、自然由来のインク、新しい質感表現などのテーマでテスト印刷を行い、BtoB・BtoCの事業化プランを提案した。
[優秀賞]貼箱製造の技術と設備を活用した箱だからできる玩具の提案
提案者:泉 伸明(アートディレクター・デザイナー)[株式会社キュー]
企業:株式会社泰清紙器製作所
泰清紙器製作所は、貼箱を軸に、印刷紙器、紙加工製品などの製造を行っている。プリンターや加工機など幅広い設備を保有し、企画・デザインから試作製作まで自社で行うことができる。
泉氏は、キッズ産業とギフト市場への参入を視野に、玩具と絵本を掛け合わせた商品を構想した。貼箱に複数枚のカードが収められた絵本玩具であり、知育に役立つとともに、環境に配慮した玩具であることも訴求していく。
そのほかのテーマ賞受賞企業
最優秀賞・優秀賞受賞企業と同様に、今後TBDA事務局の支援を受けながら事業化に向けた改良が行われる。
シームレスな圧着技術で機能とデザインを楽しむプロダクト 提案者:榎本 大輔(デザイナー)、横山 織恵(デザイナー)[株式会社hitoe] |
海洋生分解性複合素材を活かした経年変化を楽しむプロダクト 提案者:藤原 和輝(プロダクトデザイナー)、横山 翔一(プロダクトデザイナー)、栃木 盛宇(プロダクトデザイナー)、伊豫田 敏輝(デザインエンジニア)、銅木 彩人(デザインエンジニア)[株式会社ExtraBold「BOLD GYM」] |
絶対にゆるまないナットのゆるぎない価値を伝えるPR戦略 提案者:小玉 雅雄(デザイナー)[株式会社magick.] |
パーマロイプロダクトを通したブランド戦略の提案 提案者:伊藤 兼太朗(クリエイティブディレクター)、安瀬 優貴名(アートディレクター、デザイナー)[株式会社ホルバルーン] |
医療器械職人によるソリューションサービスの構築とブランド展開 提案者:榎本 清孝(アートディレクター / デザイナー)[株式会社トムテ] |
エビデンスプラットフォームを活用した付加価値アピール 提案者:野田 真吾(ビジネスデザイナー) |
各社がどのような形で商品を市場に出していくのか、今後の展開を見守りたい。
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)
※会員誌『JAGAT info』 2023年3月号より一部改稿