※本記事の内容は掲載当時のものです。
ユーザレポート:ビジュアル・ワークフローの確立で課題を解決 -ActiveAssets-
2006年2月23日にエプソン販売株式会社会議室で、社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)主催「今、求められるビジュアル・ワークフロー」セミナーを開催した。
同セミナーでは、印刷・メディア制作業務のIT化が進む中で、ワークフローを改善し、より効率を上げる方法を株式会社毎日コミュニケーションズ 書籍・ムック編集部 小木昌樹氏が実際の事例を元に提案した。
いい本をより安く作るために
毎日コミュニケーションズでは『Mac Fan』『PCfan』を始めとするパソコン雑誌や書籍、就職情報誌を手掛けている。
「出版を取り巻く環境が厳しい状況の中、いい本をより早く、より安く作る仕組みを構築していかなければ、出版業界では生き残れない」と小木氏は語る。
これまでの書籍制作におけるワークフローの問題点として
1. データの受け渡しにバイク便や宅急便を使い、費用と時間が掛かる
2. 色校正のやり取りが多い。一度で済むことはなく、2校、3校と時間も手間も掛かってしまう
を挙げている。
これらの課題を解決するのが、フルデジタルのワークフロー確立である。そのためには、デジタル化が大きく立ち遅れている業務やコミュニケーション環境を改善しなければならない。しかし、単にデジタルでのやり取りを実現すればよいということではなく、画像原稿・校正などのイメージ情報を発注側・受注側・制作側でネットワークを活用して即座にやり取りすることが必要である。言わばビジュアル・ワークフローと言うべきものであり、それによって印刷・メディアにおいて大幅な納期短縮とコストダウンなどの実現が図れる。
「出版制作を大まかに分けると、入力(素材の制作)、制作(デザインや組版)、出力(製版)といった流れになる。DTPやデジカメ、CTPの登場で入力、制作、出力それぞれの工程のデジタル化は進んでいると言えるだろう。しかし、これだけでフルデジタル化になったとは言えない。実は、各工程と工程をつなぐ部分のデジタル化が大切だ」(小木氏)
ワークフローのフルデジタル化、つまり具体的には、電子送稿や、ネットワーク送稿といった環境を整え、カラーマネジメントによるワークフローを作るということだ。
「印刷の安定化も大事だが、印刷機の色をどの程度再現できるかも大切だ。カラーマネジメントを確立して、デザインの工程に、印刷機のプロファイルをフィードバックすれば、モニタとプリンタによる色のシミュレーションができたことになる。
また、AdobeのCreative Suite2は、カラーマネジメントに対応したアプリなので、これらを利用すれば、印刷に入る前段階で色のシミュレーションができる。この段階である程度色の確認ができれば、校正紙が行ったり来たりすることはないだろう。平台校正どころか、DDCPも不要になる」(小木氏)
ワークフローを改善し、仕事の効率を上げる
毎日コミュニケーションズから2月に発売された本『プロが教えるDTPのキメ技』は、エイビス・テクノロジーズの「ActiveAssets(アクティブアセット)」を用い、ビジュアル・ワークフローを確立した。これにより、コスト削減と制作スピードアップを実現できた。
ActiveAssetsは、データを管理するデータベース機能と、作業進行の進捗管理をするプロジェクト機能という2つの機能があり、これらをインターネットを通じて複数の人と、ブラウザ上でやり取りをしコミュニケーションをするものである。
各担当者はテキストや画像をActiveAssetsに入れることで、データを一元管理し、スピーディな素材収集を図った。
「例えばデザイナーから提案されたカバーに『文字の色をもう少し濃くしてほしい』『グラデーションをもう少し狭くしてほしい』といったコメントを付けて返し、さらにデザイナーからコメントが来るということを繰り返して、ActiveAssets上で案を練り込んでいった。
デザイナーとリアルタイムでやり取りができ、画面上に即座に反映される。またデザイナーと自分以外の人も参加でき、いろんな人の意見を集約できる。こういった機能もうまく活用すればとても利便性が高い」(小木氏)
ActiveAssetsは、登録ファイルをサムネールやアイコン表示で管理できる。アクセス権限をファイルやフォルダごとにユーザ別に設定できるだけでなく、有効期限も設定可能だ。
「それまで使っていたFTPでは、ファイルネームしか分からないし、ソフトによっては日本語名を付けると化けてしまい、中身が全く分からないということがあった。サムネールによって画像が何であるか一目りょう然だ。この中のどれを使うか、差し替えるかといったコミュニケーションも取りやすく、この機能によって間違いがだいぶ減った」(小木氏)
データは、PDF/X-1aにして、ActiveAssetsで岐阜にある印刷工場にネット入稿、CTPで印刷という流れになる。
ICCプロファイルはAdobe RGBを使用している。デジカメの画像もレタッチもすべてAdobe RGB上でファインデータを作り、編集サイドですべてJapanColor 2001 coatedにプロファイル変換し、デザイナーに渡して組む。色校正は、カラーマネジメントされたモニタとカラーレーザプリンタで行い、毎日コミュニケーションズのオフィスの中で済ませた。それ以外の人が色を確認したい場合は、それぞれがモニタで確認し、関係者全員がビジュアルについて同じ意思の疎通と感覚をもてるようにした。
「良いものを作りたいという思いから何度も色校を出したのだが、結果的に印刷費に跳ね返ってきて、なかなか思いどおりに仕上がらない。こうした無駄を何度も繰り返し、いろんな人たちの話を聞いてやっとこうしたワークフローにたどり着いた」(小木氏)
クライアントのもつデジタルデータを資産化して活用価値を上げ、データ資産を生かすワークフローを提案する。そうすることで、関係者がより楽になり時間短縮が実現できるだろう。キーワードはグループコミュニケーションである。
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『プリンターズサークル』2006年4月号より
(2006年5月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)