新年明けましておめでとうございます。昨年の世界経済を振り返ってみると、中国経済の成長鈍化や米国の利上げ観測により、新興国・資源国経済が不振を極めました。ヨーロッパでは難民・テロ活動・ウクライナ問題などの地政学的問題が顕在化しました。日本経済は在庫投資が大幅減となりましたが個人消費・輸出は堅調でした。円安・低金利により企業業績は好調で12月には株価も2万円前後まで回復しました。
印刷マーケットにおいても、業界に特有な構造的問題は別として、年初に予想された通り金融緩和による円安基調は変わらず結果として株価も上昇したことで、全般的にはそれほど悪くはなかったのではないでしょうか。政府の設備投資減税や自治体のものづくり補助金などの影響もあり、各社の将来にむけ投資が行われ、機械メーカーも好調だったようです。
秋に行われたIGASではデジタル機の出展が多数を占め、品質要求度が高く保守的な日本の市場でもトナーやインクジェットのB2判の枚葉機や1200dpiのインクジェット輪転機が登場し、従来と比較しても品質を損なうことなくよりスピーディーな生産の小ロット化が可能となり、需要のダイナミックな変動に伴う在庫の最適化、提供する商品やサービスのバリエーションの多様化等、現代社会の要求に応えようとする姿勢がようやく現実的に感じられるようになってきました。
一方で、デジタルメディアでは新たなサービスとして音楽や動画の定額配信が始まりました。海外では「紙メディアはサスティナブルなメディアである」ことを広く世の中にアピールするために、「プリントパワー」という活動を製紙、印刷、新聞、出版、郵便といった業界が業界の壁を越えて協力し推進しているようです。
昨年JAGATではジョー・ウェブ博士の最新刊『THIS POINT FORWARD』の和訳版『未来を創る』を春に出版し、多くの方に読んでいただきました。パーティー等で地方の会員の方々とお会いして、なかなか面白いなどのご意見をいただき、そうした折にはやはり日本版を出版して良かったと思いました。
JAGAT地域大会(JUMP)などでも2020年までに印刷会社は何をすべきかについてのテーマでパネルディスカッションしましたが、いくつかの会社では生産の効率化はもちろんですが徐々に顧客ニーズの方に視点を移して新たなサービスを考えていることが感じられました。ビジョンや戦略は経営者が考えるだけでなくより多くの社員に浸透していくことが重要です。
今年のpage2016では、各出展社からの提示の他に、上記のテーマでカンファレンスやセミナーを用意しました。未来に向けてぜひ足を運んでみて下さい。
公益社団法人 日本印刷技術協会
会長 塚田 司郎