誰もがスマホを持ち、ネットワークにアクセスすることが一般的な時代となった。そのため、企業のマーケティング活動はデジタルマーケティングに重点を置きつつある。12 月8 日、メディアテクノロジージャパン(MTJN)は「BPO セミナー?印刷のあたりまえが変わっていく?」を開催し、SCREEN G&P のGA ソリューション部長の浄光弘之氏がマーケティングオートメーション(MA)について、レゾロジック代表取締役の池野弘明氏が販促資材マネジメントツールについて講演した。
オンライン販売大手は大量のカタログを活用
顧客は贅沢なカタログを手に取ることで、より多くの商品を購入する傾向がある。例えばアウトドア用品のL.L.Bean は、自社のWeb サイトに頻繁にアクセスしている顧客にその関心に応じた20〜50 ページのミニカタログを制作し、送付し、大きな効果を得ている。
スーツやカジュアルウェアの販売サイトのBONOBOSでも、自社サイトに関心の高い顧客に同様なミニカタ
ログを送付している。このようなミニカタログにはリマインダー効果があり、オンラインショッピングの導線となっている。また、一般の顧客に対して、カタログを送付した顧客の購入金額は1.5 倍だという。
データ活用型マーケティング
一般企業において、インターネットを利用し、Web、メール、SNS、スマホアプリなどを利用するデジタルマーケティングが進展している。データ活用型マーケティングのソフトウェアを導入し、顧客の属性や行動履歴、マーケティング実行結果を分析する。その内容に応じた最適なアクションを自動で行う。この一連の活動を実行するのが、マーケティングオートメーション(MA)である。
MA が盛んになった背景として、従来のリード(見込み客)獲得重視のマーケティング手法から、ナーチャリング(優良顧客への育成)重視の手法への変化がある。リードジェネレーションからナーチャリング、コンバージョン(購買行動への転換)へとステップを進めていくためのツールがMAである。
IGAS2015 の際に、SCREENでもMAツールを利用してこれらの活動を実行し、検証を行った。メールやDM によって関心のある層を集客し、プレゼントへの応募によって個人情報を登録してもらう。展示会場でプレゼントを手渡しすることで来場を促すという流れである。
顧客ごとのユニークなURL をMA ツールで生成し、DM にQR コードを印刷する。DM を受け取った顧客はこのURL にアクセスするため、DM の開封状況も把握することができる。メール開封やWeb サイトへのアクセスなどをスコアリングし、関心の高い層に送付したメールの開封率は通常よりはるかに高く、一斉メールでは開封率が低いという結果を検証することができた。
デジタルマーケティングにおいてもDM やミニカタログなどの紙メディアを活用することは、前述の大手通販会社の例にあるように、たいへん効果的である。ただし、デジタルメディアと同様にその結果をトラッキングし、行動分析や効果測定できることが不可欠である。
顧客ごとのDM やミニカタログなどデジタルマーケティングと連携した印刷物は、デジタル印刷機無しに製作することできない。デジタル印刷機を導入して何かを始めるのではなく、世の中がデジタル印刷機を必要としている時代になったといえる。
販促資材マネジメントツールで顧客の業務フローを改善
レゾロジックは14 年前からWeb to Print のエンジンを開発し、主要プリンターメーカーや大手印刷会社などを経由して、大手企業などに提供している。Web to print は、Web 上でレイアウトを指定して印刷物を発注する仕組みである。店舗単位でチラシやパンフレット、DM などの印刷物を定期的に発注する企業や、B to Cの印刷通販サイトで採用されている。
販促資材マネジメントツールEdition PriBiz は、印刷発注のためのストアフロントをクラウドサービスとして提供したものである。サービス開始1 年で大手企業20 社での導入が決定した。製品パンフレットやセールスマニュアル、ノベルティなどの販促資材のマネジメントは多くの企業にとって潜在的な課題となっている。販売店や代理店は必要な資材を本部の資材管理部門に注文する。管理部門では、複数の販売チャネルに的確に販促資材を納入することと、印刷会社やノベルティ製作会社、倉庫などへの製造・配送の手配、在庫管理や予算管理、棚卸など煩雑な業務を行っている。これらの業務をインターネット上で一元管理するのが、Edition PriBizである。
Edition PriBiz は資材の検索、手配・申請・承認管理、在庫・実績管理、製造・配送管理などをWeb アプリケーションで行う。販売店や代理店は、Web で販促資材を発注するだけである。納期や経費・予算も即座に把握することができる。全国の販売店の注文状況に応じて、システムが倉庫から在庫分の配送を指示する。配送先や製造依頼など、すべてシステム上に登録されている。製薬会社、生損保、プリンターメーカー、電機メーカー、飲料メーカー、スポーツ用品、食品、自動車販売などさまざまな企業で導入されている。
資材の種類ごとにカテゴリーを自由に設定し、配送拠点、サプライヤーを紐付けることができる。資材の評価やコメントを共有することや、利用実績を参照することができ、利用率の高い資材を効率よく探すことができる。発注操作はiPad に最適化されており、タブレットで簡単に行える。
電子配信が可能な資材は、ダウンロード案内メールを送信することもできる。N 種類の資材をN 箇所に配送手配することも、Excel の要領で簡単に指示することができる。各社の会計ルールに応じて、経費の分担や集計を行うこともできる。資材ごとの基準在庫を設定し、運用管理者や倉庫担当者の双方で監視できるようになっている。棚卸業務のための在庫金額の集計・管理にも対応している。ロジスティックス独自のシステムがある場合、データ連携やAPI連携も可能である。DM 配信オプションでは、DM の差込用データをアップロードし、DM のデザインレイアウトを行い、デザインや宛名設定、発注・配送指示を行うことができる。
スマホが普及して誰もが簡単にネットワークにアクセスできる現在、あらゆる企業においてデジタルマーケティングが重要になってきた。しかし、デジタルマーケティングにおいても紙メディアは重要なツールである。顧客にとってデジタルと紙メディアの連携をどのように実現するか、業務ワークフローを改善できるかどうかが重要な課題であり、印刷会社にもその対応が求められている。
(研究調査部 千葉 弘幸/会報誌『JAGAT info』2016年1月号より一部抜粋)