「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。
JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の2015年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は137.7名、1社当たりの平均売上高は31.6億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。
【表1.現在導入率の高い順】
表1は現在導入が多い順に並べたものである。第1位はカラーマネジメントシステムで66.7%、第2位がバリアブルデータ印刷の49.1%、第3位は高精細/高色域印刷で48.1%、次いで電子出版/電子カタログが30.6%となっている。ここまでの順位は昨年度、一昨年度と全く同じで3年連続同じ結果となった。上位以外においても昨年度と傾向は似通っており大きな順位の変動はない。CG(コンピュータグラフィックス)制作が前年から伸びているのが目につく程度である。
【表2.今後3年以内に導入予定の高い順】
表2は今後3年以内に導入を予定しているとの回答が多い順に並べたものである。第1位はスマホ/タブレット対応アプリ制作とWebToPrintが並んで7.4%である。次いで、電子販促、リモートプルーフ、JDFワークフローが6.5%で並んでいる。
デジタルメディア系の導入意欲が高い。特にスマホ/タブレット対応アプリ制作は、前年の11位(4.6%)から大きく伸びている
【表3.満足度の高い順】
導入した結果の満足度は、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している(表3)。
満足度については昨年度からの変動がみられる。導入率が10%を超えているもので、平均満足度が高いのはバリアブルデータ印刷(0.82点 前年は5位)、XMLを利用した自動組版(0.70点 前年は7位)、高精細/広色域印刷(0.65点 前年は1位)の順となっている。
バリアブルデータ印刷はポイントでも前年の0.46から0.82へ大きく伸びている。ターゲットに応じて最適な内容を届けるというマーケティング手法が定着してきているようだ。
一方で、デジタルメディア系の満足度が低調という傾向は変わっていない。電子出版/電子カタログの満足度が-0.58点(昨年は-0.13点)、電子販促が-0.39点(昨年は0.00点)、スマホ/タブレット対応アプリ制作が-0.22点(昨年は-0.26点)であった。
縮小傾向にある従来型の印刷メディアをカバーすべく、デジタルメディアに取り組むも我慢が続くという傾向は変わっていない。専門のチームを立ち上げて、それなりの実績は上がっているものの紙とデジタルで組織も知識も意識も分断されていて会社全体としてシナジーが出ていないという話しを聞く。技術的なキャッチアップもさることながら、会社全体で取り組むというムードづくり、底上げ教育も必要だろう。
(研究調査部 花房 賢)
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