印刷業、製版業、製本業、印刷物加工業、印刷関連サービス業から構成される、印刷産業。事業所数は2万以上、製造業のなかでも5番目に多い事業所数です。
JAGATでは、「印刷界OUTLOOK」として印刷・同関連業に関係するさまざまなデータを各種統計資料から選びました。>>印刷界OUTLOOK2015/2016
緩やかに変化する人員構成
JAGAT会員企業のうち、メーカー、ディーラー会員を除く印刷およびプリプレスを主業務とする企業を対象とした「JAGAT 印刷産業経営動向調査2015」(2014 年度)がまとまりました。印刷会社の実態について、近年の傾向と比較しながら「人(人員配置)」「モノ(機械装置・設備額)」「金(売上高、経常利益率)」の視点で見ていきます。
「人」について印刷会社の平均像を見ると、就業スタッフの60.4%が生産部門、25.1%が営業部門、14.5%が管理部門(役員を含む)に配属されています。10 年前の2004年は、生産部門は59.2%、営業部門は23.3%、管理部門は17.5%でした。直近10 年間の傾向を見ると、生産部門の割合は60%前後で推移、営業部門の増加傾向に対し、管理部門は減少傾向にあります。
近年は、さまざまな合理化努力がなされ、企業の平均規模は減少していますが、生産部門の省人化は思ったほど進んでいません。多品種小ロット化、短納期化、ワンストップサービス要請など、顧客からの要望が多様化して案件が複雑化、結果的に生産部門人員数の減少にはつながっていないようです。
活発化する設備投資
印刷産業は、土地や建物、印刷機械など、各種設備を必要とする装置産業の一つに数えられますが、最近では、事業領域拡張により自社で生産設備を持たず、外部の協力企業に100%生産を委託している印刷会社も増えています。ただ、印刷物を生産する場合、工場設備は必須であり、どの程度の機械装置を有しているかが、工場における合理化の度合いを知るバロメーターにもなります。
印刷物生産にはパソコン(DTP)からCTP、印刷機、加工機と、今なおさまざまな設備が必要です。これら機械装置・設備額の傾向を見ると、長らく低下傾向にありましたが、2014 年調査では総資産の9.7%と約1割を占め、5 年ぶりの増加となりました。また、機械装置額の従業員1 人当たり平均は177 万円と、こちらも4年ぶりに増加しました。景気回復による設備投資の再開、政府による投資促進策(補助金等)などを背景に、印刷会社の設備投資抑制傾向は確実に軟化しています。
停滞する利益率改善
売上高は2 年連続の微増となりましたが、売上高が押し上げられたのは、景気回復による需要面の好影響と、消費増税分3%が売上高に上乗せされている名目上の要因があります。
経常利益率を見ると、物価高や円安、消費増税に伴うコスト高を受け、5 年連続の2%台も3 年ぶりの低下(前年差0.4 ポイント減)の2.2%となりました。印刷会社の利益率は、1990 年代前半は5~6%台を維持していました。しかし徐々に低下し、リーマンショック直後の2009年は1.7%と調査史上最低を記録、その後少しずつ持ち直すも、2%台にとどまっています。
日本経済の情勢、長期にわたって続いたデフレ時代などに合わせ、縮小均衡型で利益を確保してきた印刷会社ですが、今回調査ではさまざまな変化が見られました。印刷会社経営は、新たな時代に合わせた成長策を模索する転換期に来ているといえるでしょう。
(「印刷界OUTLOOK2015/2016」より)