【クロスメディアキーワード】ステークホルダー(利害関係者)
企業は、さまざまなステークホルダーと関わり合いながら経済活動を行う。企業のメディアによるコミュニケーションでは、情報の受信者がステークホルダーとなる。企業が活動を続けていく上で不可欠となるステークホルダーは、
①生活者(顧客):商品を購入する人や組織、②出資者(株主、金融機関など):資本を提供する人や組織、③従業員:企業の経済活動に従事する人、④取引先:商品を提供するために必要な材料を購入する先となる人や組織、⑤社会:企業が活動を行う拠点がある国やその地域、の5 つを例として挙げることができる。
製品やサービスなどの商品を提供する企業にとって、「顧客」の存在がなければ経済活動が成立しない。また、「出資者」がいなければ、資金調達の選択肢が減り、企業の設立や運営に支障をきたす。「従業員」は、さまざまな事業活動を支えている。すべての生産活動を単独で実施する場合は別だが、「取引先」がいなければ、材料の仕入れができない。例えば通信販売事業を行う企業なら、商品の仕入れが滞り、経済活動を行うことができない。企業は「社会」を構成する要素であり、納税や社会貢献により、存在価値が認められる。
企業はステークホルダーとのコミュニケーションによる相互理解に支えられ、経済活動を行っている。
企業のコミュニケーション
企業が行うコミュニケーションは、情報の受信者や発信する情報により区分できる。企業としての理念をステークホルダーに明確に伝達し、企業の姿勢に対する理解を促すために、CI(Corporate Identity)に関するコミュニケーションを実施する。CI は、MI(Mind Identity:理念の統一)、BI(Behavior Identity:行動の統一)、VI(Visual Identity:視覚の統一)から形成され、シンボルマークやカラー、ロゴタイプなどの視覚的なデザインの統一のみを意味するものではない。
生活者(顧客)
「要求を捉え、需要のある商品を開発する」「ダイレクトメールを送付する」「セールスを行う」「商品の購入意思を明示してもらう」「商品を配送する」「商品購入後の意見を聞く」など、多種にわたるコミュニケーションが、企業と生活者の間には発生する。
「収益」を得ることが一つの目的となるので、「顧客」の獲得による売り上げの拡大が重要な課題となる。企業はコミュニケーションにより、単なる「生活者」から「顧客」へと育成を行い、さらに「固定客(リピーター)」になるよう、「マーケティング」などさまざまな施策を講じる。「マーケティング」では、「生活者」が商品を購入したいと感じられる仕組みづくりが目的の一つとなり、昨今では企業と「生活者」によるさまざまな体験を通じた中長期的な関係構築を実現する共創的な取り組みが注目されている。
従業員
「従業員」には、企業の活動目的や戦略の理解を促すことや、業務の指示や報告、会議などによるコミュニケーションが発生する。
コミュニケーションを通じた組織運営は、企業の成長を支える「経営(マネジメント)」により実現する。企業は従業員と目的や価値観などの共有を図るため、イントラネットや社内報により「形式知」や「暗黙知」といったKM(Knowledge Management)を含めた情報発信を行う。また、特定の目的を達成するための組織である「プロジェクト」を運営する「プロジェクトマネジメント」も含まれる。
出資者(株主)
「出資者」とのコミュニケーションは、IR(Investor Relations)と呼ばれ、企業にとって重要な活動の一つとなる。企業の財務状況や事業計画などのディスクロージャー(情報開示)により、株主の企業に対する正しい評価を醸成する。また、適切なIR により、「説明責任」を果たし、有利な資金調達を目指す。
取引先
取引先とのコミュニケーションは、企業が属する業界によりさまざまなものが存在する。SCM(Supply Chain Management)は、取引先を視野に入れたコミュニケーションの代表的なものとなる。
社会
「社会」とのコミュニケーションとして代表的なものは、PR(Public Relations)や社会貢献活動などが挙げられる。企業は社会から理解や信頼を得るため、PRによるコミュニケーションを図る。プレスリリースの発信や、記者会見などの実施がこれに当たる。企業は存立基盤である地域社会の健全な発展を支える、環境や教育、文化などの多方面にわたる貢献活動として、「コーポレートシチズンシップ」といったコミュニケーションを実施する。文化、芸術活動を支援する「メセナ」、社会的な公益活動全般を指す「フィランソロピー」などがある。
コミュニケーションの目的とメディア
企業におけるコミュニケーションの構成要素は、受信者で大別され、メディアも複数存在する。テレビや雑誌などのマスメディアによるコミュニケーションや、屋外広告やパンフレットなどのSP(Sales Promotion)メディアによるコミュニケーション、電話や手紙といったパーソナルメディアによるコミュニケーションのほか、さまざまなメディアの特性を網羅するインターネットメディアなど、企業におけるコミュニケーションでは、目的や状況に合わせ特性を踏まえたメディアによるコミュニケーションが求められる。
紙や立体物、デジタルなど、さまざまな形状やサイズ、素材のメディアが存在し、活字や画像、音声、映像などと、表現方法も複数存在する。情報の受信者となるステークホルダーとの効果的で効率的なコミュニケーションの実現には、専門領域に捉われないメディアコーディネート能力が求められる。
コーディネートにはメディアプランニングの一環として、「認知度を高めるため幅広く情報を伝達する」「興味を高めるため詳細な情報を伝達する」「求める行動を促すため特典に関する情報を伝達する」など、情報内容に合わせ、適切なメディア選択が不可欠になる。
JAGAT CS部
Jagat info 2014年6月号より転載