何人かの印刷会社の経営者の方から、このところ新卒を含めての人材確保が難しくなっているという声を聞いた。
経済成長が低調に推移する中で、当社にも今まではなかったレベルの大学から入社を希望しているという話を聞いたのはつい数年前のことだった。しかし、急速に進む少子・高齢化によって生産年齢人口が1995年をピークに減少しており、安倍政権の経済政策などもあって完全失業率は2015年には3.4%まで低下している。直近のデータでは3%(2016年7月)となっており、1995年5月以来の低水準となっている。生産年齢人口の絶対数が減る中で、就業者が増えれば、その分求職者は減るわけで、特に大企業に比較して条件等が劣ることが多い中小企業では優秀な人材の確保がますます困難になる。そういった影響が特に昨年、今年の新卒採用などで顕在化しているのだろう。
中小企業の多い印刷業において優秀な人材確保が難しくなっているといっても、それで仕方ないとするわけにはいかない。これから新しいビジネスを立ち上げるためだけでなく、既存の印刷ビジネスを継続していく上でも、いかにして若年層の人材を確保するかは重要な課題になる。実際にJAGAT印刷産業経営動向調査によると、2006年には従業員平均年齢がギリギリ30代だったが、2015年では42歳にアップしており、若手社員の割合が減っていること示している。そういう意味で、採用活動では相応のコストを掛けて求職者に対して自社をアピールすることなどが必要になるだろうし、印刷業界全体でのアピールも必要になるのもかもしれない。
さらに、そうしてコストを掛けて確保した人材をいかにして少しでも早く戦力化して、長く社業に貢献してもらえるようにするかは真剣に取り組む必要がある。例えば教育システムを整えてしっかりとしたキャリアプランを提示し、技術習得や資格取得などをサポートするなどが考えられるだろう。新人社員にしてみれば、その会社に入ったことで、どのような知識や技術を習得すれば仕事ができるのか、将来的にはどのようなキャリアを踏み、どのレベルの仕事ができるようになるのかを明確に知ることができるか、できないかでは会社に対するイメージも変わるのではないだろうか。
JAGAT info9月号では、恒例となっている JAGAT「2016年度新入社員意識調査」より、アンケート結果を紹介している。アンケートでは、「今の会社に入社を決める上で重視したこと」「仕事する目的」「入社後に伸ばしたいと思うスキル」などに加え、新入社員が抱く印刷業に対するイメージや将来へのコメントを交えて、新人社員がどのような考えや思いを持っているのかを報告する。採用担当者や教育担当者はこれからの採用活用や人材育成の参考にぜひご一読いただきたい。
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