【クロスメディアキーワード】メディアとしてのブログ

掲載日:2016年11月23日
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個人の情報発信スタイルを支えるブログは、独自のジャーナリズムを実現し、メディアとして価値が認められている。

ブログの登場

ブログが普及する以前、個人がWeb コンテンツを公開する場合には、パソコンにインストールされているテキストエディターや専用アプリケーションを使用していた。インターネット上のアプリケーションサービスとして提供されるブログの登場で、個人が容易に占有的なコンテンツ展開を行えるようになった。
情報発信が容易となることで、文章表現能力やコンテンツ制作能力に優れたブロガーが商業的なメディアと同等の情報発信を行うことが可能となり、新聞や雑誌の購読率にも影響を与えるようになっている。ポータルサイトやコミュニティーサイトを運営する法人が、メディアとして価値のあるブログを集めブログ総合サイトとして運営することにより、ブログジャーナリズムの発展を後押しした。場所を問わず情報発信が可能なリアルタイム性の高い「Twitter」に代表されるマイクロブログも登場し、生活者の情報接触時間に大きな影響を与えている。

ブログサービスの種類

ブログサービスには、ブログ専用の有料サービスのほか、独自ドメインがないポータルサイトの無料サービス、レンタルサーバーにアプリケーションをインストールして使用するものなどがある。アプリケーションサービスとして提供されるブログの利用は、システムに関する特別な知識や技術が必要ない。コンテンツ制作では、利用できるデザインや機能は限定されるが、ワープロによる文書データ作成と同様で、テンプレートに従い文章や画像を配置することで完成させることが可能であり、多くの人々に利用されている。
一方、レンタルサーバーにインストールし利用するブログは、カスタマイズによりレイアウトやデザインの変更のほか、さまざまな機能を追加できる。デザインやプログラミング、システムに関する知識が必要になる。しかしCMS(Contents Management System)で構築されたWeb サイトと遜色ないサイト構築が可能であり、企業が事業活動における情報の受発信手段として利用することが多くなっている。

ブログの機能

「トラックバック」は、ブログの代表的な機能の一つで、別のブログにリンクを設置した際に、リンク先のブログ運営者に通知を行う仕組みである。発信している情報と関係のある他のブログと、連携や交流が可能になる。また、ブログで公開されている記事に対し、閲覧者が意見や感想を入力できる「コメント機能」も代表的なものである。「コメント機能」により、ブログは双方向性のあるコミュニケーションメディアとなる。コメント入力者の名前欄に、自身のブログURL やメールアドレスの掲載が可能であり、「誘導」や「情報収集」などできるなど、コメント入力者の利点もある。
有名なブログアプリケーションには、プラグインとしてさまざまな機能がサードパーティーとなる法人や個人から提供されており、短時間かつローコストで多機能なシステムを立ち上げることができる。

マイクロブログ

「Twitter」のような文字数に制限があるマイクロブログの登場で、個人の「気付き」や「感想」「事象」などを即時的に情報発信が可能となった。また、ケータイやスマホなどのモバイル端末の普及や通信環境の充実により、場所や時間を問わずに情報の受発信を行えるようになり、マイクロブログの普及に貢献した。
高度情報化社会の生活者は、さまざまな情報への接触時間が長くなる傾向があり、情報の受発信源であるマイクロブログは、メディアとしての価値が認められている。マイクロブログからコーポレートサイトやSNS への連携や誘導が可能なことから、話題性の高い情報がマイクロブログに投稿される傾向がある。放送局や新聞社、出版社などといったマ スメディアを運営する組織が、マイクロブログのアカウントを取得し、速報性のある情報配信を行っている。

ブログの問題点

ブログの活用は、「情報発信が容易である」「更新が容易である」「SEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)対策も行える」などさまざまな利点がある一方で、いくつかの欠点もある。ブログにより記事を日々公開すると、トップページの最新記事は数件が掲載されるが、古い記事は掲載されない。したがって、閲覧者が過去の記事を読む可能性が徐々に低くなる傾向がある。過去の記事が「価値のある情報」であっても、専門的なカスタマイズを行わない限り、PV(Page View)数は伸びない。

ブログによる情報氾濫

ブログの登場により情報発信が容易になったが、「価値のある情報」が常に発信できるとは限らない。安易な情報発信は、信憑性や公平性を欠く可能性を秘めており、ブランドを傷つける恐れもある。誹謗中傷ともとれる情報発信を行ってしまったために、閲覧者の反感を高め、企業が謝罪する事例があった。また、株の取引市場に大きな影響を与え、株価が暴落する事例もある。さらに、著名人であると偽り、情報発信を行う事例も後を絶たない。
検索サイトの検索結果表示では、探している情報が見つけにくくなるといった問題も起きている。

適切な情報発信に向けて

企業が事業活動の一環でブログを活用するのであれば、自己満足的ともいえる安易な情報発信を避ける考えも必要である。コンテンツとして表現されていることが、すべてであると解釈する閲覧者を生むことも考えられ、個人や法人を問わず、意図しない「印象」をブログにより与えてしまう可能性もある。
「ブログ」で表現するコンテンツは、インターネット上にあるごく一部であり、表現する内容については、十分な検討をした上での公開が望まれる。

JAGAT CS部
Jagat info 2016年3月号より転載