【第20期与件:喫茶店チェーン】クロスメディアエキスパート 記述試験
状況設定について
あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。
X社は、商業印刷物やDVD-ROMの制作、Webサイトの構築・運用などのサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザイン専門の系列子会社があり、グループ総従業員数は100名である。
A社提案プロジェクトについて
喫茶店チェーンを展開するA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。
営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。
クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。
X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、2015年8月31日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリングについて
A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した提案を行う準備をしているとの情報が入った。
X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談ヒアリング(※面談ヒアリング報告書参照)を実施した。A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
A社面談ヒアリング報告書
概要: A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時 :2015年8月25日 10時~12時
対応者: 長瀬社長、花島広報部長
内容: 下記に記載
1.提案へ向けて
A社は喫茶店チェーンの展開を中心に外食業を営み、東京23区内とその郊外を中心に展開している。事業所は本部のほか、43店舗が運営されている。
創業当時から、「くつろぎ」に対する強いこだわりが支持され、業績は順調に推移していた。しかしながら、バブル景気の崩壊や少子高齢化、生活者の嗜好が多様化したことなどにより、業績の伸びが鈍化する時期があった。
A社はさらなる業績の向上を目指し、サービス内容の見直しや様々な取り組みを行い、顧客にさまざまなサービスを相互に利用してもらう活動を実施している。
A社の理念を共有できる地域やスタッフと連携し、「地域で愛される喫茶店」をコンセプトとした各拠点を「コミュニケーションとやすらぎの場」として位置づけ、他の喫茶店と差別化を図るアプローチ方法を検討している。A社は顧客とのコミュニケーション手法を確立し、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めており、顧客との関係性を重視したプロモーションの実現を模索している。
2.施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを管理したい
- A社の担当者は、本部経営企画室を中心に2名を予定
3.想定予算
- 印刷物作成費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額2,000万円以内を想定
4.施策の実施期間
- 10月1日に施策開始、来年3月31日までを第1フェーズとして予定している
- 年末のほか、3月および4月が繁忙期となるため、コミュニケーション施策は、業務のピークを考慮したものとしたい
5.創業について
- 喫茶店チェーン「モーマン・トキオ・グループ」を展開するA社の創業者は、現社長の父、長瀬 玉九郎である
- 名称の由来は、「ひととき(仏語:モーマン)」を「くつろいで欲しい」といった考えによる
- 東京都北区の和菓子店が「くつろぎの場」を提供するため、1958年10月に飯田橋に喫茶店を開業したのが「モーマン・トキオ・グループ」の前身である
- 喫茶店事業のチェーン展開を図るため喫茶部を独立させ有限会社Aを設立、日本橋に開店したのが第1号店となる
- 創業時は、30~60代のビジネスパーソンをターゲットとし、「都市型喫茶店」として直営によるチェーン化を図り成長した
- 古くからの顧客を中心にA社の味を求めるファンは多く、「喫茶室モーマン・トキオ」の知名度は高い
- 長瀬現社長は、大学4年時に卒業論文を制作するため、ヨーロッパに渡航している
- 約1ヵ月で「北欧」から「フランス」「イギリス」「ドイツ」などを訪れた
- ドイツに立ち寄った際、「立ち飲みのコーヒーショップ」のビジネスモデルが印象に残った
- その後アメリカに渡り、「レストランチェーン」や「大型スーパー」「ドラッグストア」など、さまざまな形態の店舗で働き、ビジネスを学んだ
6.喫茶市場について
- 原油価格高騰によるエネルギーコストの上昇や、消費増税の影響、少子高齢化による市場規模の縮小、コンビニエンスストアとの競争激化による売上減少のリスクがある
- 「フルサービス」とは、ウエイターやウエイトレスが注文を受け、商品を運んでくれる業態を指す
- 注文した商品を自分で運ぶスタイルは、「セルフサービス」と呼ぶ
- 生活者の嗜好や消費動向が多様化し、一時は街の喫茶店を駆逐した低価格の「セルフサービス」を好まない生活者も存在する
- 団塊世代が65歳のリタイア時期を迎え、郊外型の喫茶店を使用するようになった
- 60歳以上の年配層は、「ファストフード」「セルフサービス」「フルサービス」の喫茶店を上手に利用する
- 「特にオフィス街のセルフサービスは、座席間も狭く混むと相席を求められることがあり、くつろぐつもりがストレスになる。(40代の男性)」といった意見がある
- 「セルフサービスの店舗は、混雑していると手荷物をイスに置けないので、一息つきたい時には行かない。(30代の女性)」といった意見もある
- 多くの「セルフサービス」による国内大手チェーンは、コーヒーを「200円(税抜)」前後といった低価格で提供し、回転効率を重視している
- 多くの「セルフサービス」による外資チェーンは、「500円(税抜)」前後でコーヒーと空間を提供している
7.喫茶室モーマン・トキオについて
- 「喫茶室モーマン・トキオ」は、A社が展開する「フルサービス」の喫茶チェーンである
- 店舗の多くは、都内の主要な駅前や商店街の物件に出店している
- 他チェーンのコーヒーショップと比較した場合、ゆったりとした座席配置となっており、利用者からの評価が高い
- 特徴である「ロビー風喫茶室」のスタイルは、自宅では味わえない雰囲気を持つ店として、ホテルのロビーを意識しており、高価な絨毯や重厚なソファーを採用している
- 近年改装された「喫茶室モーマン・トキオ」は、「大正ロマン」を意識している
- 「都会のオアシス」として、「くつろぎの空間」を提供している
- 「喫茶室モーマン・トキオ」のブレンドコーヒーは「700円(税抜)」である
- 長瀬社長には、「高価格でも常連客は離れない」といった考えがある
- 「喫茶室モーマン・トキオ」は、多くの常連客に支えらえている
- 店内の清潔さを大切にし、高いサービスレベルの維持に力を入れている
- 「ゆっくりと話をしたい」「じっくり仕事に没頭したい」といった客層が多い
- 高度成長期に評判を呼んだ「喫茶室モーマン・トキオ」は、1980年代に入ると多くの「セールスパーソン」から「くつろぎの場」として高い支持を得た
- 「都会のオアシス」を掲げた店舗は、中高年男性客の姿が非常に多く、中には居眠りをする利用者もいた
- 当時は男性客が殆どであり、「ブレンドコーヒー」と「アメリカンコーヒー」の注文が売上の7割を占めていた
8.モーマン・トキオ・グループの変化
- 1976年、創業者の玉九郎は長瀬社長を呼び戻し、監査役として雇い入れた
- 長瀬社長はA社事業に貢献するため、店舗内の公衆電話スペースに広告コーナーを設置し、広告代理店に貸し出した
- さらに、新メニューとして800円のパフェを開発し、成果を上げた
- 「セルフサービス」の展開も考え、プロジェクトチームをつくり準備を整えた
- 売り上げの低い店舗に目を向け、ビジネスユースやパーソナルユースを対象とした「低価格セルフサービス型コーヒーショップ」としてリニューアルを行い「セルフカフェ・モーマン」を開店した結果、売り上げが4倍になった
- しかしながら、名店であった「喫茶室モーマン・トキオ」も、バブル経済期を頂点に陰りを見せはじめた
- 長瀬社長は、2003年にA社の代表取締役に就任した
- 就任時の業績は厳しく、「古い建物」と「長年勤めた従業員」「年配の顧客」で構成される店舗ばかりであった
- 鮮度を訴求するために、40近い店舗を改装し「新メニュー」も用意した
- この頃からコーヒー系の注文は、全体の売り上げの半分程度である
- 「スクラップ&ビルド」にも積極的に取り組み、新規出店、賃貸契約満了に伴う閉店などもある
- 店舗内では、顧客のモバイル端末向けに、「無線LANサービス」や「充電用電源」を開放している
- 店舗のリニューアル後は、30代の顧客も目立つようになり、客層は若返っている
- オフィス街の店舗には働く女性の姿も増え、「喫茶室モーマン・トキオ」はビジネスパーソンの憩いの場へと変わりつつある
- 低価格で商品を提供する「セルフカフェ・モーマン」は、収益性の問題と競合との競争から、店舗運営が難しくなった
- 現在、すべての店舗の周辺には、「セルフサービス」の国内チェーンおよび外資チェーンのほか、個人経営による「フルサービス」喫茶店が2~3店舗以上存在している
9.雅珈琲について
- 「雅珈琲」は、30歳前後の女性をコアターゲット層とした地域住民向け「フルサービス」の新業態であり、3店舗を展開している
- オフィス街にある新築のテナントや郊外のロードサイドに展開し、成功を収めている
- ログハウスをイメージした店舗であり、テラス席(ドッグスペース)も用意している
- 「会話」「笑顔」「感謝」が生まれる「街の喫茶店」を目指している。
- 「コーヒー教室」「チョークアート教室」「iPad教室」などのコミュニティーサークルを実施している
- 11月には「北千住」と「大森」で、新規に出店する予定である
10.販売促進について
- 大手フリーマガジン「まち」に広告の出稿をしているが、費用対効果に疑問を感じている
- 「ステマ」を嫌い、グルメサイトへの情報掲載は行っていない
- 店舗近隣では、メニューを掲載したチラシのポスティングを行っている
- コーポレートサイトには、会社案内のほか、各ブランドの紹介とメニューを掲載している
- 「北千住」と「大森」への出店に合わせ、キャンペーンを検討している
11.今後の方針について
- A社の持つ本来の価値観「くつろぎ」を再認識し、利用者の期待に応えるべく、顧客視点による店舗づくりと、高収益の事業形態を目指し、「セルフカフェ・モーマン」は縮小する
- 「フルサービス」にこだわり、「雅珈琲」の店舗数拡大と「喫茶室モーマン・トキオ」の成長を目指し、経営資源の喫茶事業へ対する集中を行う
- 顧客満足度の向上のため、「おもてなし」の充実をはかる
- 「雅珈琲」は「30歳前後の女性を中心とした地域住民」、「喫茶室モーマン・トキオ」は「ビジネスユース」をターゲットとする
- 対象とする顧客ごとに「ブランド」を訴求し、その属性に会った「店舗」と「商品」を提案することで、顧客との長期的な関係づくりを行う
- 2020年に実施される東京オリンピックまでに、外国人対応の準備をすすめる
以上
A社の概要
法人名:株式会社A
設立:昭和40(1965)年
従業員:50名(300名:平均臨時雇用者数)
資本金:192百万円
収入:1,400百万円(2015年3月期)
所在地:東京都北区
役員:代表取締役 長瀬 翼 専務取締役 長瀬 駆 常務取締役 吉高 怜
事業: 喫茶店事業運営、土産品の卸および小売
店舗数:喫茶室モーマン・トキオ(35店)、セルフカフェ・モーマン(5店)、雅珈琲(3店)
企業沿革
1956年 有限会社A設立
1980年 株式会社Aに組織変更
1984年 喫茶室モーマン・トキオ40店舗達成
1999年 セルフカフェ・モーマンを開店
2003年 長瀬 翼が代表取締役に就任
2004年 雅珈琲を開店
経営理念
ホスピタリティーを通し、お客様に「くつろぎ」から「やすらぎ」を感じていただくことで、社会に貢献する。
社長プロフィール
長瀬 翼(ながせ つばさ)
昭和52年にSN大学経営学部を卒業
昭和57年、有限会社A入社。平成15年、代表取締役就任
「モーマン・トキオ・グループ」における多角化事業を推進。モットーは「努力は裏切らない」。趣味は、自転車、ジョギング、旅行
A社損益計算書(2013年度、2014年度)
2013年度 | 2014年度 | |
売上高 | 1,700,000 | 1,800,000 |
売上原価 | 215,000 | 235,000 |
売上総利益 | 1,485,000 | 1,565,000 |
販売費・一般管理費 | 1,275,000 | 1,280,000 |
営業利益 | 210,000 | 285,000 |
営業外収入 | 25,000 | 20,000 |
営業外費用 | 12,000 | 8,000 |
経常利益 | 223,000 | 297,000 |
設問
問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を3つ記述しなさい。
・課題1:
・課題2:
・課題3:
問2 問1の課題解決に向け、A社へ提出する提案書に記載する施策について記述しなさい。
・施策の想定ターゲット顧客
・コンテンツやコミュニケーション施策
・施策で使用するメディアと選定理由
問3 A社へ提出する提案書のタイトル、提案の主旨(特徴)を記述しなさい。
・提案書のタイトル
・提案の主旨(特徴)
問4 A社へ提出する提案書をクロスメディアエキスパートとして記述しなさい。【記述形式:A4・横書き・3枚】