page2017カンファレンス「価値をつくる自動化」スピーカーの(株)グーフ岡本幸憲氏からのワークフロー解説
page2017カンファレンス「価値をつくる自動化」セッションでは、事前に概要を公開していきます。予備知識として知っていただくことで、セッション内容の理解を深め、当日の議論をより有意義なものにしたいと思います。
スピーカーの株式会社グーフの岡本氏から前回の提言に引き続き、同社が構築する自動化されたワークフローについて解説します。
ワークフローの構築で重視しているのは、お客様側のシステムとのダイナミックな連携である。お客様の求めるタイミング、まさにオンデマンドで印刷物が作成できることがマーケティング施策の効果を高め付加価値を生む。そのために求められるのが自動化である。
図は当社のPC OneFlowのワークフローを示したものである。
フロントエンドではAPIを公開しており、さまざまな形態でデータを受け取ることができる。入稿したPDFに対してまずプリフライトとノーマライズの処理を行う。その後、注文情報(納期、数量、納品場所)をマッピングし、その情報をもとにフィルタリングをする。フィルタリングとは、まず「このジョブはどこに納品されていつ出荷しなければいけないのか」といった条件でジョブを振り分け、次に「このジョブはどのような仕様で、どんな文字コードを使うのか、どのプリンターが優先的に指定されているのか」といった情報をもとに振り分ける。
こうして振り分けられたジョブをグループ化して最適なロットに束ねる。グルーピングにはRIPの処理速度も考慮される。グループ化されたジョブが自動面付けされ、面付けPDFがJDFとともにデジタル印刷機に送られる。
SLAによってサービス品質を保証する場合、自動化は非常に大きな要素となる。なぜならパーソナライズを活用した販促を行う場合、個人情報を取り扱うケースが大半である。精度の高いトラッキングとトレーサビリティの確保が求められる。すると人間が一切介在しない、あるいはごく限定した範囲(バーコード読み取りなど)のみで介在するようにワークフローを組み立てたい。
HP社はこれから投入するデジタル印刷機には、すべてカメラを搭載し印刷紙面を全数撮影するという。トレーサビリティの確保には非常に有効であり、SLAの観点で優位に働く。結果としてそのデジタル印刷機が選ばれることになる。デジタル印刷機の評価においては、色再現の品質、生産性(印刷速度)、対応用紙の多様性という要素は当然大事であるが、印刷枚数がメガロットの仕事がどんどん動くようになって、デジタル印刷業界を活性化させるのであれば、自動化、SLA、トラッキングとトレーサビリティという要素が極めて重要となる。なおかつ、その印刷ワークフローが顧客側の外部のシステムとなんらかの形でデータ連携することが求められる。
このようなトラッキングとトレーサビリティと自動化を実現するワークフローシステムを自社開発するかというと、それはあまり望ましいことではない。なるべく専用システムは作りたくない。オープン性を確保してフレキシブルでスケーラブルなシステムを構築したい。お客様が採用しているフロントのツール(例:デジタルマーケティングやマーケティングオートメーション)によって接続するときのシステム仕様や設計が変わるが、可能な限りモジュールとモジュールの連携、いわゆるレゴブロックを組み立てるようなAPI連携によって全体のシステムを構築したい。こうして陸上のリレーのようにシステムからシステムへ情報をバトンリレーで伝えることができれば、お客様のビジネスの変化にも耐えられるし、スケールアップにも対応できるし、SLAを担保しやすくなる。
我々は、現在は月間100万枚の生産であったとしても、利用価値(KPI)を高めることによって将来的に月間1億枚を生産できるようになろうと真剣に考えている。未来のあるべき姿から逆算して考えると「オープン性」や「標準化」というのは欠かせない要素となる。
pageカンファレンス「価値をつくる自動化」を深く理解するための予備知識
その1 PODの功罪-デジタル印刷で儲けるために
その2 多版メガロットという発想
その3 お客様とつながる自動化