統計データから何を読み取るか、どのように利用するかは受け手の判断によるもので、目的に応じて自由に利用してほしい。(数字で読み解く印刷産業2017その3)
統計もガラパゴスだった
ビッグデータの時代となり、データ量が急速に増えていく中で、客観的なデータに基づいて判断する必要性が高まっています。つまり、Evidence basedでなければ判断基準となり得ないというわけです。
4月14日に首相官邸で行われた統計改革推進会議の中間報告では、証拠に基づく政策立案(Evidence based policy making)を推進するために、GDP統計を軸とした経済統計の改善が決定されました。
GDPは産業連関表を使って計算されています。
産業連関表とは、国内で1年間に行われたすべての生産活動と取引を対象にして作成する加工統計です。まず産業別の国内生産額を確定し、その内訳として投入額(原材料等の購入額)や産出額(各産業への販売額)を推計しています。
GDPは各産業の付加価値の総和になりますが、現在は産業連関表を作成した後に、産業ごとにまとめた供給・使用表(Supply and Use Table、SUT)を間接的に作成し、GDPを推計しています。
今回の見直しでは、産業ごとの生産額や投入額からSUTを直接推計することで、経済実態をより的確に把握することができるとしています。日本以外の主要7カ国は見直しを終えていて、「統計もガラパゴスだった」ということになりかねません。
今年度から生産物分類・産業分類の整備に着手し、経済センサス・投入調査の拡充・改善を5年ごとの基準年に実施し、基準年GDPの精度向上を実現し、年次GDPの精度向上、四半期GDP速報の精度向上へつなげ、2030年度を目標に14年かけた大改革となります。
継続性と変化への対応力が求められる統計データ
統計データは継続性と同時に、経済実態を反映した修正が必要になります。分類基準となる「日本標準産業分類」は1949年10月に制定され、新産業や既存産業の状況変化などを反映した改定を繰り返し、現在は第13回改定(平成25年10月改定)版となっています。
印刷産業に関しての大きな改定は下表のようになります。
第13回改定では項目の変更はありませんが、製版業の事例として掲載されている「デジタル製版業」が「デジタル製版業(CTP方式)」に修正されています。
ちなみに工業統計調査では平成26年調査から第13回改定に対応していますが、産業連関表では2019年初夏に公表予定の「平成27年産業連関表」からとなります。
統計調査は大規模なものほど公表までに時間がかかり、その間にも経済環境や産業構造の変化が進む中で、統計データの有用性を高めることが求められています。今回の見直しでもユーザーの視点に立った統計システムの再構築と利活用促進を挙げています。
JAGAT刊『印刷白書』では産業連関表や工業統計などの統計データを図表化する際に、できるだけバイアスのかからない形で加工して提供しています。そこから何を読み取るか、どのように利用するかは受け手の判断によるもので、目的に応じて自由に利用していただきたいからです。
現在『印刷白書2017』の執筆準備を進めていますが、限られた誌面で伝えきれないことや、読者からの問い合わせなどに対しては、「数字で読み解く印刷産業」でも発信していきます。
(JAGAT 吉村マチ子)