~日印産連デジタルプレス推進協議会「印刷業界におけるデジタル印刷に関するアンケート調査」報告書より
日本印刷産業連合会では、国内の印刷産業における生産機としてのデジタル印刷機の活用状況を把握し、活用度をさらに高めるための調査活動を年1回のアンケート調査という形で2010年から実施している。
2016年度は傘下の9団体とJAGAT会員から抽出した699社に調査用紙を郵送し、200社から回答を得た(回答率28.6%)。以下はその要約である。
デジタル印刷機の1社平均保有台数は3.86台
デジタル印刷の方式別の保有台数、稼働状況、収益性を表1に示す。保有台数の合計は598台、保有社数は155社、1社平均は3.86台であった。方式別の内訳は、トナー粉体(カラー)が206台、同(モノクロ)が123台、大判インクジェット(カラー)が166台で、これらの3方式で全体の8割強を占めている。
表1. デジタル印刷機の保有台数、稼働状況、収益性
保有台数が5台以上の回答企業は38社(回答企業の19%)、最多保有台数は30台で、その内訳は、粉体トナー(カラー)5台、粉体トナー(モノクロ)15台、枚葉インクジェット(カラー)7台、連帳インクジェット(カラー)3台であった。
保有台数が1台の回答企業は29社(14.5%)、2~4台の回答企業が88社(44%)であり、5台未満の企業で全体の6割近くを占めている。
図1.デジタル印刷機の保有台数分布
デジタル印刷の全売上に占める割合の平均は9.7%
売上構成を「1.従来印刷(オフセット/グラビアなど)関連(DTP制作や製本・後加工含む)」「2.デジタル印刷関連(DTP制作や製本・後加工含む)」「3.デジタルコンテンツ制作(印刷はしない)」「4.その他付帯サービス」の4種類に分類し、それぞれの構成比を問うた。
回答企業の全体の売上に占めるデジタル印刷の割合の平均は9.7%であった。5%以下という企業が過半数を占め、まだまだ従来印刷の補完という位置づけから抜け出ていないと言えるが、全体売上の5割強という企業も3社(2%)あり、活用度にはばらつきがある。
図2.デジタル印刷の売上構成比の分布
大ロットデジタルの進展も
デジタル印刷機の進化がすすみ、高速化、高品質化のみならず対応品目の多様化も進んでいる。薄紙、厚紙対応、あるいはシールや軟包装、クリアファイルなど多種多様な素材、品目に対応しつつある。それに呼応する形でユーザーの活用の仕方も多種多様となっている。例えばデジタル印刷の売上上位一位の品目における、受注一件あたりの平均ロットの問いでは、最小値は平均ロットが1枚という回答で、最大値は平均ロットが47万3千枚という回答であった。「デジタル印刷=小ロット多品種」という方程式が必ずしもあてはまらなくなっているし、平均値が必ずしも平均的なユーザー像を表さなくなっている。
図3. 平均ロットの分布
データプリントの平均ロットは8万枚超
受注品目別に平均ロット、受注金額、枚単価をみる。表2は回答数が多い順に並べている。回答数が多くないので、このデータだけで結論づけることはできないが、平均ロットが大きいのは、「データプリント」が断トツで8万枚を超えている。次いで「DM」が1万1千枚強、カタログが7千枚弱となっている。
平均枚単価では「大判出力」が断トツで8万円弱、次いで「色校正」700円、「事務用印刷」が410円となっている。なお、便宜上枚単価としているが、受注金額には編集や製本加工、大判出力のパネル加工などの費用も含まれる。
表2.受注品目別平均ロット、平均受注金額、平均枚単価
成長率が高い品目はデータプリント、事務用印刷、大判出力
最近、受注が拡大傾向にある“成長率”が高い受注品目の上位3位を問うている。
最多回答は「データプリント」、2位は「事務用印刷」、3位は「大判出力」となっている。
デジタル印刷機の生産性、品質の向上とバリアブル印刷の用途拡大が「データプリント」の成長に寄与しているようだ。
表3.成長率の高い受注品目
(研究調査部 花房 賢)