ブランディングで売れる仕組みをつくる

掲載日:2017年6月6日

印刷会社がクライアントのビジネスをサポートする際に、マーケティングとデザインが重要になる。

5月24日、JAGATのセミナールームで、ブランディング・販促コンサルタントの小澤歩氏(有限会社グレイズ)を講師に招いて2本のセミナーを開催したので報告する

ブランド戦略から参画することが必要
「ブランド価値をつくり表現するデザイン習得の基礎」、「紙媒体の成果アップ・SNSとの組み合わせでつくる売れる仕組み構築」の各セミナーが各3時間にわたって行われた。小澤講師は6時間にわたるセミナー中、一度も着席せずに熱弁し、参加者もワークショップなどを通じてメソッドを習得していた。
2つのセミナーに共通して小澤氏が強調していたことは、顧客は印刷物を欲しているのではなく、使用することで得られる成果を求めているということだ。それは経営戦略に関わることであり、決して印刷物のデザインさえ見栄えがよければいいということではない。小澤講師はIDEOのティム・ブラウンの言葉「デザインはデザイナーに任せておくには重要すぎる」を引用し、印刷会社は顧客の経営戦略・マーケティング戦略・ブランド戦略からコミットしなければ印刷物のデザインは行えないとした。
小澤講師はここで、①環境分析②セグメンテーション③ターゲティング④ポジショニング――という4つの手順を示した。ターゲティングではターゲットとする人物像「ペルソナ」を具体的に想定する方法を紹介し、ポジショニングでは連想マップ、ポジショニングマップといったツールを用いて自社のブランドをポジショニングし、デザインにどう落とし込むのかを解説した。

「売る」から「売れる」へ
もう一点、強調していたことは、売れる「仕組み」を考えるということだ。小澤講師は「売れる」の反対語は「売る」であり、単に売り込むのではなく、自然と売れる「売れる仕組みづくり」が大事だとした。消費者の段階には①未認知(ブランドを認知していない)②(購買が見込まれる)見込客③一般客④リピート客とそれぞれあり、それぞれ伝えるべきこと、適した媒体は異なる。例えばSNSでも未認知の消費者に対しては拡散するフローメディア(フェイスブックやツイッターなど)が向いていることもあれば、見込み客にはストックメディア(ブログなど)を用意し、検索してもらうのが効果的なこともある。
そういった購買までのプロセスで最適なアプローチを行うことが「売れる仕組みづくり」なのである。

ピーター・ドラッカーは「マーケティングの目的は、販売を不必要にすることである」と述べた。マーケティングの定義についてはさまざまな異論があるが、営業パーソンがハードに売りつけることをなくし、自然と売れる仕組みを構築することが重要になってきているのは確かである。顧客が欲した時にブランドを想起し、印刷物やSNSを使って見込み客を育て、購買につなげる。そのための手段が印刷物であり、SNSであるということだ。

<関連講座>
ブランド価値をつくり表現するデザイン習得の基礎
 開催日:7月26日(水)10:00~13:00

紙媒体の成果アップ SNSとの組み合わせでつくる売れる仕組構築
 開催日:7月26日(水)14:30~17:30

( CS部 塚本直樹)