2015年の印刷産業出荷額は9月公表予定

掲載日:2017年6月30日

全産業・全事業所を対象とする「平成28年経済センサス‐活動調査」の速報が、5月31日に公表された。さらに、9月には工業統計の概要版に該当する集計結果が公表される。(数字で読み解く印刷産業2017その6)

 全国”の総事業所数と全産業”の事業所数が異なるのはなぜ?

JAGAT刊『印刷白書』では、印刷産業の動向把握に必要な公表データを網羅・掲載しています。印刷市場を把握する上で最も重要な統計データが工業統計になります。工業統計と経済センサスの関係については、「工業統計と経済センサスはどう違うの?」でも紹介しましたが、今回は経済センサスを読む上での留意点と、今後公表される確報集計結果を紹介します。

全産業を対象とする「経済センサス‐活動調査」では、休業中や廃業していないことが判明した事業所が調査対象となり、2015年6月1日現在の“全国”の総事業所数は562万2238事業所(前回調査の2012年2月1日現在と比べると6.3%の減少)となりました。

ただし、回答に不備等があった事業所については、「事業内容等不詳の事業所」として、産業分類別など属性別結果の集計対象から外されます。そのため、産業大分類ごとの数を合計した“全産業”の事業所数(=総事業所数-事業内容等不詳の事業所)は535万9975事業所で、総事業所数に対する割合は95.3%になっています。

例えば、都道府県別の事業所数は総事業所数で集計されていますが、産業分類別事業所数の全産業には「事業内容等不詳の事業所」は含まれません。つまり、有効回答の事業所が集計対象となっていることに注意が必要です。

実施時期の変更が公表時期にも大きく影響

速報では産業大分類別に、企業数、事業所数、従業者数、売上高などが集計され、印刷産業は大分類の「E製造業」に含まれています。さらに、この9月には工業統計の概要版に該当する「平成28年経済センサス‐活動調査 製造業(概要)」が公表される予定です。

「工業統計調査」は毎年12月31日時点で実施されてきましたが、5年に1回の経済センサスの年にはお休みとなります。そのため、2015年末の 「平成27年工業統計調査」は実施されず、「平成28年経済センサス‐活動調査」が工業統計調査の調査範囲に合わせて集計されます。現時点での最新データは「平成26年工業統計調査」による2014年の数字となり、2015年の数字は9月公表予定の概要版によって初めて把握されます。

これまで工業統計は調査年の翌年9月に速報値が公表され、翌々年3月(15カ月後)に確報値として、産業編・品目編などが公表されてきました。しかし、実施時期が半年後ろにずれた今回の確報値は、調査時期から18カ月後の本年12月公表予定となりました。

JAGATが毎年10月に発行している『印刷白書』では、毎年3月公表の確報値を最新データとして利用してきましたが、今回は12月の確報値を待つわけにもいかないので、9月公表の概要版を利用することになります。

工業統計の概要版では、従業者4人以上の事業所に関する統計表が公表されます。印刷白書では全事業所のデータを利用してきましたが、今回は4人以上に限られます。産業中分類「15印刷・同関連業」の数値はわかりますが、その内訳になる細分類まではわかりません。また、それぞれの事業所の製造品・加工品を品目別に集計した「品目編」から、産出事業所数などを見てきましたが、こちらも今回は利用できません。

『印刷白書2017』の最新データが2015年というと、データが古いように思えるかもしれません。大規模調査における公表時期の遅れは大きなデメリットですが、経済センサスは全産業を対象に同一時点で網羅的に把握することを目的とする統計調査で、データの信頼性を高めるためには仕方ない面もあります。また、産業の変化に対応して分類基準や調査項目などを変更する必要が生じますが、それによって時系列データが不連続となる場合もあります。そのような点にも注意して前年比などを確認する必要があります。

売上高の増加率は20.1%ではなく14.3%程度

今回公表された2015年の全産業の売上高は1603兆円で、前回調査の2011年(1336兆円)に比べ20.1%と大きく増加しています。しかし、この増加には消費税に関連した変化があります。

売上高は消費税を含む「税込金額」での回答が原則ですが、経理処理上、税込みで記入できない場合は、「税抜金額」での記入が可能です。そのため、2011年の集計値は「税込金額」と「税抜金額」が混在していました。2015年の集計値では「税抜金額」で回答された値を「税込金額」に補正して、「税込金額」に統一して公表しています。

なお、2011年の売上高を「税込金額」に統一した場合、29兆円がプラスされます。また、この間に消費税率が5%から8%に変更された分を加算すると39兆円となります。そこで実際の増加率は14.3%程度と推測されます。

工業統計の調査日は、最新の「平成29年工業統計調査」から6月1日に変更になり、消費税の記入を税込みまたは税抜きかを選択できるようになりました。経済センサスとの整合性が図られたことで、これまで以上に時系列比較が容易になることが期待されます。

現在『印刷白書2017』の執筆準備を進めていますが、限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。

印刷白書で扱う大きな統計データとして、前回前々回は産業連関表、今回は経済センサスを取り上げましたが、次回は貿易統計から印刷物・出版物の輸出入について報告したいと思います。

(JAGAT 吉村マチ子)