「染・文字・かたち・伊藤紘展」

掲載日:2018年2月14日

「日本の文字とかたち」をテーマとした型染版画作品は、JAGAT機関誌『JAGATinfo』の表紙を13年間飾った。

『JAGAT50周年記念誌』ではJAGATらしさが出るように工夫を凝らしましたが、なかでも印刷白書と二分冊にすることによって、客観的な印刷白書と主観的な記念誌の両方を読むことでより理解を深めるように編集しています。
①白書が足元を見つめて未来へ/記念誌が過去・現在を中心に未来へ向けて
②白書が文字(文章)と数字(統計)中心/記念誌はビジュアルを混ぜた読み物
③白書が社会や産業全体の中での印刷業/記念誌はJAGAT事業から捉えた印刷の50年

記念誌のビジュアル部分となる「JAGATギャラリー」では、今日のJAGATにつながる建物から各種事業、刊行物などを多数の写真で紹介しています。
なかでも、JAGAT機関誌の表紙写真は見開きで紹介していますが、最も長く表紙を飾ったのが型染版画家の伊藤紘氏の作品です。

JAGAT機関誌『プリンティング・インフォメーション』(現在のJAGATinfo)の1996年2月号の表紙「藁」が最初の作品で、漢字1文字にその意味に合わせた絵柄を組み込んだ「一文字シリーズ」は、日本の文字とかたちを追求してきた伊藤氏ならではの作品で、表紙としてもインパクトのあるものになりました。

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型染版画は手作業のもつ素朴さと暖かみが、デジタル時代にあっても高い評価を得ています。 グラフィックデザイナーとして出発した伊藤氏は、1980年代より「日本の文字とかたち」をテーマとした型染版画に挑戦し、次々と素晴らしい作品を生み出してきました。

JAGAT機関誌の表紙では、1996年2月号から2008年12月号まで様々な型染版画作品を提供してくれました。草花、民具、仏像など、作品のテーマは非常に幅広く、季節に合わせたどんな作品が表紙を飾るか心待ちにする読者も少なくありませんでした。

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和紙に絵の具を刷り込んで染めていく型染版画の風合いは印刷物では再現できないもので、1989年に初めて型染版画の個展を開いて、想像以上の反響に自分でも驚いたと伊藤氏は振り返っています。
2014年の日本橋三越本店での「伊藤紘版画展」以降は海外展への出品が続きましたが、今回11年振りの鎌倉展が開催されることになりました。

作品集『てわざ文字』(2017年9月刊)には、「一般的な花鳥風月ではない、現代の感覚を入れた作品と、豊かな表現を持つ文字たちを型染世界で活かしたい、遊ばせたいとの思いだけの幾歳月。幸いにも多くの理解者、同好者、賛同者たちを得て、制作を続けられることを有難く思います」と作品に賭ける思いが記されています。

(JAGAT 吉村マチ子)

『JAGAT Info』過去表紙ギャラリー

「染・文字・かたち・伊藤紘展」
2018年3月3日(土)~11日(日)12時~18時(最終日は16時まで)
今回は版画の他に布もの(暖簾・タペストリー)も出品。著書進呈やプレゼント、会場の都合で型彫り体験ができるかも。
■会場:Gallery ジ・アース
 〒248-0005 鎌倉市雪の下1-6-22
 TEL&FAX 0467-25-5235

作品集『てわざ文字』
 2017年9月刊、A4判100ページ、オールカラー定価5000円(税・送料込)
 伊藤制作室 〒239-0815 横須賀市浦上台2-36-10
 TEL&FAX 046-842-7194