青山学院大学で「紙メディアと電子メディア」講座を開催

掲載日:2014年11月20日

JAGATは、11月13日(木)、青山学院大学で「紙メディアと電子メディア」と題した講義を行った。印刷ビジネスとクロスメディアの調査研究を通して蓄積した知見をベースに講義を編成した。

●紙メディアを知って電子メディアと比較する
「紙、その文化とビジネスを考える」講座は、日本洋紙板紙卸商業組合による青山学院大学への寄附講座として開講、JAGATは公益性の観点から協力、全15回の第8回講義を担当した。紙産業の現状、動向、将来への課題認識と、紙産業を構成する各プレイヤーの経営手法や戦略に関する理解を深めることを目的とする。日本の紙産業は世界的な競争力を持つ産業であるだけでなく、古くは和紙など日本人の心と切っても切れない伝統文化的な側面も持つが、これらの知識と効用は残念ながら広く知られているとはいえない。

●インターネット世代に紙メディアをどう伝えるか
そこで、JAGATが担当した第8回講義は、印刷産業の日本経済における位置づけ、印刷メディアの特性、印刷会社の地域における役割(地域活性・フリーペーパー発行事例等)、各種研究結果の紹介などを通じて、紙メディアと電子メディアの客観的な比較とそれぞれの特性について講義した。近年の学生はインターネットの登場以後に誕生していることが多く、電子メディアへの理解は既に一定程度ある。学習の重点は電子メディアより紙メディアに置いたアプローチの方が、新鮮さがあり、より対比を鮮明にできて理解が深まるように思われる。

●紙と電子、特性を体系的に知って使い分ける必要性の高まり
これまで、紙と電子の使い分けは自然に身につけるものとされてきた。しかし、客観的な比較を経て体系化された知識を学ぶ必要性が増している。パソコンの誕生、インターネットの普及を経て、来ると言われたユビキタス時代は既に過ぎつつあって、モバイルコンピューティングはごく当たり前のものになった。この間、パソコン、ケータイ、タブレットPC、スマートフォン、電子書籍端末など多彩なデバイスが実用化した。

●受発信者双方にとってより豊かなコミュニケーションのために
 これからウェアラブル時代の本格化を迎えるだろう。また、eメールとブログ、LINE、Twitter、Facebookなどコミュニケーションチャネルも多様化した。誰かに何かを伝えたい時、どうすればコミュニケーション効果を最大化させられるのだろうか。相手があってコミュニケーションが成立する以上、発信者が受信者の立場に立って、紙メディアと電子メディア、幅広い選択肢のなかから受信者に最適なコミュニケーション方法を状況に応じて選ぶことが、受発信者双方に豊かなコミュニケーションをもたらす。 

●状況を解決するための総合的な費用対効果でメディアを選ぶ
救急車を呼ぶ時にeメールを使う人、あるいは消防署に走って行く人はいない。なぜだろうか。救急車を呼ぶ時に私たちが電話を選ぶのは、コストよりスピードが優先されること、そして即時の受信確認を必要とすることからである。一般に電話のコストはeメールのコストを上回るが、救急車を電話で呼べば結果的に費用対効果は最大化することを、私たちは経験的・本能的に知っていて、無意識に電話を選んでいる。よく知っているメディアと優先順位が明らかな状況では、慌てていても判断を間違えることはない。

●メディアを幅広く知って、メッセージを最も適切に伝える
しかしメディアは多様化し、状況も複雑化することが多く、電話すべきところをeメールして相手に少々の不快感を与えるような類の小さなミスは身の回りで起き続け、このわずかな違いの蓄積が企業の業績や人生の豊かさをより左右するようになってきた。これから技術の進歩に伴い選択肢が広がって便利になればなるほど、選択は難しくなるだろう。先述した、紙メディアと電子メディア、客観的な比較を経て体系化された知識を学ぶ必要性が増しているとは、このことを言っている。

今回の講座では、会員企業から募集したフリーペーパーを印刷会社の取り組みの一環として学生に紹介した。短期間の募集にも関わらず協力してくれた会員企業の皆様、担当教員の小野譲司教授、日本洋紙板紙卸商業組合の各位に御礼を申し上げたい。

(研究調査部 藤井建人)

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