5月も半ばを過ぎたが、この時期の心地良い晴天のことを「爽やかな五月晴れ」と表現している方を時折見掛ける。だが、「五月晴れ」という言葉の本来の意味は“梅雨の晴れ間”である。つまり、この「五月」とは旧暦の5月のことであり、現在の暦に読み替えると6月に相当する。松尾芭蕉の有名な一句「五月雨を集めて早し最上川」に出てくる「五月雨」も同様で、これは梅雨の長雨のことを指している。ちなみに、芭蕉が「おくのほそ道」に旅立ったのは1689年5月16日(旧暦だと3月27日)のことであった。
俳句の話でもう一つ触れておくと、俳句には季語を盛り込むことが一般的である。では、「爽やか」はいつの季語なのかというと、秋である。従って、「爽やかな五月晴れ」というのは二重の意味で間違っているという解釈も成り立ち得る(参考リンク(1)/参考リンク(2))。
ところが、本来は誤用であっても、多くの人がその意味で使用するようになると、いつの間にかその意味も持ち合わせるようになってしまうのが言葉の面白いところである。例えば「姑息」「役不足」「情けは人の為ならず」などの言葉は、本来の意味とは別の意味で用いている人が一定数いることが各種調査において判明している。しかし、その“誤った”言葉遣いでも会話が広く成立するようになると、その用法が“間違い”だとは言えなくなり、辞書の改訂時に新たな意味として加えられることもある(例:「確信犯」「敷居が高い」)。そのため、冒頭で述べた「爽やかな五月晴れ」という表現も、現在においてはあながち“間違い”とは言えないのである。
言葉一つとっても、このように少しずつ変容している。価値観も、ビジネスもそうであろう。日々のアップデートを怠らないようにしていきたい。そして、折に触れて辞書を引く習慣も身に付けよう。自分の持つ知識が正しいのかを確認し、さらなる知見を得るためにも。
『JAGAT info』2024年5月号のご案内
◯特集
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キャラクタービジネスと印刷業の可能性
巨大な市場が形成されているゲームやアニメなどの産業において、キャラクタービジネスが現在脚光を浴びている。1兆5000億円を超えるキャラクター商品の市場では、さまざまなコンテンツやグッズの製造などを通じて印刷業とも密接な関わりがある。また、ゲームやアニメだけに限らず、例えば企業や地域などのコンテンツを制作する際にもキャラクターは主役の地位を占めている。
特集では、page2024オンラインセミナー【S4】「キャラクタービジネスと印刷業の可能性」の講演要旨を収録する。キャラクターライセンスに関して専門的見地から解説が行われたほか、事例研究として、実際に手掛けている会社からも説明が行われた。これらの講演をもとに、ビジネスチャンスのヒントを探りたい。
◯特別企画
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生成AIと印刷・デザインの未来
近い将来、文章やグラフィック、音声・音楽、プログラム・コードの生成などさまざまな分野において、生成AIの活用が予想されている。
大日本印刷(DNP)ではグループ社員3万人が生成AIに触れる環境を整備しており、日常業務における活用方法やアイデアなどをボトムアップで模索・共有している。そして、生成AIの可能性を体験して意見交換を行い、新たな価値を生み出すための活動拠点「DNP生成AIラボ・東京」を開設した。
特別企画では、page2024オンラインカンファレンス【C6】「生成AIと印刷・デザインの未来」の中から、講演を抜粋して収録する。高度なコンテンツ生成を実現する生成AIをどのように活用していけばよいのか、講演を通じて考える。
(『JAGAT info』編集部)
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