印刷会社の営業活動は多岐に渡っている。営業担当者は技術革新が進むこの時代に、受注管理だけに留まらず新規顧客の開拓、既存顧客のフォローアップ、課題解決に向けた提案営業などで売上目標の達成と顧客満足を追求している。しかし多くの印刷会社では営業教育が不十分で、社員の属人的な能力に依存している現状がある。
強い営業組織とは
このような状況では、営業成績が特定の個人によって大きく左右され、組織全体の力を最大限に発揮することが難しい。強い営業組織はスーパー営業パーソンが多く集まったチームではない。マネージャーの指揮のもと、全員が力を合わせて全体の目標達成のために動けるチームが本当に強い営業組織だ。そのためには個々の社員の力量に依存した「個人営業」から、営業マネジメントの技術を使いチーム一丸となって目標達成を目指す「チーム営業」にシフトすることが必要となる。
チーム営業マネジメント
500社を超える営業チームを指導した実績を持つ、庄司充氏 (セールス・プロワン代表)は次のように解説している。「チーム営業」に大切なことはマネージャーがセオリーを理解し、実践することだ。このセオリーを知らずに営業活動を行うことは、定石を知らずに囲碁や将棋を指すことと同じで、無駄が多いばかりか、常勝チームを作ることは絶対にできない。このセオリーを「チーム営業マネジメント」と呼び、具体的には以下の取り組みが挙げられる。
①ミッションとビジョンの共有
まず自社の存在意義と目標を明確に言語化して全社員と共有し、仕事を高い視点で捉えることが重要だ。言葉の力を軽く見てはいけない。これにより、社員のモチベーションが上がり、パフォーマンスは格段に向上する。
②標準化とプロセスの明文化
目標達成のための具体的な戦略を策定し、各業務の手順やフローを標準化して、誰が担当しても同じ品質で業務を遂行できるようにする。そのために営業の成功パターンを標準化したプロセスを文書化し、オリジナルテキストを作成して全員が参照できるようにしなければならない。
③知識共有の促進
社内の知識やノウハウを共有するためのシステムを導入し、進捗状況を一元管理も必要だ。定期的にミーティングを開催し、成功事例や問題点、失敗の原因をチーム全体で共有する。このミーティングは単なる報告会であってはならない。フィードバックを織り込んだ作戦会議であるべきだ。
1on1ミーティング
ここで忘れてはいけないことがある。営業は精神的なストレスが大きい職種だ。営業活動は孤独感やプレッシャーを伴い、モチベーションの低下や燃え尽き症候群のリスクも高まる。そこで取り入れたい手法が、部下の育成やモチベーション向上のための上司と部下による1対1の定期的な面談「1on1ミーティング」だ。
TOPPAN株式会社で長年マネージャー職についている泉谷史郎氏によると、「1on1ミーティング」とは上司からの一方的な指示や指導ではなく、双方対話型のコミュニケーションで、業務や職場でのストレスを軽減し、部下に精神的なサポートを提供できる。そうすると部下は自分の意見を自由に表現し、チーム全体の創造性と効率が向上する。
印刷会社におけるチーム営業マネジメントは、組織全体の営業力を強化し、属人性に依存しない安定した営業活動を実現するための重要な手法だ。ビジョンの共有、明確な目標設定、成功パターンの標準化・明文化、定例ミーティング、コミュニケーションの強化など、さまざまな要素を組み合わせて実践することが求められる。これによりチーム全体が一丸となって高い成果を上げることが可能となる。
チーム営業マネジメントを習得する
JAGATではチーム営業マネジメントを習得するための「印刷営業マネージャー養成講座2024」を9月より開講する。本講座は先に挙げた庄司氏が「チーム営業」にシフトするための体制づくりと運用の技術を解説するほか、泉谷氏より部下の本音を引き出すコミュニケーション法を伝授。またコンプライアンス、財務管理情報など営業マネージャーに必須となる知識や、組織力強化のための具体的な手法を、演習も交えて実践的に学ぶ。営業管理職としての豊富な経験を持った講師陣や他受講者とのディスカッションを通じて、新しい気づきを得られる対話型の講座でもある。印刷会社の営業マネージャー、マネージャー候補、「チーム営業」の導入を検討されている皆様には、ぜひこの機会に受講していただきたい。
印刷営業マネージャー養成講座2024(オンライン)
2024年9月12日(木)~10月17日(木) 全6回 (1回4時間もしくは3時間)
(研究・教育部 河原 啓太)