生産管理という言葉は印刷業界でも日常的に使われることが多いが、その言葉でカバーされる具体的な業務は何なのかは非常にあいまいである。業務範囲は会社によってさまざまであるし、明文化されていないケースも多い。
(一財)エンジニアリング協会(ENAA)が設置した次世代スマート工場のエンジニアリング研究会という活動がある。
2024年6月に「MES標準業務機能リスト」が発表された。製造業の工場がシステム導入するときにスムーズに仕様設計のコミュニケーションがとれることをねらいとしている(詳しくは後述)。
対象業務範囲の項目は以下のとおりとなっている。
生産管理に限らず、製造から品質管理、設備保全まで多岐に渡っている。1つ1つの業務を文字で表現する機会は多くないので新鮮な印象を受ける。
例えば、7.HSEの中の「安全(Safety)」の詳細項目は以下となっている。
こうした細かさで、図1の12の業務のくくりそれぞれが整理されているので、現状の業務の棚卸しをしてみるという目的でも活用できそうだ。印刷業に特化しているわけではないが、意外と合致するとこが多いという印象である。一般的な製造業と比較することで足りないところも見えてくるだろう。
これらのリストは次のサイトからアンケートに回答すれば無料でダウンロード可能である。
『MES/MOM導入のためのRFP作成用標準テンプレート』公開に当たって
さて、後述するといったこのリストの本来の目的について述べたい。
この研究会では、次世代スマート工場の実現にはMES/MOMの導入・活用が必須であるという認識のもとに、実態調査・普及活動・教育事業などを推進している。
MESは製造実行システムと訳され、Manufacturing Execution Systemの略称、MOMは製造オペレーションマネジメントと訳され、Manufacturing Operation Managementの略称である。
これらのシステムは、本社側のERP/MISといった基幹システムと工場の設備の制御システムや作業者の中間に入って、工場全体を制御して全体最適を実現しようとするシステムといえる。
しかしながら、MESやMOMは概念的な要素があり、具体的にどんな機能が必要であり、現状のどの業務をどのように変えたらいいのかという話しをシステムベンダーとするときにうまく仕様に落とし込めないという課題があり、それを解決する一助として「MES標準業務機能リスト」が作成されている。
筆者はMESの概念は今後の印刷業においても重要であると考えており、以前、「印刷MESの提案」という記事を執筆した。関心があれば、こちらも参照いただきたい。
(研究・教育部 花房 賢)