「2024年度グッドデザイン賞受賞展」が11月1日~5日に開催された。1500点を超える受賞作品の中から印刷・メディアに関わるデザインを中心に紹介する。
日本デザイン振興会が主催する2024年度グッドデザイン賞は、5773件が審査対象となり、二次にわたる審査を経て1579件の受賞デザインが決定した。
その中から特に優れたものが「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれ、 さらに「グッドデザイン大賞」「グッドデザイン金賞」などの特別賞32件が決定した。
最高賞であるグッドデザイン大賞を受賞したのは、障害の有無に関わらず誰もが遊ぶことができる遊具「RESILIENCE PLAYGROUND プロジェクト」(株式会社ジャクエツ)である。
11月1日~5日には、東京・六本木の東京ミッドタウンで、受賞デザインの全てを紹介する展覧会「2024年度グッドデザイン賞受賞展」が開催された。多種多様な分野のデザインが一堂に会する会場で、印刷・メディアビジネスに関連した分野の健闘も目立った。以下、その一部を紹介する。
「くらしに役立つ」シリーズ
(株式会社ADDIX)―グッドデザイン金賞
特別支援学校に通う高校生に向けた教科用図書のシリーズ。知的障害を持つ学生たちが、将来自立した生活を営むための知識と教養を身につけることを目的に、2007年から刊行されており、今回は平成31年の学習指導要領改訂を踏まえてリニューアルした。生活に結びついた題材を取り上げ、読みやすく楽しい紙面デザインとなっていることが特徴。教科は国語・社会・数学・理科・保健体育・家庭の6冊。
プラグマガジン
(有限会社サーブ)―グッドデザイン金賞
2004年創刊で20周年を迎えた岡山県発の地域情報誌。ファッションとカルチャーを軸に、雑誌とイベントによって地元の人をつなげ、地域にムーブメントを生み出すことを目的に活動してきた。「PLUG」という誌名には「起爆剤」や「つなげる」といった意味がある。年2回発刊、毎号5万部、定価550 円(税込)。岡山県内の書店・コンビニエンスストア・セレクトショップのほかamazonなどオンライン書店でも入手可。
フルーツボックスシリーズ
(株式会社丸定)―グッドデザイン・ベスト100
山形県の特産品である果物の魅力を伝える果物用段ボール。若い生産者や消費者におけるニーズの多様化・複雑化に対応するために、既存のデザインから脱却したカジュアルなデザインを模索しつつ、配送や資材のコスト・環境配慮などの課題も踏まえて設計された。一部のデザインは箱を積み重ねると絵柄が繋がる仕様で、売り場で存在感を放つパッケージとなっている。山形のデザイン事務所・(株)コロンと東北芸術工科大学グラフィックデザイン学科の学生との産学連携でデザインされた。
LED常備灯 サステナブルパッケージ
(東芝ライフスタイル株式会社)―グッドデザイン賞
従来は1本ずつプラスチックフィルムと台紙を使ってパッケージされていたものを、10本入りの段ボールパッケージに変更。ホテルなどBtoB向けの需要が多いことから、多本数の購入への対応、商品設置時の作業効率、パッケージの廃棄時の環境負荷の低減などを目指して設計された。また緩衝材と取扱説明書を一体化したことで箱を開けたときに設置方法が一目で分かることも特徴。
不二家洋菓子店のリブランディング
(株式会社不二家)―グッドデザイン・ベスト100
1910年創業の不二家は長い歴史の中で、各店舗によってロゴや店舗デザインの統一が取れなくなっていた。そこで、ヴィジュアル・アイデンティティを再設定したのがこのプロジェクトである。
消費者によく知られている、ペコちゃんが舌を出した口元の絵柄を記号化したVIを新たに制作。一方、FUJIYAの「F」を用いたマークは変えないことでブランドの信頼感を示した。VIは店舗デザイン・ショッパー・パッケージなどに展開されている。このプロジェクトにより、不二家洋菓子店の売り上げは昨年比119%になったという。
産泰神社
(産泰神社)―グッドデザイン賞
群馬県前橋市にある神社のブランディングで、主祭神である木花佐久夜毘売命のご利益を活かす「安産祈願」と、神社の本義である「ご祈祷」の2つを軸としている。安産祈願を受ける20~30代女性とその家族を対象に、ご祈祷に何度も訪れるきっかけとなるように、社紋・授与品などをデザインした。ウェブサイトも、神社文化を広く啓蒙する情報発信媒体として構築した。これらのブランディングにより、Webサイトの月間平均閲覧数は2.2万から20万に増加。2023年度の売上は昨対比114%を達成したという。
YAMAP流域地図
(株式会社ヤマップ)―グッドデザイン金賞
行政区分ではなく、水の流れを基礎とした「流域」で表現した、インタラクティブな地図コンテンツである。山・川・街・海を含めた自然資本の価値を分かりやすく伝えるとともに、山・川・街・海を一体でとらえることで総合的な治水対策にも役立つことが特徴。パソコンのほかiOS、Androidのウェブブラウザーで動作する。
SD10ACRT
(セイコーエプソン株式会社)―グッドデザイン賞
大判プリンターの色合わせが簡単にできる自動測色ポータブルテーブル。印刷したカラーチャートを自動で測色しプリンターの色を合わせる。プリンターで培った駆動技術により高精度、小型・軽量、低価格を実現。工場間や客先間の移動を容易にする可搬性と、狭いスペースで測色できる作業性の良さを実現した。
そのほかにも数多くの優れたデザイン事例がある。「2024年度グッドデザイン賞受賞展」は終了したが、グッドデザイン賞の公式ウェブサイトでは、すべての受賞デザインを閲覧することができるので、
興味あるデザインを探してほしい。
グッドデザイン賞の公式サイト→
(JAGAT 石島 暁子)