包装印刷はシェアを2割まで拡大した。パッケージの多様化と環境対応が市場を後押し、ブランドオーナーからの期待も高まっている。(数字で読み解く印刷産業2018その6)
シェアを拡大する包装印刷
「経済産業省生産動態統計年報」の「印刷統計」によれば、2017年の生産金額3775億58百万円は、前年比2.4%減で2年連続の減少となった。この生産金額は従業者100人以上の印刷業を対象とした数字で、印刷前工程(企画・編集・製版など)と印刷後工程(製本・加工など)、用紙代などを除いた、印刷工程の生産金額に限定されている。
「印刷統計」の2004年調査開始以来の製品別シェアを見ると、この13年間で大きく減少したのは出版印刷(30.0%→17.4%)と証券印刷(2.0%→1.5%)で、包装印刷は逆に13.0%→19.7%と大きくシェアを伸ばし、建装材印刷も3.2%→4.5%と着実に増加している。出版不況の長期化、証券印刷物関連の電子化、包装材や建装材の多様化などを反映した数字となっている。
印刷産業全体がシュリンクしている中で、包装印刷だけが大きく伸びているが、そこでは消費者から見ても、わかりやすい企業努力が進められている。
例えば、パッケージの簡素化やペットボトルの減量化はもちろん、誤認を防ぐ工夫や、廃棄のしやすさなど、エンドユーザーの目線に立った改善が積み重ねられている。
デジタル印刷に特化した新サービスの立ち上げ
IGAS2018パネルディスカッション「ラベルパッケージ分野で拡大するデジタル印刷商材」では、Web to パッケージの「ハコプレ」サービスを展開している共進ペイパー&パッケージと、サッポロビールのオリジナルラベル事業「フォトビー」を手がける協同クリエーションが、デジタル印刷への取り組みを語った。
人口減少はパッケージの減少に直結するという危機感から、2013年にハコプレ事業部を立ち上げた鍛治川常務は、Webでは注文しにくいと思われていたパッケージをいかにして注文しやすくするかを考えた。直感的な操作でサイズ指定やデザインが簡単に行え、見積もりも即時完了する。
印刷事業を中心に、セールスプロモーション、屋外広告・サイン、デジタルプリントなどを手がける協同制作から2012年11月に独立した協同クリエーションでは、独自開発の画像処理自動生成システムにより、Web上のデータを印刷品質のデータに自動生成する。サッポロビールでは、オリジナルラベルビールをオーダーできるサービスの開始にあたって、きめ細かなサービスができる印刷会社を探し、極小ロット印刷ができる協同クリエーションとタッグを組んだ。
両社ともオフセット印刷の代替ではなく、デジタル印刷に特化し、新たなサービスを立ち上げたことが成功のヒケツと思われる。
パッケージへの期待が拡大
IGAS2018パネルディスカッション「軟包装・ラベル分野における水性フレキソ印刷の現状と将来展望」では、サントリーの「2R+B」戦略、ペットボトル開発において、樹脂使用量の削減(Reduce)と再生素材の使用(Recycle)により徹底した資源の有効利用を図りつつ、可能な範囲で石油由来原料を再生可能原料(Bio)で代替していく独自の考え方が紹介された。
サントリーの烏龍茶では、リニューアル発売に合わせ、油性グラビア印刷から水性フレキソ印刷に変更。VOCの発生をほぼ抑え、ロールラベル1枚当たりのラベル印刷工程におけるCO2排出量を約8割削減した。全面的に切り替えたいが、デザイナーやマーケターは特色を好む傾向にあるという。
エンドボードやSPなどが使われなくなった売り場では、パッケージの広告としての機能が重要になっている。産業全体として環境問題に取り組む必要がある中で、パッケージには内容物の保護と、環境適性がさらに求められている。
(JAGAT 吉村マチ子)
関連情報「デジタル×紙×マーケティング」
今年のJAGATのテーマは「デジタル×紙×マーケティング」。夏フェスは「デジタル×紙×マーケティング」の相乗効果を考え、マーケティングの理論から実践までを、基調講演、カンファレンス、セミナー、展示コーナーを通して考えていただくイベントです。
現在『印刷白書2018』(10月25日発刊予定)の準備を進めていますが、特集のテーマは「デジタル×紙×マーケティング」。また、「経済産業省生産動態統計」などの統計データをわかりやすい図表にして、印刷産業の産業構造などをまとめます。