印刷機のオペレーターが目標をもって作業できる現場体制を構築するにはどうしたらよいか。経営者は現場の士気高揚のためにいろいろな工夫をしている。
オペレーターのモチベーションが上がれば作業効率もアップし、会社の利益確保にもつながる。しかし、その手法に頭を悩ます経営者も多い。現場を盛り立てるにはいろいろな工夫が必要だ。ここでは、生産現場活性化の手段としてオペレーターのマルチプレイヤー化と機長試験制度を導入している会社の例を紹介する。
●生産体制維持に有効なマルチプレイーヤー化
ある表面加工専業の会社では、オペレーターのマルチプレイヤー化をはかっている。これは1人で数台の機械を操作できるように教育することだ。オペレーターが1台の機械しか操作できないと、欠員が出たときに機械が稼働できないこともある。こうした状況を打開するために、ある程度経験を積んだオペレーターにローテーションを組んで複数の機械の操作を勉強させている。そうすれば欠員がでても他のオペレーターが互いに協力しながら対応できて生産性体制を維持できる。
マルチプレイヤー化のもうひとつのメリットは初期の段階で機械の故障を発見し、すぐに修理して作業できることだ。オペレーターは1台の機械に慣れてしまうと、マンネリ化してその機械の調子が悪くなっても気づかないこともある。その点、複数のオペレーターで機械を操作していると不具合を発見しやすくなる。
しかし、現有の人数でこの制度を導入することは難しい。オペレーターが新しく機械操作を覚えるために今の機械を離れることによる欠員が生じ、コーチ役も必要だ。定員内での運用は無理があるので、経営者は「糊代」役を増員するなど運営体制を考える必要がある。
●機長試験制度の導入
ある印刷会社ではベテラン機長が退職したときに年功序列で機長を交代していた。そのため若いオペレーターにとって将来の展望が持ちにくい状況があった。こうした体質を改めるため、経営陣が考えたのが機長試験制度である。
オペレーターは段階的にスキルを身に着けながら印刷機を操作し、ある程度の経験を積んで一定レベルに達したら機長試験を受験できる。試験では工場長が顧客役になり注文をつけ、それに対して適切に機械操作ができるかを試験する。不十分なときは3ヵ月後に再試験を行う。合格したら手当を付けて機長職を命じる。その中でもリーダー格の人材は複数の機械操を作できるようさらに勉強してもらう。
この制度導入を発表し受験を募集したところ、オペレーター全員が機長手当を目当てに手を挙げた。しかし、全員が手を挙げたからといって常時試験を行うわけにもいかない。経営者と現場の管理者はオペレーターのポジショニングと時期を考え、工場の生産体制に支障のないように計画的に制度を運用しなければならない。
経営者は、この機長試験制度という新しい試みの「仕掛け」をつくることにより、現場の士気を高める効果があるということが分かった。オペレーターのモチベーションを上げるためにも、経営者はいろいろな仕掛けを考えていかないといけない。
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