日本語組版とつきあう その40
字数の多い見出し
字数の多い見出しは、本を読む立場から考えてもあまり望ましいものではない。本文の内容がどんなものか要点を知る、目次で全体の流れを読む、柱で内容を確認する、などといったように見出しの利用度は高いので、原稿編集(原稿整理)で十分に検討する必要がある。
しかし、内容を表現するうえでどうしても字数が多くなる場合もでてくる。このような場合、組版上からも問題があるので以下で考えてみよう。
字数の多い見出しと柱
字数の多い見出しを1行で柱に掲げると、版面の半ばをこえてしまう場合がある。このような柱は、本を読んでいく際に邪魔に感じる場合がある。できれば柱は、版面の半ばをこえないようにするのが望ましい。
柱は必ずしも見出しとまったく同じでなくても、読者は理解できるので、一部が省略できるのであれば短くするとよい。
また、左右中央に配置した柱は、字数の多い場合もいくらか問題が解消できるので、配置位置や文字サイズで工夫するとよい。
見出しは版面一杯まで配置できるか
字数の多い見出しで、1行のままでは版面をはみ出す場合、当然に2行や3行に折り返す必要がある。
ところで、版面いっぱいまでは配置できるのであるから、そこまで見出しを配置してよいだろうか。縦組の例でいえば、版面ぎりぎりまで配置すると、版面に対して、いかにも見出しが下がり過ぎに見える。
そこで、4字下ガリの見出しであれば、見出しの下部は少なくても4字くらいは空いているのが望ましい。
したがって、字数の多い見出しが含まれる場合は、見出しの種類ごとに1行にする最大の字数を定め、それをこえる場合は2行にする。
見出しを2行に折り返す箇所
見出しを2行に折り返す箇所は、1行目と2行目のバランスを考えながら適宜決めればよい。一律に何字目から折り返すという方針ではなく、区切りのよい箇所で折り返すと読みやすい。そこで熟語・固有名詞の途中や助詞の直前で折り返さないようにする。
折り返しの行頭の位置
折り返しの2行目の行頭の配置位置については、いくつかの方法があるが、一般に見出しの1行目よりは下げた方が安定する。
例えば、見出しの冒頭にレベルや順序を示す文字や数字等のラベル名がつく場合は、2行目の行頭をラベル名に続く見出し文字列(一般にラベル名と見出し文字列の間は見出し文字サイズの全角アキ)よりは、見出しの文字サイズで1字だけ上げるとよい(図1の右の例参照)。
ラベル名がない場合は、逆に、1行目よりは2行目の行頭を見出しの文字サイズで1字だけ下げるとよい(図1の左の例参照)。
(図1)
折り返した見出しの行間
2行に折り返した見出しの行間は、まとまりのある1つの見出しであることを示すように狭める必要がある。行間が広いと、2つの見出しと誤解される場合もあるので、注意が必要である。
本文の行間にもよるが、見出しを2行に折り返す場合はその行間は二分から三分くらい、3行に折り返す場合はその行間は三分から四分くらいにするとよい。
その他の問題
その他、見出しの行取りも、見出しの前後に配置する本文とのアキをそろえる必要があるので、折り返さない場合よりは1行ほど多くしておく。
いずれにしても、見出しの字数が多くなった場合は、組版上からも問題が出るので、原稿編集(原稿整理)の段階でも注意しておき、さらに組版設計の段階でも、字数の多い見出しの処理をよく検討しておく必要がある、といえよう。