2019年3月15日(金)-30日(土)までペーパーボイス東京で、「紙と、インクジェットと、三人のマニアたち。」が開催された。小柳 祐介、田中 せり、八木 彩、3人のアートディレクターによる部活のような創作活動「PAPER & INKJET MANIA」の成果を披露する企画だ。
株式会社ショウエイがUVインクジェットプリントとレーザーカッティングなどの加工を担当、平和紙業株式会社が用紙を提供した。
三者三様の創作が共存して、楽しさと驚きに満ちた展覧会になった。
小柳 祐介氏/「あまりっこ動物」
ショウエイは印刷とともにカッティング加工も手がけている。
製造後には、穴の空いた端材が残る。
通常はゴミとなる端材から新しい作品を作る。つまりアップサイクルをやってみよう。
それが、小柳氏のチャレンジだった。
絵柄のモチーフにしたのは、Googleが提供するサービスQuick, Draw!のデータベース。
ニューラル ネットワークの実験を兼ねたオンラインゲームだ。
まず端材をカメラで読み込み、画像認識技術で切りやすい部分を解析し、裁断する線を描く。
一方でQuick, Draw!の落書きデータベースから23種類の動物を抽出し、あらゆる形をいずれかの動物の形に解釈するよう、人口知能に学習させる。
その人口知能で、端材のそれぞれを何らかの動物の形に当てはめる。こうしてできた動物の絵柄を自動でレイアウトし、プリント、裁断して出来上がり。
田中せり氏/「粒をレイアウトしてみる」
「粒」とは、インク液滴のこと。
ショウエイが保有する大判UVインクジェットプリンターは、厚さ50mmまで対応可能。紙だけでなく、厚い板などにもプリントできる。
参考
通常は、プリントするメディアの厚みに合わせてヘッドの位置を調整する。
ヘッドと用紙の距離が離れてしまうとインクが正確な位置に着弾せず、絵柄がボケてしまう。
今回の実験では、普通は印刷ミスとなるこうしたボケを表現効果として使っている。
八木 彩氏/「Touching is Seeing.」
紙ならではの手触り感を生かし、見るだけでなく触れるポスターを制作した。
用紙を2枚重ね合わせ、上の用紙をカッティングしたところに違う用紙をはめ込む、紙象嵌という手法を用いた。触感の違いを楽しむために、紙の色は黒に絞っている。
紙象嵌のほかにも、UVインクジェットインクを盛り上げてプリントした部分や、紙象嵌とプリントを組み合わせた部分などがあり、表現の変化に富んでいる。
紙とインクジェットプリンターならではの冒険を思う存分楽しめる展覧会だった。
会期 :2019年3月15日(金)- 3月30日(土)
会場 : 平和紙業株式会社 ペーパーボイス東京
協力 :
株式会社ショウエイ
平和紙業株式会社
MANIAS:
小柳 祐介 田中 せり 八木 彩
WRITER:
壇上 真里奈
EXHIBITION DESIGN:
尾形 逹(B6 studio)
PRINTING DIRECTOR:
山下 俊一(株式会社ショウエイ)
PAPER DIRECTOR:
西谷 浩太郎(平和紙業株式会社)
PAPER & INKJET MANIA
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*初出:「紙とデジタルと私たち」2019年3月26日
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)