普及期を迎えたプロセスレスプレート、デジタルメディアは足踏み

掲載日:2019年8月8日

「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。

JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の2018年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は117名、1社当たりの平均売上高は22.6億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。

図1.現在導入率の高い順

図1は現在導入が多い順に並べたものである。第1位は前年同様バリアブルデータ印刷で64.7%(前年 63.6%)、第2位が品質検査装置の47.5%、第3位は自動組版で42.4%となっている。品質検査装置は前年の3位(44.3%)から一つ順位を上げ、自動組版は前年の5位(40.9%)から二つ順位を上げている。

第4位は自動面付の42.4%で、昨年の9位(35.2%)から約7ポイントアップとなった。 人手不足への対応からか省人化、自動化がポイントを伸ばしている。

一方で、デジタルメディア関連の項目は、動画制作が前年の43.2%から34.3%と8.9ポイントダウン、電子販促が前年の39.8%から34.3%と5.5ポイントダウン、スマホ等アプリ制作が23.9%から22.2%と1.7ポイントダウンと軒並み数字を落としている。

図2.満足度の高い順

導入した結果の満足度は、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している(表2)。

満足度の点数が最も高かったのはAI(人工知能)で3.00点であった。ただし、導入企業がまだ少ないので様子をみたい。第2位は前年同様プロセスレスプレートで2.67点であった。順位は前年と同じであるが点数は前年度の1.11点から2倍以上の高評価となっている。導入率が前年の10.2%から15.2%へ上がっただけでなく、今後3年以内に導入予定という回答も前年の5.9%から10.2%に上がっている。プロセスレスプレートは黎明期から普及期に入ったといえそうだ。

第3位は品質検査装置で1.87点であった。順位は前年の1位から2つ下げたもののポイントは前年の1.26点から大きく伸ばしている。導入率も47.5%と回答企業の半数近くが導入しており、目視による抜き取り検査からインライン検査装置あるいは専用装置の導入による全数検査へという流れが高まるとともに、検査の精度や使い勝手についても満足度が上がっている。

第4位は自動組版で1.46点であった。一昨年度の0.55点(4位)から昨年度は1.06点(3位)ときて今年度は1.46点(4位)となり一昨年度からは約3倍増となっている。DTP制作現場は長時間残業があたりまえというのが従来の感覚であったが、働き方改革が叫ばれるなか、自動組版はDTP作業の生産性向上手法の一つとして注目されるし、実際に効果的なようだ。

一方で、動画制作、CG制作、電子販促、スマホ等対応アプリ制作といったデジタルメディア関連の満足度はいずれもマイナスで、かつCG制作以外は点数が減少している。

デジタルメディアへの取組みは、減少する印刷需要を補う新しい売上の柱となるという期待感があるものの現実的には、なかなか難しいようだ。回答企業からは、収益源はあくまで印刷の仕事であり、動画やAR、Web制作は印刷物の受注を獲得するためのフックと割り切って営業活動をしているという声があった。

図3.今後3年以内に導入予定の高い順

図3は今後3年以内に導入を予定しているとの回答が多い順に並べたものである。前年に続き第1位はAI(人工知能)が19.2%、第2位は、営業支援ツールと今年新設した選択肢のRPAで18.2%となっている。営業支援ツールは前年も2位であった。

想定されているAIの用途は、製造現場の人手不足や熟練者不足への対応もあれば、お客様の販促支援での活用も考えられ回答企業によってまちまちであると思われる。期待先行の感もあるが、印刷業界にAIがどのような形で導入されていくのか注目していきたい。

CRMやSFAなどの営業支援システムは、属人性が高いと言われる印刷営業の課題を解決する手段として期待が大きい。また、結果管理からプロセス管理へという流れもある。期待値の割に満足度は低いという調査結果にはなっているが、導入企業の業績が最も良いのは営業支援ツールでもある。

詳細は9月発行予定の経営動向調査報告書を参照いただきたい。

(研究調査部 花房 賢)

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