働き方改革によって、コンビニの営業時間短縮、JR西日本の終電時刻前倒しの検討など、いろいろな方面で変化がはじまっている。2020年4月からは、中小企業でも残業の上限規制が実施される。時間外の上限は、月45時間、年360時間が原則だ。また、正規、非正規労働者間の不合理な待遇差の禁止も重要項目である。
まったなし、男女分業の見直し
働き方改革は、日本にとって必要との向きもある。そもそも日本企業は、長期雇用(年功賃金)の保証と比較的強い命令権(残業、配置転換)がセットで考えられてきた。不景気になっても解雇しないよう、正社員を最低限に保つ。よって好景気により仕事量が増えると残業も増加する構造だ。
さらに長期雇用のため、仕事内容より、年功的な職能資格で賃金が決められてきた。しかし若年社員数が少なく(中高年社員が多く)なると賃金の維持は難しい。よって企業は正社員を少なく、非正規社員の比率を増やした。こうして正社員の仕事負担が増え、長時間労働につながっている。
また、グローバル環境のなか、多くの先進国では男性の年収は下落傾向にあり、その分女性の働きによる賃金上昇が家計に貢献している。しかし、日本では男性が長時間労働をこなし、女性は出産のため退職、その後も低賃金で働くケースが多い。また、男性が1人で家族を支える生涯賃金を得られることが難しくなった現在、ますます女性の働き方、賃金の見直しが必要になった。
企業業績 ≒ 社員定着
日本では、残念ながら若手を中心に退職率の相対的な高さは継続中である。若手世代の退職率は、中高年に比べ2倍以上高く、生え抜きを重視する日本的人事において、中核人材の不足や事業発展にも影響を及ぼしている。企業のなかで退職率が高くなると、競争力、業績、顧客満足の低下につながりやすい。よって、退職の原因や対策を考えることは、企業の発展と中核人材定着のためのマネジメントを行う上で重要になる。 退職の要因として、主に以下の4つがある。
1.個人の職務能力(適正)
2.態度(忠誠心、動機)
3.退職のきっかけ(できごと)
4.個人や組織の環境(人事)
社員が現在の仕事と転職後を比較し、満足度など主観的要因を含め、得られる効果の合計が退職のコストを上回ると、退職を決断するという。また、社員の退職行動について、不満の蓄積より、特定のできごとが原因で退職になることも多い。そこでは、職場の人間関係、結婚、介護、子供の就学などがある。個人の状況変化が心理にも大きな影響を与えるのだ。
最近の研究では、退職は個人の判断だけではなく、企業の組織的要因もあるとしている。退職者が多い企業では、主に以下3つの要因が影響している。
1.人事管理制度、ミスマッチ
2.従業員の態度、人間関係
3.従業員の能力や特性、環境
退職の問題は、社員の定着促進とも密接に関わっている。従来、退職の低下に結びつくとされた仕事への関わり方、人間関係、忠誠心だけでなく、社員の家族、コミュニティとの関係など、定着を促進する要因、効果もあるようだ。
企業への定着に与える効果が大きいものは、以下3つである。
1.平均給与の高さ、福利厚生
2.職務給(変動給は逆効果、成果給は効果薄)
3.職務デザインの改善、社員の意見を聞くこと
新社会人を対象とした「就職先をどう選んだか」という調査では、安定性、知名度よりも「成長できる環境がある」がトップだった。この調査なども参考に、自社独自に工夫した人材定着のためのマネジメントが必要になる。
(西部支社長 大沢昭博)
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