リモートワークに対応する技術、製品の導入が進む

掲載日:2020年7月2日

「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度を紹介する。

JAGATでは毎年、会員企業を対象に「印刷産業経営動向調査」を実施している。今年度は3月に調査票を送付、現在、回答チェック及び集計作業中である。調査内容は、財務、経営戦略、設備動向まで多岐にわたっている。

今回は、2019年度調査の速報として新技術/サービス/システムの導入状況、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は126名、1社当たりの平均売上高は26.8億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。なお、本設問における有効回答数は104社である。

表1.新技術、サービスの導入状況 導入率の高い順

表1は現在導入が多い順に並べたものである。第1位は3年連続でバリアブルデータ印刷で64.4%(前年 64.7%)、第2位が品質検査装置の47.1%、第3位は自動面付で41.4%となっている。上位の回答は8位のリモートプルーフまで前年とほぼ変わりがない。

リモートプルーフは前年の23.2%から5ポイント以上数字を伸ばしている。その他数字を伸ばしている項目をピックアップすると、9位のWeb to Printは前年の17.2%から約7ポイント増(前年は11位)、11位の営業支援ツール(CRM/SFAなど)は前年の12.1%から約8ポイント増、14位の資材料発注の電子化は前年の2%から11.5ポイント増となっている。これらの項目はリモートワークとの親和性が高い。調査の時期はコロナの感染拡大が本格化する前であり、今後さらに導入が加速すると思われる。

一方で、デジタルメディア関連の項目は、昨年に続いて伸び悩んでいる。動画制作は前年の34.3%から34.6%へ、電子販促が前年の34.3%から29.8%と4.5ポイントダウン、スマホ等アプリ制作が前年の22.2%から22.1%となっている。

なお今年度から加わったデジタル加飾の導入率は9.6%であった。

表2. 新技術、サービスの導入状況  満足度の高い順

導入した結果の満足度は、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:▲2点、E:▲5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している(表2)。

満足度の点数が最も高かったのはAI(人工知能)であった。前年に続いての1位ではあるが、導入企業は少ない。2位も前年と同じくプロセスレスプレートであった。満足度は高いが、アンケット結果からは普及の拡大、今後の導定予定とも前年ほどの勢いはなくなっている。

3位は自動面付で前年の7位から順位を上げている。導入率が上がるとともに満足度も高まるというプラスのスパイラルにある。

一方で、動画制作、CG制作、電子販促、スマホ等対応アプリ制作といったデジタルメディア関連の満足度は軒並みマイナスであった。印刷物とデジタルメディアが相互に補完し合っていくという方向性を否定する人は少ないと思うが、ビジネスという面では理想と現実のギャップがなかなか埋まらないという状況がある。

なお、「JAGAT印刷産業経営動向調査」の全体の結果は9月にまとまり、報告書として発表予定です。

(研究調査部 花房 賢)