コロナ禍のなかでもいくつかのリアル展示会は開催されている。厳しい経済状況のなかで販路開拓に挑む出展者のなかには、印刷・加工関連企業の姿も見える。
縮小傾向にある印刷・加工業界では、新たな事業軸を模索するなかで自社製品ブランドを確立しようという気運が高まり、プロモーション・雑貨・インテリア関連の展示会に出展する印刷関連会社が増えている。
しかし2020年は新型コロナの影響で、例年のように無条件に来場者を受け入れる形の展示会は難しい。開催が延期となったものもあればオンライン開催になったものなどもある。
リアル開催の場合も海外をはじめ出展を控える企業があり、例年の賑わいに比べれば多少さびしい印象はいなめない。
一方では、出展者が絞られているためにバイヤーの目にとまりやすく、商談が進むというメリットもある。バイヤーもコロナ禍による低迷からの回復を目指しているためか、出展者への質問にも熱が入っている様子だ。出展企業からは、従来よりも引き合いが多く、手応えを感じているという声をきく。
2020年9月2~4日に東京ビッグサイトで開催された「第15回 ライフスタイルWeek 夏」と「第12回 Japan マーケティング Week【夏】」(リード エグジビション ジャパン 株式会社主催)の各専門展で出会った印刷・加工関連企業の出展内容を紹介する。
第31回 国際文具・紙製品展-ISOT-
CRU-CIAL(クルーシャル)[加藤製本株式会社]
技術と開発力で定評のある製本会社が運営するブランド。レーザーカッティングや焼き付け加工を施した木製の御朱印帳シリーズから「アマビエ」が登場。紙製の花器などの新製品、人気のマカロン付箋も紹介した。page2020で登場したコンセプト展示「CRU-CIAL LAND」が再登場し、人目を引いていた。
irodo[株式会社扶桑]
シール・ステッカー製造会社が開発した布に貼れるステッカー。2017年度東京ビジネスデザインアワード(TBDA)最優秀賞受賞をきっかけに発売した。次々に新柄を発表し、2019年には第13回キッズデザイン賞『子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門』受賞。おうち時間の需要を見込み、販路開拓を図る。
wemo[株式会社コスモテック]
粘着シート製造会社による、ペンで書いて消せるメモツールのブランド。2016年度TBDA優秀賞を機に発売したバンドタイプがヒット商品となり、2018年度は日本文具大賞優秀賞を受賞。今年は日用品・文具の識別に使えるタグタイプ、クリップタイプ、貼り付けタイプのほか、手帳に貼るシールタイプ、A4クリアファイルタイプなどのラインアップを紹介した。
Slido Note(スライドノート)[株式会社研恒社]
同社は商業印刷物の企画から印刷まで関わるほか、オリジナルノート作成サービス「KaKu」を運営している。2019年度TBDA受賞を機に、ルーズリーフブランド「PageBase(ページベース)」を立ち上げる。今回はリングレスの最新型ルーズリーフ「Slido Note」を発表した。差し込み式なので、穴を気にせずどんな用紙にも対応し、ファイリングの自由度が増す。スタイリッシュなデザインで、ビジネスシーンにも馴染む。
ガプラス[グラパックジャパン株式会社]
紙器・カード・POPなど幅広い分野に取り組む印刷会社による、レンチキュラーを応用した、うごく絵はがき。
人気のねこシリーズのほか、鳥獣戯画シリーズなど新作グリーティングカードを紹介した。専用の回転プレーヤーを多数並べ、滑らかな動きをアピールした。
マスク装着アイガード ほか[大阪シーリング印刷株式会社]
飛沫感染対策製品として、マスクのゴムに固定する「マスク装着アイガード」、印刷できる透明マスク「ハッピールックマスク」を紹介。アイデア製品ブランド「Item OSP」や環境対応製品なども展示した。
「第15回 国際 雑貨EXPO 夏」より
葛飾ブランド「葛飾町工場物語」の共同出展
POPUP名刺/パカポン[有限会社高田紙器製作所]
同社は常に斬新なアイデアで、紙の加工手法を開発している。インパクトある「POPUP名刺」、封筒からオブジェが飛び出すギフトカード「パカポン」などオリジナル商品を披露した。
回転シルクスクリーン印刷[有限会社小堀加工所]
シルクスクリーン印刷の専門会社で、曲面容器への印刷を得意としている。多色印刷にも取り組み、イラストなどカラー原稿の色再現も可能。化粧品容器、タンブラー、プラスチックカップなど幅広い実績がある。
「第12回 Japan マーケティング Week【夏】」内「第12回販促 EXPO【夏】より」
通販プリントショップ「一作屋」[松本印刷株式会社]
オフセット印刷、オンデマンド印刷、クリアファイルなどを手掛けながら、小ロット対応の印刷通販「一作屋」を運営している。今回は「仕切るをデザインする」をテーマに、感染防止のパーテションやスクリーンに印刷を施した製品を紹介した。アクリルパーテション「エチケットボード」吊り下げ式のパーテーション「エチケットスクリーン」で、飲食店や美容サロンなど様々な利用シーンを提案した。
「第2回 店舗運営EXPO【夏】」より
配信サイネージ一体型ゴンドラ什器「Digital Gondola(デジタルゴンドラ)」[共同印刷株式会社]
スーパーマーケットやドラッグストアでの集客アップを目的にした製品を紹介。フロア什器にサイネージを取り付け、商品を陳列しながら、販促コンテンツを配信する。専用のCMSで配信コンテンツをクラウド上で管理・運用することができる。
現在開催されている「第90回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2020」をはじめ、これから製品発表の場が増えてくるだろう。印刷・加工関連企業からの提案にも期待したい。
(JAGAT 研究調査部 石島 暁子)