【カフェレストランチェーン(飲食サービス業】第30期クロスメディアエキスパート 論述試験(与件)
掲載日:2020年12月15日
状況設定
- あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やSP企画・制作、Webサイトの構築・運用のサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザイン制作、およびWebコンテンツや映像・動画の企画制作を専門とする系列子会社があり、グループ総従業員数は約270名である。
A社提案プロジェクト
- 神戸市に本社を構え、カフェレストランチェーンを展開しているA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。同社のチラシ・パンフレット・メニューの製作やWebサイトの一部を手がけた実績もある。
- 営業担当者より「A社は生活者との新しいコミュニケーション戦略を検討している」との報告があった。そこでX社では、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げることになった。クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーを任命された。
- X社は本プロジェクトにて提案書を作成し、2020年9月7日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリング
- A社について調査を進めたところ、X社の競合企業Y社がインターネットやSNSを活用した企画提案を行う準備をしているとの情報が入った。X社では、営業担当者が中心となり、社長と専務(兼経営企画室長)との面談(※ヒアリング報告書参照)を実施した。
- A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
2020年8月22日
A社ヒアリング報告書
X社 営業部 第一課
水谷 純一
概要 A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時 2020年8月18日 12時~14時(試食会を含む)
対応者 森園社長、吉村専務(経営企画室長)
内容 下記に記載
1. 提案へ向けて
- A社は、神戸市に本社を構え、京阪神のビジネス街を中心にカフェレストラン「グッドカフェ・アンド・グリル(GC&G)」15店舗を運営している。
- A社は2018年に新たな事業モデルとして、店舗ブランド名を派生させた持ち帰り専門店「GC&Gホーム」をスタートした。既にビジネスパーソンに浸透したブランドの味を家庭にも広げたいという考えである。GC&Gで人気のあるサラダランチを中心に提供している。
- 当初、試験的な意味合いで神戸市内、および大阪市内に各1店舗ずつを開設した。約1年半の試験期間を通じて、低コストで出店・運営できること、カフェレストランに比べて売上の波が小さいことなど、強い手応えを得た。
- 2020年、この持ち帰り専門店「GC&Gホーム」を重点的に拡大する事業構想を発表した。今後3年間で「GC&Gホーム」を20店舗程度の規模に拡大する構想である。
- 将来は「GC&Gホーム」を主要事業に据え、フランチャイズ化、全国展開することを視野に入れている。
- 多くのファンとのつながりを重視し、新たな生活者とのコミュニケーション手法を確立したいと考えており、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めている。
2. 施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい。
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを把握し、厳選して活用したい。
3. 想定予算
- 印刷、Web制作費、ハードウェア、ソフトウェア、開発費などで、総額1,300万円以内を想定(初期費用のみ。サービス開始後の維持費は別途算定として構わない)
4. 施策の実施期間
- 2020年9月に業者選定。10月に要件定義と設計、11月~2月に準備、3月1日に一部施策開始、4月~9月末が本施策。全1年。8月に結果を評価し、翌年度計画を立てる。
- 新年度に合わせ、4月からキャンペーンを本格展開したい。
5. A社の創業とグッドカフェ&グリル(GC&G)
- A社の創業者 森園祐司は、大学を卒業後に語学留学を目的として、カナダ西海岸のバンクーバーに渡った。その際に、ステーキハウス・チェーン店「The Keg Steakhouse +Bar」で2年間働いた。
- そこは大人が集う雰囲気を大切にする店であり、ステーキだけでなく、サラダやデザートも定評がある。来客へのもてなしが徹底しており、客から食事ともてなしに感謝される働きがいのある店だった。また、昼食として提供するボリューム満点のサラダランチは、種類も多く森園のお気に入りだった。
- 帰国後、知人の勧めにより、「パワーサラダ」専門店チェーンで働いた。パワーサラダはサラダランチの一つである。フレッシュで色彩豊かな野菜にフルーツを載せ、トッピングとして肉、ハム、卵、チーズ、豆腐、さらにアーモンドやくるみなどのナッツ類を添える。これが彩りのサラダボウルになる。
- パワーサラダ専門店は、健康志向のファストフードとも言える。利用客は、流行に敏感で健康志向の高い女性や栄養が偏りやすい一人暮らしのビジネスパーソンが多い。
- 森園は、2年間スタッフとして働いた後、店長を3年間、さらに複数店舗の管理をする本部スタッフ(エリアマネージャー)を2年間経験した。本部ではさらに業態開発として、新店舗開発、ターゲット層のマーケティング、経営戦略に携わる部門を経験した。
- 森園は、業態開発を経験する中で自分の店を持ちたいと考えるようになった。カナダ留学時代に影響を受けたステーキハウスを念頭にしたカフェレストランの出店を決意。2003年、神戸市のビジネス街に「グッドカフェ&グリル(GC&G)」1号店を開店。その後、2019年までに京阪神地区の15店舗に拡大した。
- GC&Gは店舗ごとに異なるテーマを持たせている。1号店は開放感あふれるオープンテラスとガラス張りの店内。貸し切りパーティーも開催できる。
- 夜間の客単価は2000円〜3000円。メニューの価格帯はモーニング600円、ランチ1000円、ディナー2500円。
- 全店舗で共通なのは、カナダで経験したような、大人がくつろげる空間を演出し、おもてなしを大事にした店であること。ローストビーフやサラダランチは特に好評で、人気メニューとなっている。また、サラダランチには自家製のパンがつけられており、高評価を得ている。
6. GC&Gホームの事業内容
- GC&Gホームは、郊外のベッドタウンに展開するパワーサラダの持ち帰り専門店である。既に有名となったカフェ&グリルと同じブランドの姉妹店であり、手軽に同じ料理を味わうことができる。
- 持ち帰り専門店のため、店舗サイズはごく小さい。まず、神戸市内の商店街、大阪市北区の商店街に、各1店舗を出店した。
- 商品メニューはサラダランチのみだが、トッピングやチーズ、ハム、ベーコン、タマゴ等を選択することができる。テイストに合わせたパンが付く。トッピングによって価格は異なるが、通常の販売価格帯は500~1000円程度である。
- 当初は20代~30代の一人暮らしや、帰りが遅くなったビジネスパーソンの利用を主に想定していた。また、栄養バランスに優れることから、ジム通いの人なども望めると考えていた。実際には、予想以上に家族用の購入が多く、売上実績も好調である。
- 自前の宅配設備や人員、Webオーダーシステムは、コスト負担が大きくなるため用意していない。オンラインデリバリーサービスと契約し、宅配注文の要望に応えている。
- 将来はフランチャイズ化し、ブランドの浸透と全国展開を想定している。
7. GC&Gホームの販売促進
- GC&Gホームの出店時には、近隣地域にクーポン付きチラシを数回、ポスティングにて配布した。折込みチラシは、単身者や20~30代にリーチしにくいため、実施していない。
- A社の企業サイトでは、GC&Gのコンセプトや理念、創業ストーリー、イベント案内や報告を掲載している。GC&Gホームの出店時に新たなGC&Gホームのページを制作し、コンセプトやメニュー構成・魅力をアピールしている。現段階では事業規模が小さいため、Web広告等は実施していない。
- 既存のGC&Gファン、GC&Gを利用し気に入ってくれた人たちが、自宅近くでサラダを買って帰るような導線を作りたい。
- これまでに正式な会員登録制度は導入していない。紙製のスタンプカードに500円購入ごとにスタンプを押し、20個のマス目を埋めると500円引きとする制度がある。
- GC&Gが始めた持ち帰りサラダランチとして、地元の雑誌・フリーペーパー、および地元TV局の取材が数件あった。一時的に行列ができるなど、TV放送後の反響は大きかった。
8. 食品宅配・持ち帰り市場
- 食品宅配・持ち帰りを総称して、中食(なかしょく・ちゅうしょく)と呼ばれている。外で食事する外食、および家庭内で調理した食事を表す内食に対して生まれた言葉とされ、家庭外で調理された食品を家庭内で食することを指す。コンビニが広まった1980年代頃から使われている。
- スーパーやコンビニ、デパ地下等で販売されている総菜やおにぎり、弁当の他に、宅配ピザや宅配寿司、ベーカリーなども含まれる。共働き、単身世帯の増加や高齢化の進展に伴い、中食市場は拡大を続けている。
- 近年、オンラインデリバリーサービスが急成長し、中食市場の拡大を加速している。インターネットで提携レストラン等の注文を受け、宅配サービスを行う。
- ユーザーにとってはさまざまな店舗の注文を手軽に行え、自宅まで配送してもらえること、店舗にとっては新たな人員やオーダーシステムを用意することなく、宅配サービスに参入できるという利点がある。
- 代表的なオンラインデリバリーサービス「出前館」は、現在全国約2万店舗以上と提携している。また、2016年に日本に上陸した「Uber Eats」もパートナー数1.4万店舗以上と急成長を続けている。
9. A社の競合
- 外食サービスを展開する大手企業のB社は、「フィッシュ&ライス」を立ち上げ、食品宅配サービス市場に参入している。近畿地区で約50店舗を展開している。
- 「フィッシュ&ライス」では、魚と米を手軽に味わえる商品を、500円から800円(税込)で提供しており、20~30代から50~60代など幅広い生活者層に人気がある。
- 店舗での商品受け取りには、割引特典を実施している。
- 月に1度、クーポン付きの新聞折り込みチラシを配布している。また、コーポレートサイトのほかソーシャルメディアを活用してメニュー構成などをアピールしている。主要放送局によるテレビCMも頻繁に発信している。
10. 今後について
- GC&Gホームのブランドを定着するには、店舗の拡大の他に、季節や街の行事・イベントに合わせたキャンペーン実施が重要と考えている。また、顧客参加型のキャンペーンイベントも実施したい。SNS等を通じて、これらの情報をファンと共有する方策を考えたい。
- GC&Gホームの事業では、豊かな食生活を大切にすることと健康志向をアピールすることが不可欠である。継続的な接点を築き、これらを踏まえた顧客コミュニケーションを実現したい。
A社の概要
【基本情報】
- 法人名:株式会社A
- 設立 :2003(平成15)年
- 従業員:250名(うち正社員60名)
- 資本金:8千万円
- 売上 :11.5億円(2020年3月期)
- 本社所在地:兵庫県神戸市
- 役員 :代表取締役 森園祐司 専務取締役 吉村慎之介 常務取締役 長崎佳織
- 事業 :レストラン、および持ち帰り専門店の運営
【企業沿革】
- 2003年 神戸市にカフェレストラン「グッドカフェ&グリル(GC&G)」1号店を出店
- 2005年 大阪市北区に「GC&G」2号店を出店
- 2018年 京都市下京区に「GC&G」15号店を出店
- 2018年 持ち帰り専門店「GC&Gホーム」1号店を神戸市内の商店街に出店
- 2020年 「GC&Gホーム」拡大の事業構想を発表
【経営理念】
- 食のおもてなしによって、豊かな社会に貢献する。
【社長プロフィール】
森園 祐司(もりぞの ゆうじ)
1993年にD大学経営学部を卒業。
大学卒業後、カナダのバンクーバーに語学留学。
帰国後は、外食・フードデリバリー産業に携わる。
モットーは「常に感謝を忘れない」。趣味は、レストラン巡り、釣り。
【A社 損益計算書】
単位:千円
決算年月 | 2019年3月 | 2020年3月 |
---|---|---|
売上高 | ¥1,102,500 | ¥1,154,000 |
売上原価 | ¥302,400 | ¥317,150 |
売上総利益 | ¥800,100 | ¥836,850 |
販売費及び一般管理費 | ¥655,200 | ¥680,400 |
営業利益 | ¥144,900 | ¥156,450 |
営業外収益 | ¥1,260 | ¥1,470 |
営業外費用 | ¥1,050 | ¥1,200 |
経常利益 | ¥145,110 | ¥156,720 |
(設問)与件文を読み、設問にしたがって各項目を別途配布された解答用紙に記述しなさい。
[問1]【課題設定】
A社が顧客コミュニケーションにおいて取り組むべき課題を3件、優先度の高い順に記述しなさい。
[問2]【ターゲット】
A社に提案する施策のメインターゲットとその理由を記述しなさい。
[問3]【提案の骨格・方針】下記項目を記述しなさい。
(1)本提案において施策発信のメインとなるメディアとその選定理由
(2)本提案において施策発信のメインとなるコンテンツとそのねらい・意図
(3)本提案の施策において複数メディア間の連携を誘導するしくみ
(4)本提案の施策において共有・拡散を促すしくみ
(5)A社の競合他社への差別化対策
[問4]【提案する施策内容】
A社に提案する施策を3件にまとめ、記述しなさい。
[問5]【実施スケジュール】
施策の実施スケジュールを記入しなさい。
[問6]【概算見積】
施策の実施スケジュールに即した概算見積を記入しなさい。
[問7]【タイトル】
提案書のタイトル(およびサブタイトル)を記述しなさい。
[問8]【序文(挨拶)】
提案書の序文を「ですます調」で記述しなさい。
[問9]【施策の総合的効果】
問4に記述した施策のまとめとして、下記項目を「ですます調」で記述しなさい。
[自社(X社)の強み・X社を採用する意義]
[施策内容の総合的な効果・まとめ]