[コミュニケーションと印刷ビジネス]5-4-1 エディトリアルデザイン

情報やメッセージを他者に伝えるには、視覚に訴えることが有効である。情報をより正確かつ効果的に伝えるために、さまざまな素材や手法を駆使して紙面をはじめとしたメディア上で情報の視覚化を図ることがエディトリアルデザインである。

企画コンセプトの検討

  • 制作の前提条件は、発注者の意向を確かめ、よく吟味して確認することが重要である。

  • 制作物は、その内容と目的に沿って設計されることが重要であるため、下記の前提条件の確認が必須となる。
    – 目的:制作物が何のために用いられるものであるかを明確にする。
    – ターゲット:誰に向けたものであるかを明確にする。
    – 内容:どんな情報を発信するのかを明確にする。
    – 場所:どのような状況で使用するのかを明確にする。
    – 時期:いつ使用するのかを明確にする。
    – 値段:プロジェクト予算や制作物の費用対効果を考慮する。
    – 数量:制作物の発行部数、露出量を明確にする。
    – 方法:どのようなメディアを使用するのかを明確にする。

レイアウトデザイン

  • レイアウトデザインの役目は、文字や図版など要素の配置、組み合わせによってある印象を演出することである。

  • レイアウトデザインは、誰に向けてどのような情報を伝えるためにどのように視線を誘導するかという意図をベースに行い、偶然に頼るのではなく、グラフィックデザインの系統的な展開法を学んで活用する必要がある。

【代表的レイアウト手法】

シンメトリー:左右対称な構図はバランスのとれた安定感のある印象を与える。
アシンメトリー:非対称の構図をあえて採用することにより、斬新な印象になる。
ムーブマン:静止している平面の中に動きを感じさせる表現のことであり、方向性が備わっている要素を用いたり、遠近や時間経過をイメージさせる配置をしたりすることで効果を演出する。
整列:複数の要素をある基準線を設けて揃えて配置することにより、視線を誘導し情報を認識しやすくするとともに、統一感・安心感を与える。
バランス:要素の大きさ、配置、色などにより、紙面上の均衡を保つ。
リズム:要素の連続・繰り返しにより軽やかで心地よいテンポを感じさせる。
破調:一定のリズムやバランスがとれている状態の一部をあえて破壊する、またはアクセントをつけることにより、メリハリや深みを演出し、視線を惹きつける。
量感:色や写真、字形や書体などの複合的要素により、体積や容積、重さから実在感、立体感などを感じさせる。
黄金比:約1対1.618の比率で描かれた長方形は、そこから正方形を除いても常に同じ縦横比となる。この比率は最も安定した形状を作るとされる。
ルート比率・白銀比:辺の長さが1対√2の比率の長方形は、長辺を半分に分割しても常に同じ縦横比になる。A判、B判の用紙はルート比率になっている。
ホワイトスペース:デザイン的必然性を持って設けられる紙面上の何もコンテンツの置かれていない部分をいう。
ジャンプ率:紙面を構成する要素の大小差のことをいい、メリハリや訴求効果、平易で落ち着いた印象などをコントロールする。
配色:目的に合わせて色を配置することであり、紙面デザインにおいては、ターゲットと内容を理解し、色のもつ心理的効果なども踏まえて効果的に用いる。色合いを示す「色相」、鮮やかさを表す「彩度」、明るさを表す「明度」の三属性を人間の感覚で等間隔に分割し表現したマンセル表色系などを用いて調整を検討する。
視線誘導:情報を効果的に伝えるためには、読み手の「目の流れ」を意識する。目の流れの原則は、横組の場合は左上から右下へ、縦組の場合は右上から左下へという流れが大原則となる。
アイキャッチ:誘目性の高い素材により読み手に興味を持たせる。またどの素材から視線を誘導したいか、情報の優先順位をつける役割として用いる場合もある。

グリッドレイアウト

  • 活版印刷時代の画一的な紙面レイアウトに対して、非対称なグリッドをベースにした印刷紙面制作の考え方がバウハウスとともに出現し、デザイナーが最初にレイアウトを作成するという流れが生まれた。

  • グリッドはデザインを簡単に反復できる機能をもち、作業者が異なったり、作業する時間が異なったりしていても複数の紙面を同じように見せることができる。

  • 同じ考えのグリッドをベースにすれば、サイズや印刷様式、色などが異なる多様な印刷物において、例えば1つの会社の「コーポレートアイデンティティー」といった様式や意匠を維持させることができる。

  • グリッドをベースに、本文テキストとイラストや写真、見出し文字を整列させてかっちりしたイメージにすると同時に一部を強調することで読者の理解の一助となる。

図版のトリミング

  • 図版の必要な部分のみをカットして使用することをトリミングという。

  • レイアウトスペースに応じてサイズや縦横比を考慮しトリミングする場合、レイアウトデザインの観点で図版を効果的に用いるためにトリミングする場合などがある。

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