『未来を創る』刊行のご挨拶

掲載日:2015年5月7日

このたび『未来を創る』が完成、発刊の運びとなりました。刊行のご挨拶を申し上げます。

今から5年後の2020年には東京オリンピックを迎える。その頃、我が国の印刷産業の出荷額はピークだった四半世紀前、1991年(8.9兆円)の半分になると予想されている。現在でも既に40%は下落している。

こうした状況でよく引き合いに出されるのは、「環境の変化に適応できる種のみが生き残る」というダーウィンの進化論である。印刷産業にとって脅威となる環境の変化とはデジタルメディア、特にモバイルデバイスの急速な普及であり、適応とは顧客の視点で従来とは違った価値を提供しようとするもので、ドメインの拡大であったり、自らのビジネスの再定義であったりする。一部のプレイヤーは場所を変えてニッチやオフライン、ロジスティックス系のメディアに移行するかもしれない。

印刷物へのロマンスが終わることから始まるジョー・ウェブ博士とリチャード・ロマノ氏の新刊『THIS POINT FORWARD』は2014年10月、「JAGAT大会2014」でウェブ博士の講演の最後にご本人が自ら「好評を得ている」として紹介された。経営環境が急速に変化する現代においては印刷企業の経営者層がいかにマインドセットを変えられるかが問われるが、そこにチャレンジした著作である。

本書に出てくる「REAR VIEW MIRROR(バックミラー型)」は過ぎ去った時代の旧い考え方のメタファー(かつて社会学者のアルビン・トフラーはそう表現した)である。これに対して「THIS POINT FORWARD(先見型)」は、これから先はこのように考えるという意味で、思考法のアプローチを新旧対比して提示している。

印刷企業のマネジメントチームがこの本で従来とは違った視点の知見やヒントを得てそれを共有し、それぞれの市場における新たな役割を見い出すことを願っています。

                                               2015年春
                                               公益社団法人日本印刷技術協会
                                               会長 塚田司郎

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