「2018年延長産業連関表」で印刷産業の調達先と販売先の変化を見る

掲載日:2021年11月12日

印刷物の生産にどれだけのモノ、サービスが投入されているか。印刷物はどの産業にどのくらい購入されているか。2015年から2018年の推移を見てみよう。(数字で読み解く印刷産業2021その9)

取引額は年々縮小、印刷インキのみ増加傾向

「産業連関表」は国内で1年間に行われたすべての産業の取引を一つの表にまとめたもので、各産業間のモノやサービスの取引状況を金額で把握できます。

日本全国を対象とした「産業連関表(基本表)」は、10府省庁が共同で5年ごとに作成していて、「平成27年(2015年)産業連関表」(2019年6月公表)が最新のものです。

経済産業省は、この「産業連関表(基本表)」をベンチマークとして、「延長産業連関表」を毎年作成していますが、2021年は1月27日に「平成29年(2017年)延長産業連関表」を、8月19日に「平成30年(2018年)延長産業連関表」を公表しました。

『印刷白書2021』では、2017年延長表を中心に、印刷産業の産業構造を見ています。今回は2018年延長表の公表を受けて、印刷産業の主要な取引先と販売先を見てみましょう。

延長産業連関表(96部門表)の「013印刷・製版・製本」を列方向(タテ)に見ると、印刷産業がどの産業から1年間にどれだけの金額の生産物やサービスを購入しているか、行方向(ヨコ)に見ると、印刷産業の商品・サービスの販売先がわかります

そこで、「013印刷・製版・製本」の行列を金額の大きい順に並び替えて、取引額の大きい産業を「原材料等の調達先上位10産業」「販売先上位10産業」としてグラフにしました。2018年の上位10産業に関して、2015年からの推移を見てみましょう。

「原材料等の調達先上位10産業」を実質表で見ると、材料費、商業(卸売マージン額など)、同業者間取引が上位を占め、順位に変動はありません。上位10産業で取引額全体の9割を占めています。

印刷市場の縮小を反映して2015年から2018年に取引額はトータルで11.5%減となりました。特に「物品賃貸サービス」(産業用機械器具賃貸業、貸自動車業、電子計算機・同関連機器賃貸業、事務用機械器具賃貸業など)が2015年比29.0%減、「印刷・製版・製本」が同17.2%減と大幅に減少しました。「化学最終製品」(印刷インキなど)は唯一プラスで6.6%増となりました。

得意先は「商業」「映像・音声・文字情報制作」「金融・保険」まで同規模

「販売先上位10産業」から印刷産業の得意先を見ると、「映像・音声・文字情報制作」(出版、新聞など)が長年首位を占めていましたが、2017年は「金融・保険」、2018年は「商業」が1位となり、上位3産業は同じ規模となっています。上位10産業で取引額全体の7割を占めています。

2015年から2018年に取引額はトータルで12.4%減となり、特に減少幅が大きいのは、「映像・音声・文字情報制作」22.5%減、次いで「印刷・製版・製本」17.2%減、「金融・保険」「研究」「他に分類されない会員制団体」(宗教団体、労働団体、政治団体、協同組合、商工会議所など)も大きく減少しました。

『印刷白書2021』では、産業連関表を使って、印刷産業の取引の流れを細かく見ています。限られた誌面で伝えきれないことや、今後の大きな変更点は「数字で読み解く印刷産業」で順次発信していきます。ご意見、ご要望などもぜひお寄せください。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)