パワハラが社会問題とされる中、悩む管理者
工場をマネジメントする管理者は、人を育てる意識が重要だ。2021年6月に大手運送会社では、上司2人からの度重なる叱責(しっせき)によるパワーハラスメント(パワハラ)などを理由に、営業所で自殺していたことが明らかになった。同社では内部通報があったが生かせなかったという(東京新聞2021年11月5日)。2020年4月にパワハラ対策を大企業に義務付けた法律施行後も、働く人の自殺は後を絶たない。2022年4月より中小企業にも義務付けられた。一方、昨今の工場の管理者は、生産性の向上や部下への指導と関わり方で「厳しく接すること」がうまく実践できずに悩んでいることを耳にする。パワハラが社会問題とされる中、過剰に気を遣うことは容易に理解できる。
「叱る」と「怒る」の違いを学ぶ
5S活動をベースに工場改善に取り組む上では、日常管理、維持管理が第一歩となる。維持管理は至ってシンプルで部下に決まったことやルールを守らせることである。維持管理ができなければ、工場づくりは進まない。時には守らない部下を厳しく躾ける必要が出てくる。指導するコツのひとつが「叱る」と「怒る」の境界線を知ることだ。「叱る」は、人を育てるための教育であり理性である。一方、「怒る」は、個人的でコントロールができない感情であり暴力にあたる。叱ることを学ぶ必要がある。
ルールを守れない場合は、原因を探求することが肝心
2022年6月9日(木)に開講した「第2期印刷工場養成講座」(JAGAT主催、全6回)での初回「経営と印刷工場のマネジメント」では、石川秀人氏(コンサルソーシング株式会社、コンサルタント)を招き、部下の指導についても触れられた。叱るときのポイントは、熱くなりすぎず要点を絞り込んで指摘することだという。部下に問題の重大性を認識させ、同じ失敗を繰り返さないように考えさせることだ。根本的には、部下に反省や気付きを促すという目的を意識して指導できるかどうかである。ルールを守れない場合は、原因を探求することが肝心だ。原因は、いくつかのパターンに整理できる。
①決まったことを知らない、忘れてしまった。
②内容を理解していない
③管理者が根気強く教えていない
④守れない者に叱り方が分からない
⑤守っていないことに当事者が気づかない
⑥守っていない犯人捜しで終わっている
⑦作業の指示が曖昧で、報連相が無い
⑧維持管理のサイクル(PDCA)が回っていない
守れない原因は何故かということを繰り返し考えることが重要だ。そして、原因に合わせて対処するのだ。考えることによって理性的に対応することへも繋がる。考えさせることを学ぶのだ。指導の仕方を身に着けることで人材が育ち工場の競争力に繋がる。
(CS部 古谷芸文)