オンライン校正の導入が加速し、動画制作が定着

掲載日:2022年8月1日

「JAGAT印刷産業経営動向調査」より新技術、サービスの導入状況、満足度、導入意向を紹介する。

JAGATが毎年、会員企業を対象に実施している「印刷産業経営動向調査」の2021年度の調査結果から新技術/サービス/システムの導入状況、満足度、今後の導入意向についての結果を紹介する。本調査回答企業の平均従業員規模は118名、1社当たりの平均売上高は20億円であり、中堅クラスの印刷会社が中心である。

新技術、サービスの対象は以下に示す18項目である。経年変化を追いかけることを重視しつつ、状況の変化にあわせて少しずつ項目の入れ替えを行っている。今年度からカッティングプロッターが追加されている。

図1.新技術サービスの設問項目

設問内容としては、(1)現在導入しているかどうか、(2)導入している場合の満足度、(3)今後3年以内に導入予定があるかどうかの3つである。満足度については、A:大変満足、B:やや満足、C:普通、D:やや不満、E:非常に不満の5段階評価で回答してもらい、A:5点、B:2点、C:0点、D:-2点、E:-5点という重みづけで点数換算して満足度を数値化している。

図2は現在導入が多い順に並べたものである。第1位は5年連続でバリアブルデータ印刷であり、導入率は66.7%(前年 61.8%)であった。第2位は品質検査装置で56.6%、第3位はオンライン校正の52.5%となっている。オンライン校正は前年より16.2%増で初めて回答企業の過半数を超えた。コロナによるリモートワーク対応が普及を加速させる形となった。
他に前年より導入が進んでいるのは、第14位タイのRPA(10.4%増)、第12位のJDFワークフロー(8.5%増)、第11位のスマホ/タブレット対応アプリ制作(7.7%増)となっている。

図2.現在導入率の高い順

図3は、2012年からの導入率の経年変化で特徴的な項目をピックアップしたものである。製造の生産性向上の手段であるJDFワークフロー、営業活動の生産性向上手段であるCRM/SFAなどの営業支援ツール、印刷物以外の創注を狙う動画制作、顧客とのコミュニケーションと営業・製造双方の業務効率を改善するオンライン校正の4つを取り上げた。オンライン校正はこの3年で導入が倍増している。営業支援ツールも急伸していて、2015年には導入が10%に満たなかったものが今年度は30%を超えている。こちらもコロナ対応の影響もあるだろう。訪問営業が難しくなり営業スタイルの転換が求められている。動画制作は順調に導入・取り組みが進んできて、いったん足踏みをしてからまた上昇傾向にある。この10年横ばいが続いてきたJDFワークフローは上昇気配にある。デジタル印刷機の本格活用が背景にあるだろう。小ロット多ジョブ対応にはシステム対応が欠かせない。

図3.導入率の経年変化

図4は前述の重みづけで満足度を数値化し、高い順に並べたものである。0ポイントが中心(可もなく不可もなく)となる。満足度の点数が最も高かったのは品質検査装置で1.68ポイント、第2位はデジタル加飾で1.50ポイント、第3位は自動面付で1.19ポイントであった。品質検査装置と自動面付は例年上位に来る項目であるが、今年度はデジタル加飾が間に割って入る形となった。ただし、導入社数が少ないので今後の傾向をみたい。 昨年から数字を伸ばしているのが第4位の動画制作である。前年の0.05ポイントから0.78ポイントとなった。

図4.満足度の高い順

図5は、デジタルメディア関連の満足度の経年変化を表している。動画制作、CG制作、電子出版/電子カタログ、スマホ/タブレット対応アプリ制作、電子販促(デジタルサイネージ、電子チラシ、AR)の5項目となる。この10年の推移をみるといずれの項目も、プラス評価となることは稀で低迷していた。しかし、今年度は電子販促を除き上向いている。特に動画制作は0.78ポイントと過去最高値を記録している。商品パンフレットや会社案内などのデジタルシフトにより動画制作の仕事が増加していることと、受注・制作体制が整ってきたことのあらわれであろう。

図5.デジタルメディア制作の満足度の経年変化

「JAGAT印刷産業経営動向調査」 結果をまとめた報告書は、10月に最新版が刊行予定です。また、9月29日(木)に印刷総合研究会主催で報告セミナーを行います。

(研究調査部 花房 賢)