前号に続いてWi-Fiを取り上げるが、規格を説明する前に面倒な話をしておきたい。それはIPv4とIPv6というインターネット接続方式の話で、読者の皆さんもどこかで聞いたことがあるかもしれない。
つまり、IPv4はIPアドレスを32bitで表現しており約43億個(IoT時代では足りない)しか表せないため、もう既にカツカツで、増やす必要に迫られていた。その解決方法がIPv6で、128bit表記のため大雑把に言って約430澗(10の36乗、つまり兆の六つ上)個のIPアドレスを表現でき、これで足りなくなることはない(?)。
IPv4はIPアドレスがパンパンなので通信速度が遅くなるのだと説明されるが、IPv4のインターネット接続にはONU(終端装置)が必要になる。ONUから先、つまりパソコンやスマートフォンと接続するWi-Fiルーターをインターネットに接続する方法は、マンションの場合はさまざまだ。モジュラージャック(電話回線と同じ)を使用するVDSL方式や、皆さんの会社のようにイーサネットLANのジャックである場合、あるいは光コンセントSCが各戸に付いていることもある。しかし、大元では大規模ONUが共有スペースに設備されており(光以外)、ONUにアクセスが集中してしまうと通信スピードが出ない。
IPv4はPPPoEという接続方法を使用しており、電話回線とモデムという昔ながらの方式をリファインして使っているオールドファッションな方式だ(IDとパスワード認識がその名残)。それに対して、IPv6で使用するIPoE(PPPoEも同時にサポート)はダイレクトにインターネットにつながっており、通信速度が速いのだ。具体的には、PPPoE(IPv4)では高速インターネット回線につないでも200Mbpsくらいの速度がやっとなのだが、他方IPoE(IPv6)では100Gbpsの通信速度が可能となっている。
現在契約するのなら、IPv6の方が優れているのは確かなのだが、多くのウェブサイトがIPv6用にはできていない(互換性がない)ことが問題になっている。そこで「IPv4 over IPv6」という機能があり、ダメな場合はIPv4に自動的に切り替えてくれる。この辺は各プロバイダーに確認する必要があるため、「むやみに高速通信回線を契約しても通信速度は速くならない」ということになる。なお、IPv4は198.10.50.1のように10進数でIPアドレスを使用するが、IPv6は16進数で表現するため、0123456789ABCDEFを使用して表現している(10進数での11は、16進数ではBとなる。16は10で、17は11だ)。
さて、Wi-Fi規格について解説していこう。今更Wi-Fi4(IEEE 802.11n)のみ対応の機器を購入する人はいないだろうが、昔のパソコンやゲーム機だとIEEE 802.11n(Wi-Fi4)しかつながらない場合もある。そこで現在販売されているWi-Fiを整理したのが表1なのだが、IEEE802.11ac(Wi-Fi5)にするかそれともIEEE802.11ax(Wi-Fi6)にするかという選択では、5GHz帯の方が通信速度は速い。
しかしWi-Fi5は5GHz帯しかサポートしていないため、5GHz帯と2.4GHz帯両方をサポートしているWi-Fi6対応のルーターを購入しておけば問題ないだろう。ちなみに、新し物好きの私は、5GHz帯が新登場したときに「いの一番」に飛び付いたのだが、5GHz帯はコンクリート壁に弱いとされていたものの、当時は戸建てに住んでいたので電波が庭にも届き、犬と遊びながらパソコンを打つなどして優雅に暮らしていた。2.4GHz帯はコンクリート壁には強い(通過する)のだが、他の電波に弱く、電子レンジや掃除機で妨害(干渉)された経験がある(今ではほとんど問題ないのでは?)。
Wi-Fi6の場合は両方の電波帯を使用できるので、例えば1階にWi-Fiルーターを設置した場合、1階で使用する場合は5Ghz帯を使用して2階に上がるときは電波の届きやすい2.4GHz帯に自動変更する「バンドステアリング」機能が必須だろう。また、つながっている機器に向けて電波を強くするビームフォーミングなども必要だ。これは、Wi-Fiに接続すると、スマホなどが頑張って(実際にはルーターだが)電波が強くなるという現象を経験されたことが皆さんにもあると思うが、それだ。
あとはMU-MIMO(マルチユーザーマイモ)という、同時に何人も使用できる機能も必須だが、大抵の機器には備わっていると思う。
(専務理事 郡司 秀明)