製造工程だけでなく工場全体の管理業務を含めたデジタル化は一般の製造業においても大きな課題となっている。
工程管理にExcelを使ったり、局所最適されたサブシステムが混在しているからだ。製造業の工場をデジタル化するモデルとして、ISA-95という国際標準が存在する。
ISA-95とは、製造管理システムのリファレンスモデルとして欧米で主流になりつつあるものであり、その内容がほぼそのままIEC/ISO 622264として国際標準にもなっている。ISA(the International Society of Automation)は自動機器に関する国際的な標準団体であり、ISA-95策定の背景として、基幹系の経営管理システム(ERP)と工場の製造管理システム(MES)の統合が課題になり、両システムを接続する標準的なインタフェースが求められたことがある。
EDI(電子商取引)のようにデータ交換項目まできっちり決めてしまうと融通がきかずに使いづらいものになるので、ISA-95では、受注処理や生産スケジューリング、製品在庫管理といった業務機能とこれらの業務間でどのような情報がどのような流れでやり取りされるかというモデルを規定している。そして、製造管理に求められる機能をレベル0からレベル4に分けて定義している。経営管理システム(ERP)がレベル4にあたり、製造管理システム(MES)がレベル3にあたる(図1)。
プランニングとスケジューリング
生産管理の分野ではプランニングとスケジューリングには明確な使い分けがある。プランニングでは、いつまでに(納期)、何をいくつ作るか、そのために必要な材料は何かを決める。これに対してスケジューリングとは、様々な制約条件(設備がメンテナンス中など)を考慮しながら、どのような手順(工程)でどのような設備をどのタイミングで使って製造するかを決める。先ほどのレベルの図にあてはめるとプランニングはレベル4にあたり、スケジューリングがレベル3にあたる。
印刷業で考えるとJDFワークフローのリファレンスモデルではMISがレベル4のみならずレベル3まで担当してワークフローをコントロールする形になっていたが、最近はKP-コネクトProなどの製造管理システム(MES)にあたる製品が登場し、MISが「何を作るか」を管轄し、製造管理システムが「どのように作るか」を管轄するという役割分担が可能になりつつある。
参照文献
製造オペレーションマネジメント入門~ISA-95が製造業を変える!~
(特定非営利活動法人ものづくりAPS推進機構)
(研究調査部 花房 賢)